クチナシ 八重咲き
国語力とは、つまるところ読解力です。
漢字を書く力とか、文法とか、古文とか漢文とかいう力は、知識の力ですから、国語力の本質とは少し異なります。
難しい文章を読みこなせて、質問に的確に答えられるというのが国語力です。
ただし、漢字を読む力は、読解力との相関が高いです。
漢字を書く力は、漢字の書き取りの勉強をすることによって身につきます。
しかし、漢字を読む力は、読書力のある子であれば、自然に身につくのです。
将来、社会人になって必要なのは、漢字を書く力よりも漢字を読む力です。
書く力は、今は、漢字変換ですぐに出てきます。
しかし、読む力は、その言葉の意味がわからないということですから、国語力という点ではより重症です。
試みに、中学生の子に、中学生用の国語問題集の問題文を読ませてみるとわかります。
ほとんどの子に、漢字の読み間違いがあります。
それは、そういう漢字のある文章を読んだことがないからです。
つまり、難しい文章を読んだ経験がないということです。
昔、「
術語集(岩波新書)」という本が、高校生によく読まれていたことがありました。
術語という言葉の意味は、「学術上、特に定義して使う専門語」です。
要するに、難しい語彙の解説の本です。
例えば、その中に「恣意的(しいてき)」という言葉がありました。
これは、中高生の難しい国語の文章にはよく出てきます。
しかし、「恣意的」という言葉の読み方も意味もわからないという中学生高校生は多いと思います。
それでも、そのような語彙のある文章を読んでいると、大体のニュアンスはわかってきます。
術語として覚えるよりも、文脈として理解することが大事なのです。
現在、この「術語集」に似ているのは、語彙力の本です。
検索すると、「語彙力図鑑」とか「語彙力アップ」とかいう本がいろいろ出てきます。
もちろん、こういう語彙力の本を読むのはいいことです。
しかし、語彙力の本を読んで、語彙力がつくわけではありません。
語彙力は、知識として身につけるものではなく、文章を読み、その文脈の中で身につけるものです。
ことわざなども、「ことわざ辞典」などでの意味は仮の知識です。
本当のことわざの理解は、日常生活で、お父さんやお母さんが、あるいはおじいちゃんやおばあちゃんが普段の会話の中で使うことわざとして身につきます。
国語力の根底には、読書と対話があるのです。
だから、家庭でできることは、子供の読む本に、説明文や意見文の本を取り入れること、親子の対話で高度な話をすることです。
高度な対話は、小学5年生からの感想文の課題に合わせて、親子で話し合う機会を作れば、自然にできます。
小学5年生からの作文は、抽象的なテーマが出てくるので、急に難しくなるからです。
小学5年生以降の作文の勉強は、親子の対話とセットにして進めるといいのです。
その対話は、子供にとってだけでなく、親にとっても楽しい時間になると思います。
(つづく)