ログイン ログアウト 登録
 Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 1011番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/11/22
言葉の森のビジョン(その1) as/1011.html
森川林 2010/09/06 17:38 



 言葉の森の今後のビジョンを絵で説明します。


 現代の日本の問題は、二つの面から考えることができます。
 ひとつは、社会的な面です。日本は、戦後、アメリカからずっとマネーの面でコントロールされてきました。
 しかし、今、アメリカの力が後退する中で、中国からの圧力が強まっています。中国の圧力の源泉は人口です。
 日本は、アメリカと中国のはざまで自立をしなければならないという状況に置かれています。
 日本は、国土の面積は世界第60位ですが、排他的経済水域も含めた領海の面積になると世界第6位になります。そして、日本の近海には多くの貴重な鉱物資源が眠っています。
 弱肉強食の国際社会の中で、核を持つ大国にはさまれて、軍備を持たないお人よしの日本が、豊かな土地で平和に暮らしている、というのが日本の置かれている状況です。
 この中で、日本の自立をどう守っていくのかというのがひとつの問題です。

 もうひとつは、歴史的な面です。現代の社会は大きな曲がり角に来ています。主な行き詰まりは経済の面に現れていますが、その根底にあるのは、もっと大きな文化的な変化です。
 しかし、その曲がり角の先にある新しい時代の展望がまだはっきりとは見えていないというのがもうひとつの問題です。



 まず、社会的な面から考えると、国際社会の中で日本の自立を守るということが大きな課題になります。
 日本は、隣国中国から人口の大きな圧力を受けています。また、日本自身がこれから国際社会で生きていくときに、ある程度の移民を好むと好まざるにかかわらず受け入れざるをえません。
 しかし、移民が日本の社会に同化せずに、移民独自の社会を日本の中で作るという方向に進むなら、その移民政策は日本の社会の安定と調和にとって大きな脅威となるでしょう。
 移民は受け入れるが、その移民を強力に同化するだけの経済的な豊かさと文化的な豊かさを持つことがこれからの日本に求められています。
 その要になるのは、日本語教育です。



 今、世界の共通語は英語です。それは、英語が国際的なコミュニケーションのツールとして、ほかのどの言語よりも大きな欠点が少なかったという消去法的な選択によるものです。
 しかし、いったん成立した世界共通語としての英語の役割は、今後も永続するでしょう。
 ところが、人類の歴史はツールの改良の歴史です。英語がコミュニケーションのツールであるかぎり、その役割は、時間はかかっても必ず機械が代替していくものになります。



 英語がツールとしての言語であるのに対して、日本語は文化としての言語になる可能性を秘めています。
 将来の世界の人々は、自国語と日本語を子供時代からの教育でバイリンガルとして学ぶようになるかもしれません。
 それは、日本語には、母語として学ぶ大きなメリットが3つあるからです。



 日本語の第一の特徴は、視覚的言語という点にあります。
 日本語は、漢字かな混じり文なので、見た感じで全体の印象をつかむことができます。そして、この見た感じが、文章の内容を理解するのを助けます。
 他の言語でも、書かれたものは視覚的に読まれますが、基本は音声を通して理解することに向いている言語です。日本語は聞いて理解するよりも、読んで理解することに向いている言語です。
 そして、この読んで理解しやすいという性質が、今後のインターネットの文字情報の世界では大きな利点となるのです。



 日本語の第二の特徴は、母音言語だという点にあります。
 英語や中国語など日本語以外の他の言語は、左脳で子音を処理し、右脳で母音、自然音、楽器音、雑音などを処理します。しかし、日本語は、左脳で子音、母音、自然音を処理し、右脳で楽器音、雑音を処理します。
 この結果、日本語では擬声語や擬態語が発達し、雨がザーザー降る、川がさらさらと流れる、星がきらきら光る、スズメがチュンチュン鳴く、などという表現が多用されるようになりました。
 これらの擬音語を使うとき、日本人は無意識のうちに、雨の音や川の様子や星の光やスズメの声を擬人化しています。つまり、雨や川や星やスズメの語る言葉としてこれらの擬音語を使っているのです。それは、自然の音が左脳の言語脳で処理されることから生じる自然な結果です。
 このため、日本人は、自然の事物や動植物に対して、人間に対するのと同じような一体感をごく普通に持つようになり、それが日本独特のアニミズム、八百万の神という発想、異なるものの共存を受け入れる調和の精神を生み出しました。
 そして、今日の世界が必要としているのは、まさしくこういう調和と共存の見方です。それを理性の力で実現させようとするのではなく、言葉を使う中で自然に育てることができるという点で日本語は大きな利点を持っています。
(つづく)

この記事に関するコメント
コメントフォームへ。

同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
言葉の森の特徴(83) 

記事 1010番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/11/22
「より豊かに」から「よりよく」という生き方 as/1010.html
森川林 2010/09/02 21:34 


 これまでの教育は、耐久消費財の需要に対応した工業時代の教育というものでした。

 工業社会で、性能のいい歯車となり、高い所得を得、豊かな消費生活を送るという人生を目指す教育がこれまでの教育でした。それは、社会の側からの都合で学ぶことが決められ、そこで育てられる個人の能力はだれでも共通するものであるが故に、だれにとっても代替の可能なものでした。

 このような社会でいい仕事につくためには、いい学校に入り、いい成績をとる必要があります。しかし、その場合の「いい」という基準は、ある限られた枠で数値化され採点されるテストの形式で評価されるものでしたから、当然優劣が生じます。

 受験のための勝ち負けのある教育というものに、多くの生徒や保護者が疑問を感じつつも、しかし、負けるわけには行かないということで、競争にあおられながら勉強をしてきたのがこれまでの教育でした。

 しかし現在、これまでの工業社会に代わる新しい社会が台頭しつつあります。

 社会を動かす原動力は、人間の欲望です。これまでの多くの日本人の欲望の焦点は、豊かな消費財のある生活でした。例えば、いい家、いい車、いい服、いい食事などが、人間の生活の目標になっていました。

 しかし、このような消費財がいったんある程度手に入り、快適で便利な生活が送れるようになると、その欲望は、それ以上の充足は必要としなくなります。今は、いい家、いい車、いい服などにそれほどのワクワク感は持てなくなってきたのです。特に、お金を動かす力の大きい、資産や収入の多い人からのお金の流れが止まったことが、日本の社会の需要減少の背景となっています。

 では、魅力的な消費はどこに行ったのでしょうか。これからの人間がいちばんワクワクするものは、消費財よりも自己の向上のようなものになります。自分が、より美しく、より知的で、より創造的で、より社会に貢献できるような人間になりたいという欲望です。つまり、「より豊かに」から「よりよく」という欲望の変化が、これからの経済の動向を決めていくようになったのです。

この記事に関するコメント
コメントフォームへ。

拍手喝采 20100903  
 森川林先生の教育論を拝読すると、いつも元気が出てきます。雑事に追われ、疑問を抱きながらも形式に惑わされて過ごす日々の向こうに、目指すべき目標が、見える様に思われます。
 我が子にも是非、より美しく、より知的で、より創造的で、より社会に貢献できるような人生を送ってほしいと思います。

 

森川林 20100903  
> 拍手喝采さま
 コメント、ありがとうございます。
 これからの世の中の変化は、意外に速いような気がしています。今は夢のようなことも、やがてみんなの常識になると思います。早くそういう世の中が来るようにがんばりましょう。ヽ(`▽´)/

同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
教育論文化論(255) 
コメント11~20件
……前のコメント
総合学力クラス 森川林
子供は、暇そうにしているのがいちばんです。 年がら年中がん 6/22
記事 5107番
さまざまな勉強 森川林
勉強は、作文と読書と算数数学と歴史を中心にやることです。 6/21
記事 5106番
作文力がこれか 森川林
作文力をつけるために必要なのは読書と対話。 出力の前に入力 6/19
記事 5105番
作文を書くとき 森川林
 接続語と助動詞は、実は重要です。  中学生や高校生で、文 6/18
記事 5104番
国語は、読む力 森川林
国語の力をつけるための音読は、1冊の問題集を繰り返し読むのが 6/16
記事 5103番
国語力は、テク 森川林
国語力をテクニックで身につけようという考えそのものがあさはか 6/14
記事 5100番
本当の勉強は、 森川林
子供は、自然に成長していれば、みんな時期が来ればそれぞれにが 6/12
記事 5098番
これから大学生 森川林
MMさん、ありがとうございます。 これは、10年以上前の記 6/12
記事 820番
これから大学生 MM
先生の書かれていることは今読んでもそのまま通じます。 10 6/11
記事 820番
毎週作文を書く 森川林
作文の勉強というのは、負担の大きい勉強です。 だからこそ、 6/11
記事 5097番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
現在森リンベス 森川林
このあとの予定。 ・森リンベストを直す(直した) ・森リ 11/20
森川林日記
Re: 入会手 言葉の森事務局
 お世話になっております。  弟さんのみご入会が1週間 11/15
森の掲示板
入会手続きにつ やすひろ
お世話になっております。 個別掲示板を開けませんので、ここ 11/15
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習