作文の要素を大きく分けると、字数、構成、題材、表現、主題、表記になります。
小学生までの作文は、題材と表現が中心です。
その人らしい価値ある題材を、表現を工夫して書くということです。
低学年の場合は、ここに、正しい表記で書くということも入ります。
文章を構成する意識ができてくるのが、小学5年生からです。
ものごとをまとめる力がついてくるのです。
ですから、要約の練習も小5から始まります。
しかし、安定した要約ができるようになるのは、中学生になってからです。
ところで、要約の指導法は、実は簡単です。
世間では、一段落ずつ要点をまとめさせたり、文章の終わりの部分中心にまとめさせたりする教え方が多いようですが、そういう方法ではありません。
よく理解できたところに線を引きながら何度か繰り返し読み、重要だと思った文を3つ選びつなげるという書き方です。
小学4年生では、3文抜き書きという練習をしますが、この方法であれば、一度の説明でだれでも要約ができるようになります。
小学6年生で要約のできる生徒は50%というデータがあるようですが、それは教え方が悪いのだと思います。
小学1、2年生では、文章を要約するようなことはまずできません。
この時期は、文章を丸ごと読む時期なので、要点をまとめるということはできないのです。
読書紹介でも、小学1、2年生は、本のあらすじを最初から最後まで言おうとします。
しかし、これは逆に、小学1、2年生の能力でもあり、この時期は、誰でも暗唱がすぐにできるようになります。
さて、中学生になってからの作文の主要な要素は、構成と主題になります。
例えば、自分の意見と他の人の意見の違いを明らかにし、自分の意見の裏付けとなる理由を複数述べるという書き方です。(中1の課題)
このときに、多くの生徒が、理由という抽象化されたことを書けずに、具体的な実例だけを書いてしまいます。
「私は、宿題はよくないと思う。それは、この間とても時間がかかったからだ」というのが、実例の文です。
理由の文は、「私は、宿題はよくないと思う。それは、生徒が自主的に学習することができないからだ。例えば……」という形です。
抽象化された理由を書けるか書けないかは、語彙力の差です。
抽象的な説明文をよく読んでいる生徒は、すぐに理由を書けます。場合によっては、3つも4つも理由を書くことができます。
それに対して、本をよく読んでいない生徒は、なかなか実例だけの文章から抜け出せません。
中学2年生の課題は、複数の意見と総合化の主題という書き方になります。
この総合化の主題は、かなり頭を使うので、うまくまとめられる子はあまりいません。
Aという意見のよい面を書き、反対のBという意見のよい面も書き、結論は、AとBの対立を超えたCという意見でまとめるという形です。
ほとんどの生徒は、折衷案のような形でCの意見を書いてしまいます。
昔、予備校の小論文の授業でトップの成績を取ったという子が、この総合化の主題がよく書ける生徒でした。
中学3年生の課題は、当為の主題と複数の方法という書き方です。
複数の方法のところで、ほとんどの生徒は、自分ができそうなことを中心に書いてしまいます。
自分ができそうなことはもちろん大切ですが、それと並行して、社会をどうするかという書き方もする必要があります。
これも、読書力が必要で、政治、経済、社会の本を読んでいれば、複数の方法の幅が広がります。
読書力が大切なのは、実例の選び方に出てきます。
データ実例、伝記実例、歴史実例、昔話実例、自然科学実例などをすぐに思いつける生徒は、本をよく読んでいます。
作文力は、作文の上だけの問題ではなく、読書力という土台の問題でもあるのです。