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コミュニケーション・ラーニング(その5) as/1109.html
森川林 2010/12/29 12:21 


 幼児は、産まれたときから、その周囲の世界に適応するために生きることを始めます。適応とは、自分の身体と感覚を周囲の環境に結びつけることです。

 人間の社会で生きていくためには、言葉というものが、身体の危険や安全や快や不快につながっていることを原初的な絶対感覚として身につける必要があります。人間が人間らしく成長するためには、単なる色や音や匂いではなく、何よりも言葉という音声が世界の理解と結びついていることを学ぶ必要があるのです。

 ところが、0歳から2歳のころに、テレビやビデオの音声が頻繁に聞こえてくる環境にいると、言葉というものを自分の感情から分離させて聞き取る能力を身につけます。

 例えば、天気のいい日に、親が幼児に、「今日はいい天気だね」と語りかければ、幼児は、その意味をまだ理解する時期に達していなくても、明るい窓辺の気持ちいい情景と「今日はいい天気だ」という文を感覚的に結びつけます。しかし、その日の天気にかかわらず、テレビのドラマの音声が、「今日はいい天気だ」などと話す音声が聞こえてくれば、幼児は、言葉を自分の感覚や感情とは別のものとして受け取る能力を身につけます。

 このようにして、テレビの普及と、狭い住宅事情と、惰性で見るテレビという環境が、幼児を人間的な感情に乏しい子供にしてしまうのです。だから、乳幼児のいる家庭は、テレビを見るとしても、家族全員が音声をヘッドホンで聞くというような配慮が必要になります。



 では、幼児には静かな環境がいいのかというと、単純にそういうことではありません。

 欧米の子育ては、母子の分離が早い時期から行われることに特徴があります。そのため、子供は小さい時期から、親と離れてひとりで寝起きする習慣を身につけます。実は、これは子供の成長にとって大きなマイナスになっています。

 昔から、日本人の学力が優秀だということがよく言われていました。日本は、明治維新と戦後の復興という二つの奇跡をなしとげました。その動因となったものは、国民の大多数が新しい情勢を理解し、そこにきわめて短期間に適応したことです。

 この短期間の広範な全国民的な理解の普及が日本文化の特質で、それを支えていたものが、日本人の優れた理解力でした。

 この理解力を生み出したものは、学校教育ではありません。日本の学校教育は、もともと欧米の学校教育を模倣したもので、そこに欧米の制度よりも優れた面はなかったからです。

 それなのに、なぜ国民の大多数に優れた理解力と学習力があったかというと、その秘密は日本文化にあったのです。(つづく)

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匿名 20101229  
いつもお世話になっています。

小2ももの(通信木曜小西先生)の母です。
先日送っていただいた、新しい原稿用紙が、今回から、400字詰原稿用紙になっていました。今まで240字詰でしたが、これでよろしいのでしょうか?
選択できるのであれば、うちとしては、以前の240字の方がまだ良いのではないかとおもいますが。いかがでしょうか?


森川林 20101229  
 それは失礼しました。手違いで400字詰のものが送られたのだと思います。
 1月4日に贈りなおしますのでお待ちください。

匿名 20141204  
続きは?どこ?

森川林 20141212  
 こちらに、続きが(9)まで載っています。(ちょっとわかりにくくて申し訳ありませんが)
http://www.mori7.com/as/1100/

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コミュニケーション・ラーニング(その4) as/1108.html
森川林 2010/12/28 11:54 


 作文における自己との対話とは何でしょうか。

 作文はひとりで書く作業です。だから、どういう方向に話が展開するかわかりません。お喋りの場合は、相手との掛け合いで話が進んでいきますが、作文はそれを自分ひとりの力で進めていかなければなりません。

 このときに必要なのは、全体のあらすじです。自分が書こうとしているものに熟知している場合は、文章は滞りなく進んでいきます。例えば、経験した事実をそのまま書くような文章の場合です。

 しかし、自分の書こうとしているものに未確定の部分がある場合は、文章は考えながら書いていくことになります。この考えながら書いていくときに頼りになるのが、自分が直前に書いた文との対話です。多くの場合、文章を書く人は、全体のおおまかなあらすじを頭に入れながら、個々の文は、その直前に書いた文と関連させながら書いていきます。

 この自分の書いた直前の文との対話を、もっとすっきりと対話中心にしたものが構成図を書くという方法です。自分が書こうと思うものに未確定の要素が多ければ多いほど、構成図であらかじめ考えを深めるという対話が必要になってくるのです。

 しかし、対話の土台になっているものは予備知識です。知識の少ない人どうしがいくら話を交わしても、そこから新しいものはなかなか生まれないでしょう。読む力をつけて知識の土台を広げていくことが、作文を書くための重要な前提であることは言うまでもありません。



 さて、国語力のセルフ・ラーニングということで、語り聞かせ・読み聞かせ、音読・暗唱、読書・問題集読書、作文・構成図などがあると書きました。

 この中で最も大事なものは、幼児期における語り聞かせ、読み聞かせです。

 子供がその国の言語を自然に覚えて使えるようになるのは、親が子供に語りかけることを繰り返すからです。この語りかけの反復によって、子供は、世界を文として理解する能力を絶対感覚として身につけます。

 幼児期に身につける絶対感覚には、このほかに、音楽の感覚、運動の感覚、抽象的な概念としての数の感覚、図の感覚などがありますが、最も重要なものは言語感覚です。それは、人間が生活する世界の大部分は、言語による意味づけが行われているからです。

 周囲の大人による語りかけで、幼児は文を身につけます。ここで大事なのは、個々の単語を身につけるよりも先に文を身につけるということです。なぜかというと、単語は、ある実体を言語で表すという抽象的なものですが、文は、それによって何らかの意図ある行動や結果が付随する人間的なものだからです。

 ある語りかけのあとに、ある行動が続くというのが、人間と人間の関係です。機械に物を覚えさせるには、例えば、リンゴの実体を見せて、リンゴという言葉に対応させるようにすればいいのですが(光学文字読み取り装置のような感じで)、人間はそういうわけにはいきません。「リンゴ、食べる?」(あなたはリンゴを食べますか)という文のあとに、リンゴをもらい、それを食べて味わうという身体的な結果が付随することによって、子供は、「リンゴを食べる」という文を身につける中で、「リンゴ」と「食べる」という単語も身につけます。

 このように考えると、人間の語りかけではない、機械の語りかけ、例えばテレビをつけっぱなしにして幼児に聞かせることが大きな弊害を持つことがわかります。(つづく)

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