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作文試験物語(その1)―小1から言葉の森で勉強していたA君が高校入試の作文試験に臨む as/1152.html
森川林 2011/01/30 19:40 


 以下は、小学校低学年のころから言葉の森で作文の勉強をしていた子が、中学生、高校生になって受験を迎えたときのひとつの典型的な例です。実際に教えた複数の生徒をモデルにしています。



 A君は、小学校1年生の途中から言葉の森を始めました。毎日課題の長文を音読するという自習があったので、ときどきさぼりながらも、一応音読をするという習慣を続けていました。課題の長文を音読していると、それを聞いているお父さんが、「へえ、面白い話だなあ」と割り込んできて、途中から楽しいお喋りになることもよくありました。

 小学生のころは、楽しく作文を書いていました。特に、小学校3、4年生のころは、家族の内緒の話を書いたり、自分の失敗をした話を書いたりして、家族みんなで大笑いすることもありました。小学校4年生のとき、そのひとつが、小学生新聞に入選したことがあります。担任の先生がそれに気づいて、クラスみんなの前でその作文を発表し大受けしました。

 小学校5年生になると、言葉の森の作文の課題は急に難しくなり、感想文が中心になってきました。しかし、楽しい作文は、もう小4までにたっぷり書いたので、小5の難しい課題はむしろ新鮮でした。

 小5の課題の長文を家で音読していると、時々お母さんが、「ええ、そんなに難しい話、読んでわかるの」と聞いてきたことがあります。確かに難しくてよくわからない箇所もありましたが、そういう難しい課題に取り組んでいるということがちょっと誇らしい気持ちにもなりました。

 高学年になると、友達は、みんな塾に行き始めます。作文の勉強のようなマイナーなことをやっている人は、周りにはいません。少し不安な気持ちもありましたが、小学校1年生からやっているのだし、通信教育の担任の先生も、今では学校の先生よりずっと長く教わっている先生で、自分のことをよく知っていてくれる先生なのでやめるつもりはありません。難しくて大変だなあと思いながら、そのまま勉強を続けていきました。

 中学生になると、部活と定期テストで、学校生活はかなり多忙になってきます。言葉の森は、週1回同じペースで授業があるので、定期テストとぶつかるときは休みにしてしまうこともあります。しかし、通信教育なので、自分の都合のいい時間帯に授業を受けることができるし、休んだ分は別の日にふりかえることもできるので、何とかやりくりをして続けていくことができました。

 作文の勉強をしていることは、中学の学校の勉強との関連でいうと、直接的なメリットはあまりありません。しかし、レポートを提出したり、感想文を書く宿題が出たりしたときは、みんなが苦労している中、ひとりで楽に仕上げることができました。

 また、国語の勉強については、小学生のときから言葉の森をやっているという意地のようなものもあるので、毎回高得点を取ります。漢字や文法の問題は勉強しなければいい点は取れませんが、読解問題はこれまで難しい長文を読んできた蓄積があるので、全然勉強していかなても高得点が取れるのです。

 中学3年生になり、受験が迫ってくると、みんな勉強に拍車がかかりだしました。A君も、中3の夏休みごろから、猛烈に勉強し始めました。すると、みんなも同じように勉強しているはずなのに、A君の成績はどんどん上がっていくのです。学校の先生は、「考える力のある子は、やりだすと伸びるのも速いんですよ」と言ってくれました。A君は、小学生のときからずっと難しい長文を読んできたから、それで考える力がついたのだろうなあと思いました。

 言葉の森の作文の勉強をしていたことが結果的に役立ったのは、高校入試の推薦試験の枠に、作文の試験があるとわかったときです(笑)。しかし、これまで、そのような試験向けの作文の勉強をしていたわけではありません。どうしようかと思って、言葉の森の先生に聞いてみました。(つづく)

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作文の勉強がなぜ大切か as/1151.html
森川林 2011/01/29 12:36 


 学力には、大きく分けて理解力と表現力があります。

 現在の受験体制を中心とした勉強の中では、理解力の基礎となる記憶力が特に重視されがちです。それは記憶の再現という形の試験が、○と×をつけやすい単純な試験だからです。

 多くの受験生を短時間で採点するためには、答えが一意的に決まっている再現型の問題を出す方が能率が上がります。しかし、そのために子供たちは、記憶することや理解することが勉強の中心だと思ってしまうのです。

 しかし、これからは、理解力ばかりでなく、表現力が理解力以上にもっと重視されるようになります。

 記憶力や理解力が必要とされた社会は、同じ作業を正確に続けることが要求される工業型の社会でした。しかし、与えられた課題を与えられたとおりに正しく遂行する能力は、次第に人間ではなく機械やソフトウェアによって代替されるようになってきます。

 これからの社会では、与えられた仕事を決まったやり方で取り組む人よりも、新しい課題を自分で発見して創造的に解決する能力を持つ人が求められてきます。そこで、創造力の土台となる表現力を育てることがこれからの学力の中心になってくるのです。

 作文というのは、何もないところに自分の考えを創造していく勉強です。特に、言葉の森で行っている構成図をかきながら考えるという作文は、創造的に考える力を育てるのに役立ちます。



 今、目の前に置かれている勉強の状況を見るだけでなく、将来の社会によって求められる学力という観点から、子供たちの勉強の重点を考えていく必要があります。

 将来の学力として必要なものは、第一に自分の考えを創造的に表現するという意味での作文力、第二にその表現力の基礎となる読解力を育てるという意味での国語力、第三に創造性を数学的にも適用できるようにするという意味での数学力です。

 しかし、数学や英語は、学年が上がってからでも、取り組み方によって比較的短期間に成績を上げることはできますが、作文力や国語力は、子供のときからでないと得意にさせることはなかなかできません。だから、小学校1年生の楽しく勉強できる時期から作文の勉強を始めていくことが大事なのです。

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