しだれ梅
●動画:https://www.youtube.com/watch?v=iU3EiokSr-s
作文通信教育講座のブンブンどりむが、今日も、朝日小学生新聞に広告を載せていました。週2回のペースですから、よくやっていると思います。
こういう広告を見て、作文の通信教育を始める人もいると思いますが、この通信教育は小学生までです。しかも、たぶん小学校低中学年までです。
その理由は、ブンブンどりむの監修者である齋藤孝さんが書いた「こども文章力」に載っている作文の見本が、小学3年生を想定しているからです。
私は、他人を批判するのは好きではありませんから、これまでこういうことは書きませんでしたが、この広告を見て、勘違いの作文の勉強を始めてしまう人もいるかと思い、あえて書くことにしました。
齋藤孝さんは、いろいろなものを引用するのは得意ですが、自分のオリジナルなものはほとんどありません。
作文指導についても、従来の低レベルの作文教育をまとめただけのもので、基本は穴埋め作文という形式です。
この穴埋め作文で作文指導ができるのは、小学校低中学年までですから、文章力のある生徒を高学年まで指導することは、まずできません。
しかし、作文指導に意義があるのは、小学5、6年生の考える作文に入ってからです。
そして、中学生、高校生の作文に進むことで、更に考える力がついていくのです。
齋藤孝さんの「こども文章力」という本は、最近出版された本ですから、斉藤さんの作文指導に対するひとつの到達点だと思います。
そこに唯一載っている、作文の見本は、小学3年生を想定したもので、次のような例文になっています。
私は、小学3年生の子供が、こういう作文を書いてきたら、まず褒めます。
作文教育の基本は、いいところを褒めることで、悪いところを直すことではないからです。
褒めることのひとつは、字数です。
小3の字数の平均は300から600字ですから、この作文のように800字も書いてきたら、それは本人がよくがんばったことだからです。
もうひとつは、表記のミスがなく、ていねいに書いているからです。見本だから、あたりまえですが。
しかし、子供には直接言いませんが、心の中では、この作文には限界があると考えています。
以前も書きましたが、それはこういうことです。
第一に、題材に個性も感動もありません。
第二に、「朝起きてから寝るまで」の作文のように構成が平板です。
第三に、結びの感想が「うれしかったです」のような浅い感想で終わっています。
第四に、たとえを使うというような表現の工夫がどこにもありません。
つまり、構成、題材、表現、主題の4つの分野で、それぞれに不十分なのです。
字数を埋めるために、出来事を順番に書いているだけの作文になっています。
つまり、この作文を書いているとき、子供は楽しそうに書いていたのではなく、真面目な義務感で書いていたような印象を受ける作文なのです。
「こども文章力」の見本の作文はこの小3の作品のひとつだけで、ほかには、小学校高学年の作文の見本も、もちろん、中学生の作文の見本もありません。
それは、齋藤孝さんには、たぶん、高学年の作文や中学生の作文の見本を書く力がないからです。
その理由は、作文教育に関する理論がないからです。
ちょっと厳しいことを書きましたが、これはたぶん本当のことです。
大事なのは、高校生まで作文の勉強を続ける展望で、小学校低学年の作文の勉強を始めることです。
小学3年生で、「こども文章力」の見本のような作文を書くことが、作文の勉強の目標なのではありません。
しかし、なぜ低学年から作文の勉強を始めるのがいいかというと、低学年のうちに毎週作文を書くことを習慣にすれば、高学年や中学生になって課題が難しくなったときも、習慣の力で作文の勉強を続けることができるからなのです。