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国語の得意な子、苦手な子 as/110.html
森川林 2006/11/02 05:08 
 国語の得意な子と苦手な子を分けるものは、読み取る速さの違いです。あっけないほど簡単な話で拍子抜けすると思いますが、これが真実です。
 昔、小学6年生の子のお父さんが、「国語があまりできないんです」と、模試の答案を持ってきたことがありました。中身を見てみると、最初の方の問題はそれなりにできていますが、最後の方になると×が多くなっています。これは、最初の方に時間をかけすぎて、最後の方の時間がなくなってしまったためです。どうして、最初の方に時間をかけたかというと、読み取るスピードが遅かったからです。この子に、最後の方の×の問題を聞いてみると、時間をかければできていたことがわかります。結局、読み取るのに時間がかかっていたために、全体の点数が低くなっていたのです。
 入試問題には、こういうスタイルの問題がかなりあります。慶応義塾大学文学部の2003年度小論文の課題文の分量は、12,000字もありました。本で言うと約20ページ分です。これだけの量の課題文を読んで、1000字の小論文を書くのに、与えられた時間は全部で90分です。読むのが好きな生徒はばりばり読めますが、読むことに慣れていない生徒は、読むだけで息切れしてしまいます。
 では、この読み取る力はどのようにして育つのでしょうか。速く読む力ですから速読力と思うかもしれませんがそうではありません。速読の練習をすれば、練習をしないときよりも速く読むことができるようになります。しかし、それだけではすぐに限界が出てきます。大事なことは、読む力ではなく、読み取る力だからです。文章を読み取るというのは、ただ文字を読むことではありません。書かれている内容を理解するということです。では、どのようにして人は文章に書かれていることを理解するかというと、そこに書かれている内容を、自分のこれまでに持っている知識や体験と関連づけて理解していくのです。つまり、文章を読むということは、自分の知識体系の中に、その文章を位置づけていくということなのです。頭の中に、たくさんの引き出しがあり、その引き出しの中に、読んだ内容を次々に納めていきます。まだ引き出しの準備ができていないために、引き出しに入りきらないものは、仮に積んでおくしかありません。引き出しの豊富な人の頭の中は、何を読んでもきれいに整理されていきますが、引き出しの数が少ない人の頭の中は、読んだものがどんどん積まれていくだけです。
 ですから、初めてのジャンルの文章は、読むのに時間がかかります。また、読んでいるとすぐに眠くなってきます。試みに、経済学の勉強をしていない人が初めて経済学の本を読んだとします。ものの数分もたたないうちに眠気が襲ってくるはずです。プログラミングが初めての人が、プログラミングの本を読んだとします。どんなに易しく書かれている本であっても、これもすぐに眠気が襲ってきます。以上は、私自身の体験です(笑)。哲学の本ももちろんそうです。しかし、哲学の本を読みなれてくると、逆に、哲学の難解な言葉が出てくる文章を読むと、目がらんらんと輝くようになってきます。頭の中に引き出しがある文章は、読んでいて楽しいのです。
 中学生や高校生で国語の得意な生徒は、どんなに勉強が忙しくても、勉強の合間に本を読んでいます。受験期間中であっても、受験勉強で疲れた頭を休めるために好きな本を読むという休息の仕方をしています。サッカーの好きな子が、勉強で疲れた頭を休めるためにボールを蹴るとか、バスケットの好きな子が、勉強で疲れた頭を休めるためにボールをつくとかいうことと同じです。その子たちが、どうしてサッカーやバスケットをそれほど好きになったのでしょうか。たくさん練習したからです。読書も同じです。たくさん読むから好きになり、好きになったからますます読むようになっていったのです。
 小学校低学年のころによく本を読んでいた生徒が、勉強が忙しくなるにつれてだんだん読書から遠ざかるという傾向があります。これは、大人の責任です。勉強という目先の成果に追われて、読書という肝心の根を育てることを後回しにしてしまうからです。どんなに忙しいときでも読書の時間を確保するということが、大人の心がけねばならないことだと思います。

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要約の仕方 as/109.html
森川林 2006/11/02 03:34 
 文章の要約ができるのは、小学5年生ごろからです。小学4年生までは、物事を構成的に考える力がまだ十分に育っていないので、要約の練習をするには無理があります。しかし、小学5・6年生ごろの要約は、かなり長くなってしまうのが普通です。中学生になると、次第に楽に要約できるようになってきます。
 以下は、中学生や高校生の人が要約する場合の方法です。
 まず、対象となる文章を(1)すばやく最後まで読みながら、(2)線を引いていきます。
 (1)で大事なことは、じっくり読むのではなく、最後まで読むということです。文章は、全体像がわかって初めて細部がわかります。細部をきちんと読んで全体がわかるのではありません。これが文章を読みなれていない人の陥りがちな点ですからよく気をつけてください。特に、大学の入試問題のような種類の文章では、最後の数行を読んで初めて全体がわかるという仕組みになっているものがかなりあります。逆に最初の数行はだれが読んでもちんぷんかんぷんのようなことが書いてある場合があります。読みなれていない人は、この最初の数行でつまずいてしまうことが多いのです。
 (2)の線を引く箇所は、「大事そうなところ」「わかったところ」「おもしろいところ」です。しかし、ここで大事なことは、「大事そうなところ」を中心に線を引くのではなく、むしろ「わかったところ」「おもしろいところ」を中心に線を引くということです。というのは、最初に読んでいるときは、何が大事なのかよくわからないからです。文章の内容とはあまり関係がないかもしれないが、自分なりによくわかったところ、又は、自分なりにおもしろいと感じたところを中心に線を引いていきます。
 次に、線を引いたところだけを数回読み直します。線を引いたところというのは、文章全体の数パーセントですから、ざっと眺める感じですぐに数回読み直しできます。すると、不思議なことに、文章の全体像が頭に入ってくるのです。線を引いたのは、「わかったところ」「おもしろいところ」が中心です。しかし、その線を引いた箇所だけをとびとびに読んでいると、線を引いていない箇所も含めて全体のイメージがつかめてくるのです。
 ここで、今度は、本当に「大事なところ」に改めて線を引き直します。ここで要約の字数が問題になってきます。1文を約50字と計算すると、150字の要約では3文、200字の要約では4文です。150字に要約する問題でしたら、線を引きなおす「大事なところ」は3ヶ所ぐらいです。
 最後に、その「大事なところ」をつなげて文章にします。
 要約の問題は、実力がついてくると、すばやく書いてもじっくり書いても、点数にあまり差が出ません。要約を書くのに時間をかけるのはもったいないので、すばやく要約して、肝心の作文・小論文の方にじっくり時間をかけましょう。

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