2020年の教育改革での新しく求められる学力として、考える力、書く力などが挙げられています。
これは既に多くの人が気が付いていることですが、学校の成績がよく受験勉強の知識は持っていても本当の意味での学力のない人が増えてきたからです。
昔の東大生と今の東大生は質が違うと言われています。(「教育激変」池上彰・佐藤優より)
今いい学校に進む人は、学力のある人というよりも、受験のための知識と方法を詰め込んだだけという人が多くなっているのです。
そのような反省から、東大や京大でも推薦入試や特色入試を行うようになりました。
ペーパーテストの成績だけで見ていると、入ってくる学生は、受験校や受検塾で受験勉強をした人だけという結果になってしまうからです。
しかし、いま考えられている新しい教育改革のもとでの新しい教育は、評価のしようがないということが言われています。
それが、今回の英語民間試験の延期や、記述試験の評価の混乱に見られています・。
また、例えば、アクティブラーニングで、みんなと協力する力があるとか、考える力があるとか、あるいは道徳教育で道徳観が身についているかどうかということは、○×をつけて点数を付けるような性格のものではありません。
しかし、ここで考えなければならないこと、そもそもそういう点数化されるような評価が教育にとって本質的なものかどうかということです。
知識や技術のように評価が客観的に数値化できるものであれば、それは点数として評価することが合理的です。
それが本人の励みにはなり目標にもなるからです。
しかし、江戸時代の寺子屋に学ぶ子供たちは、点数による評価で勉強していたわけではありません。
みんなと勉強することが楽しいとか、または自分のした勉強が他の人に認められるとか、そういう人間のつながりの中で勉強に対する意欲を持っていたのです。
点数で評価するという分野は、教育の中に確かにありますが、点数で評価しない分野もまたそれ以上に多くあるのです。
言葉の森の創造発表クラスの子供たちは、毎回自分なりに個性的に研究した内容を発表しています。
それは、評価されたり、点数をつけられたり、競争させられたりするからではなく、自分の好きなことを研究して発表することが楽しいから行なっていることなのです。
本来の教育とは、このように楽しいから行うというものであるはずです。
しかし、その楽しさが、小中学生時代には友達との交流の楽しさという面を持たなければ長続きはしません。
たったひとりで自分の好きな勉強に打ち込むというのは、もう少し年齢が大きくなってからです。
友達との交流の中で勉強を楽しむということが、これからの勉強の新しいスタイルになっていきます。
言葉の森の作文読解クラス、創造発表クラス、自主学習クラスもこのような観点で行なっています。
このときに大事になるのは、教材や先生よりも、生徒の主体性です。
その生徒の主体性を支えるのは、保護者の協力です。
そのために、生徒と保護者との保護者懇談会が毎月定期的に行うようにしました。
ところで、現在世の中で広がっているオンライン教育とのほとんどは、ビデオオンライン教育か、マンツーマンオンライン教育です。
それらのオンラインは、ただ教える人と教わる人のラインがつながっているだけのオンラインです。
言葉の森の目指すオンライン教育は、つながっている生徒どうしがまた相互つながるという、フラーレン状というか網目状のオンライン教育です。
このフラーレン・オンライン教育が可能なのは、学習する勉強の内容そのものが、答えのある勉強よりも、答えのない創造的な勉強になっているからです。
特に、作文読解クラスと、創造発表クラスはそうです。
自主学習クラスは、自分で勉強するクラスですから、もともと交流は副次的なもので、交流として行うのは読書紹介か暗唱発表です。
今、アクティブラーニングがさまざまなところで行われていますが、そのアクティブラーニングの問題点は、第一に人数が多すぎることで、第二に答えのある学習が想定されていることです。
答えのある学習ということは、できる子とできない子がいるということで、しかもそれが大人数で行われるのであれば、できる子もできない子も退屈し、お喋りするだけの勉強になってしまう可能性があります。
言葉の森のオンライン教育は、まだ生徒数がのべ150人ぐらいで、言葉の森の全生徒のごく一部です。
だから、まだ十分に稼働しているとは言えません。
十分に稼働するとは、同学年同レベルの生徒が切磋琢磨するようなクラスになることです。
しかし、未来の教育は、このフラーレン型のオンライン教育の中でしか実現できないと思います。
そして、言葉の森がイメージしているのは、オンライン教育がオンラインでとどまるのではなく、季節ごとの自然合宿教育で、自然や友達と触れ合う機会と組み合わさることです。
先の長い話ですが、この新しいフラーレン・オンライン教育をこれからも広げていきたいと思っています。