ログイン ログアウト 登録
 日本をよりよい国にするために Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 943番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/11/21
日本をよりよい国にするために as/943.html
森川林 2010/06/26 07:26 


 先日、「小沢革命政権で日本を救え」(副島隆彦・佐藤優 著)という本を読みました。現代の社会を考えるための必読書の1冊になると思います。しかし、今回は、その中のごく一部の話だけ。

 この本の中で、副島氏と佐藤氏は、永住外国人の地方参政権について正反対の意見を述べています。

 副島氏は、

1、外国人の地方参政権は、ヨーロッパ(つまり世界)のワールド・バリューである、
2、外国人に乗っ取られるほど、日本は柔(やわ)な国ではない、
3、代表なければ課税なしの原則がある、

という意見です。

 一方、佐藤氏は、

1、北朝鮮や中国とは、相互主義の原則が取れない、
2、地方自治体であっても、日本が国家として機能しなくなる事態が生まれる、
3、外国人の参政権を課題にすること自体が、国内の対立を生み出す、

という考えです。

 そして、二人に共通する見解は、

1、民族の純血性にこだわるべきではない、
2、人種主義、排外主義になるべきではない、
3、日本に帰化できる要件を緩和するべきだ、

ということです。


 日本に住んで、同じ顔同じ言葉の日本人の中で暮らしていると気がつきにくいことですが、私たちは、個人でも、市民でも、地球人でもなく、まず第一に日本の国民として生きています。つまり、日本という国が繁栄したり衰退したり、自立したり隷属したりする中で、その国家という土台の上に個人の生活が成り立っています。

 国家が豊かになれば、自然に個人の生活も豊かになります。国家が貧しくなれば、それに応じて個人の生活も貧しくなります。国民から強引に税金を徴収して、警察と軍隊を持って政治を遂行できる国家というのは、それほど大きな影響力を持っています。

 そして、この国家というのは、私たちから離れたところにある顔のない組織ではなく、私たちが選挙によって選ぶことのできるひとりひとりの集合意識が形を持ったものです。

 そのような国家の動向を左右する権利を、国家に属していない人が持つべきではないというのは、むしろこれからの世界のワールド・バリューになると思います。

 にも関わらず、今の政治情勢の中では、外国人参政権を推進しようとする政党や政治家が多いのも事実です。

 しかし、こういう一種のシンボルをめぐる綱引きのようなところで、日本人どうしが無意味な争いをしているべきではありません。いちばん大きいマイナスは、互いに協力しあわなければならない国民どうしが、大きな一致点を見ずに小さな相違点で争うことなのです。

 そう考えると、今大事なことは、日本という国をどのような外国の圧力にも動じない更に「柔でない国」にしていくことです。

 そのためには、今の日本人が日本をもっと強力な国にしていく必要があります。しかし、その強力とは、軍事的、血縁的な強力ではなく、文化的な強力です。

 日本というものを、つまり、日本の自然、文化、歴史を、日本語を通して自分と一体のものとし、それをいつでも発信できるようにしていくことが、日本人の集合意識である日本を強力にする道です。

 もちろん、この日本との一体化をほとんどの日本人は無意識のうちに日々の生活で実践しています。しかし、これから多くの外国人が日本に住むようになったときに、この日本との一体化を自覚的に伝えていく必要があります。

 例えば、日本のことをよく知らない外国人に、「日本人ならこうする」「日本文化ではこう考える」「日本ではこうだ」ということを、日本の特殊性としてではなく、世界に共通する普遍性の新しい一部として伝えていく必要があるのです。

 これまでは、その自覚が足りなかったために、欧米の基準に無条件に追随してみたり、逆に、日本の偏狭なナショナリズムを主張してみたりするようなことがありました。

 これからは、欧米の価値観をも納得させるような、より大きな日本の価値観を作っていく必要があります。それが、新しい日本の抽象化です。

 しかし、それは、教科書的な一律の基準でできるものではありません。問題となる事柄のそれぞれのケースに対応して創造的に考えていく必要があります。

 例えば、イルカやクジラの捕獲や食用利用について、これを日本の文化と考える人がいます。

 確かに、日本人は昔からクジラのひげをぜんまいがわりに使うなど、捕獲したクジラをほぼ百パーセント利用しきる文化を築いてきました。しかし、その前提には、イルカやクジラは魚であり、動物の殺生は避けるが、魚の食用はやむをえないとする誤解がありました。

 現在、イルカやクジラは哺乳類であり、人間と同じような喜びや悲しみを感じる動物であるということがわかったあとでは、これを魚と同じ扱いで捕獲することはやめるべき時期に来ています。

 イルカやクジラの食用を古い日本文化であるとすれば、新しい抽象的な日本文化は、次のようなものになります。

 イルカやクジラに限らず、牛や豚も含めて動物を食用に利用することをやめ、そのかわり、科学技術の力によって大豆たんぱくなどで最高級のステーキ以上の食感を持った食品を開発するという方向です。

 同じように、政治や経済の世界でも、議院内閣制、共和制、三権分立制、市場主義など、現在使われている概念はすべて欧米の文化の中で生まれたものです。日本文化には、これらの欧米の価値観を上回る新しい世界のビジョンを作る可能性と役割があります。

 欧米の文化に流されないということは、後ろ向きに過去の日本やアジアの文化に回帰することではありません。日本発の新しい世界基準の文化を作っていくことです。

 それを軍事力によってではなく、文化的な影響力によって自ずから世界に広がるようにしていくのが、これからの日本の役割になります。

 そのためには、日本人がまず日本の自然、文化、歴史と一体感を持ち、日本を世界の模範となるようなよりよい国にしていく必要があります。もちろん、その場合の日本人とは、日本と一体感を持った韓国出身、中国出身、ブラジル出身の日本人であっても、青い目の日本人であってもよいのです。

 日本人は、世界中のだれとでも仲よくしていく必要があります。しかし、それは無国籍の顔のない個人としてではなく、日本の自然と文化と歴史を背景に持った日本人として仲よくしていく必要があるのです。

 同様に、日本は、世界のどの国とも仲よくしていく必要があります。しかし、それは経済力と軍事力の順位に還元されるような顔のない国としてではなく、日本という政治的、文化的統一性を持った自立した国として仲よくしていく必要があるのです。



同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
政治経済社会(63) 教育論文化論(255) 

コメント欄

コメントフォーム
日本をよりよい国にするために 森川林 20100626 に対するコメント

▼コメントはどなたでも自由にお書きください。
ほまみむ (スパム投稿を防ぐために五十音表の「ほまみむ」の続く1文字を入れてください。)
 ハンドルネーム又はコード:

 (za=森友メール用コード
 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
政治経済社会(63) 教育論文化論(255) 
コメント1~10件
読解問題の解き Wind
面白かった 10/11
記事 4027番
長文の暗唱のた たろー
この世で一番参考になる 9/30
記事 616番
「桃太郎」を例 匿名
役に立った 8/15
記事 1314番
日本人の対話と 森川林
ヨーロッパの対話は、正反合という弁証法の考え方を前提にしてい 8/6
記事 1226番
日本人の対話と よろしく
日本人は上に都合がよい対話と言う名のいいくるめ、現状維持、そ 8/5
記事 1226番
夢のない子供た 森川林
「宇宙戦艦ヤマトの真実」(豊田有恒)を読んだ。これは面白い。 7/17
記事 5099番
日本人の対話と 森川林
 ディベートは、役に立つと思います。  ただ、相手への共感 7/13
記事 1226番
日本人の対話と RIO
ディベートは方法論なので、それを学ぶ価値はあります。確かに、 7/11
記事 1226番
英語力よりも日 森川林
AIテクノロジーの時代には、英語も、中国語も、つまり外国語の 6/28
記事 5112番
創造発表クラス 森川林
単に、資料を調べて発表するだけの探究学習であれば、AIでもで 6/27
記事 5111番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
現在森リンベス 森川林
このあとの予定。 ・森リンベストを直す(直した) ・森リ 11/20
森川林日記
Re: 入会手 言葉の森事務局
 お世話になっております。  弟さんのみご入会が1週間 11/15
森の掲示板
入会手続きにつ やすひろ
お世話になっております。 個別掲示板を開けませんので、ここ 11/15
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習