ログイン ログアウト 登録
 Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 1105番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/12/4
コミュニケーション・ラーニング(その1) as/1105.html
森川林 2010/12/24 09:24 



 「あのブドウは、すっぱい」という文を理解するためには、何が必要でしょうか。この文を理解するためには、知識と経験の裾野が必要です。ブドウとはどういうもので、食べるとはどういうことで、すっぱいとはどういうことかという経験や知識がなければなりません。

 しかし、たとえ一部に知らない知識があったとしても、それ以外の経験や知識の裾野が豊富であれば、内容を類推することはできます。例えば、ブドウという既知の単語ではなく、自分の知らないフルフルという単語が使われていて、「あのフルフルは、すっぱい」という文を見たとしても、自分のこれまでの経験から、「フルフルとはたぶん食べ物のことで、すっぱいときもあるが、本来すっぱくない状態で食べるものだろう」と見当をつけることができます。

 文を理解するとは、自分の持っている知識と経験の裾野の広さに応じて、より高い山頂をきわめるということです。裾野の広がり具合によって理解の度合いが規定されるということは、同じ理解でも、浅い理解と深い理解、ある方向からの理解と別の方向からの理解があるということで、これが国語の理解の特徴です。

 これに対して、算数数学の理解は、論理のつながりに基づく理解です。このため、算数数学は、わからなくなったら前の単元に戻り、論理のつながりを回復することによって理解するという方法をとります。

 その論理のつながりの最初の出発点は、物理的世界に対する身体的感覚です。例えば、3つのリンゴと2つのミカンを合わせると5つの果物になるという足し算の場合、3つのリンゴと2つのミカンは、物理世界に属しています。同様に、長さや角度や時間や形という物理的世界も、算数の論理の出発点になっています。

 裾野によって理解する国語と、論理によって理解する算数数学の違いは、もっと複雑な文を考えてみるとよくわかります。

 例えば、「民主主義は教科書に書かれていない」という文です。この場合、知識や経験の裾野として、民主主義という言葉、教科書という言葉、書かれるという言葉を知っていることは当然必要ですが、それとともに、民主主義というものが自主性、自立性、創造性に結びついた概念で、教科書というものが他者依存、ありきたり、お仕着せなどに結びついた概念だという理解がなければ、この「民主主義は教科書に書かれていない」という文を正しく理解することにはなりません。

 国語力における理解は、論理のつながりを回復するという理解の仕方ではなく、裾野を広げることによってより高い山頂をきわめるという理解の仕方です。ここから、国語のセルフ・ラーニングの特徴が出てきます。

 国語のセルフ・ラーニングは、経験と知識の裾野を広げる学習です。高学年になって国語の問題の出来が悪くなったときに、その前の学年に戻って国語の問題を解いても力はつきません。その高学年に応じた知識と経験の裾野を広げることが力をつける方法になるのです。(つづく)

この記事に関するコメント
コメントフォームへ。

同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
国語力読解力(155) 

記事 1104番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/12/4
絶対語感の世界のつづき as/1104.html
森川林 2010/12/22 21:25 


 「絶対音感」(最小葉月著・新潮文庫)によると、日本における絶対音感の教育は、園田清秀が昭和6年(1931年)、パリに留学しているときに、幼児期からの練習方法を考えたところから始まります。

 清秀は、子供が言葉を自然に習得することから着想を得て、幼児期から繰り返し一定の音を聞かせることによって絶対音感がつくのではないかという仮説を立てました。そして、自分の子供を実験台にして和音を聴かせて答えさせる練習を繰り返しました。

 この、和音を聴かせるというところがいちばんの工夫だったようです。音は、他の音との関連によって、座標がよりはっきりと固定するようになからです。

 その後発展した日本の絶対音感教育では、幼児期から始めるということと、毎日の練習を行うということ、そして、この和音を聴かせることが重要な柱になっています。また、ただ聴かせるだけではなく、ある一つの和音が定着してから、それに類似した次の和音に進むという方法論も必要なようです。



 この絶対音感の教育から、絶対語感についてのいくつかのヒントが考えられます。

 第一は、絶対感覚には、幼児期からの学習が必要だということです。絶対語感の場合は、3歳から5歳の時期の語り聞かせ、6歳から8歳の時期の暗唱や読書という方法になると思います。

 第二に、絶対感覚の取得には、毎日の学習が大事だということです。幼児期は、自分の周囲の環境を丸ごと世界として受け取ることができます。世界というものは毎日休みなく存在するものですから、週に何回か学習するということでは、それは世界にはなりません。毎日やることによって、初めて定着が容易になるのです。

 第三に、音楽における和音と同じものは、言葉における文型だと考えられます。音も、言葉も、単音や単語で認識されるだけでは不十分です。他の音や他の言葉との組み合わせの中で認識されることによって初めて確実な座標を持つようになります。

 幼児は、いろいろな語りかけをされることによって、文の基本的な形を身につけます。その文型の身体化によって、ほかの人から聞いた文を理解したたり、その文を自分で反復したりできるようになります。単語ではなく、文を理解するということが重要です。

 第四に、文の理解力を高めるためには、短い単純な文だけではなく、ある程度の複雑さを持った長い文を聴かせる必要があるということです。例えば、幼児にあいさつするときも、「おはよう、けんたろうちゃん」で終わるのではなく、「おはよう、けんたろうちゃん。今日は朝からさわやかな天気で、気持ちがいいね」というように、ひとこと余分に話すということです。しかし、この場合も、やりすぎには弊害があるので、ほどほどにということが大事です。

 第五に、その長い文型のより発展したものがひとまとまりの文章だということです。幼児は、周囲の大人から話しかけられることによって、自然にその国の言語を身につけていきます。しかしさらに、同じ文章を繰り返し聴かされることによって、言葉を理解する力を身につけるだけではなく、世界を認識する方法を身につけていくのです。

 絶対語感とは、単語や文を理解するだけの力ではなく、文章を丸ごと理解する力だと考えることができます。

この記事に関するコメント
コメントフォームへ。

同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
日本語脳(15) 
コメント11~20件
……前のコメント
総合学力クラス 森川林
子供は、暇そうにしているのがいちばんです。 年がら年中がん 6/22
記事 5107番
さまざまな勉強 森川林
勉強は、作文と読書と算数数学と歴史を中心にやることです。 6/21
記事 5106番
作文力がこれか 森川林
作文力をつけるために必要なのは読書と対話。 出力の前に入力 6/19
記事 5105番
作文を書くとき 森川林
 接続語と助動詞は、実は重要です。  中学生や高校生で、文 6/18
記事 5104番
国語は、読む力 森川林
国語の力をつけるための音読は、1冊の問題集を繰り返し読むのが 6/16
記事 5103番
国語力は、テク 森川林
国語力をテクニックで身につけようという考えそのものがあさはか 6/14
記事 5100番
本当の勉強は、 森川林
子供は、自然に成長していれば、みんな時期が来ればそれぞれにが 6/12
記事 5098番
これから大学生 森川林
MMさん、ありがとうございます。 これは、10年以上前の記 6/12
記事 820番
これから大学生 MM
先生の書かれていることは今読んでもそのまま通じます。 10 6/11
記事 820番
毎週作文を書く 森川林
作文の勉強というのは、負担の大きい勉強です。 だからこそ、 6/11
記事 5097番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
Re: 標準新 森川林
 これは、確かに難しいけど、何度も解いていると、だんだん感覚 12/2
算数数学掲示板
標準新演習算数 あかそよ
3の1はできました。 2は、答えを見るとなんとか理解できま 11/23
算数数学掲示板
2024年11 森川林
●サーバー移転に伴うトラブル  本当に、いろいろご 11/22
森の掲示板
現在森リンベス 森川林
このあとの予定。 ・森リンベストを直す(直した) ・森リ 11/20
森川林日記
Re: 入会手 言葉の森事務局
 お世話になっております。  弟さんのみご入会が1週間 11/15
森の掲示板
入会手続きにつ やすひろ
お世話になっております。 個別掲示板を開けませんので、ここ 11/15
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習