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作文をきっかけとした対話によって伸びる子供の思考力 as/1192.html
森川林 2011/03/10 11:06 



 作文が返されたあと、その作文をテストや何かと同じようにすぐにしまうのではなく、その内容を見てみます。そして、子供が作文に書いた内容について、お父さんやお母さんが共感してあげるのです。

 その対話の仕方は、こんな感じです。

 「ほう、こんなことを書いたんだ」と、まず内容に目を向けます。しかし、そのあと、「この字が違っている」とか、「この文がおかしい」などという批評はしません。また、子供の書いた感想や意見についても、「もっとこう考えた方がいい」ということも言いません。

 しかし、「ほう」と感心しただけでは、そこで話が終わってしまいますから、お父さんやお母さんが、そこで似た実例を話してあげるのです。「この話については、お父さんも、昔こういうことがあったなあ」というような話題の広げ方です。似た例で話を広げていくというのが、対話を発展させる最もいい法です。

 似た例には、体験の似た例と知識の似た例があります。体験は、実際にお父さんやお母さんが体験したことで、この体験実例が子供にとっては深く印象に残ります。もうひとつの知識実例は、本を読んで知っていることです。これも、エピソードを面白く話せれば、子供との話が弾みます。

 実例以外の話題の広げ方は、その作文の感想に対する、新しい理由、方法、原因、対策を考えていくことです。

 例えば、子供が、意見文の「○○はよいか悪いか」というテーマで、「よい」という意見の複数の理由を書いていたとします。そのときに、お父さんやお母さんが、意見そのものでディスカッションを始めるのでは単なるディベートになってしまいます。日本人の対話には、ディベートよりももっといい方法があります。それは、意見そのものには賛同した上で、子供が考えた理由に追加する新しい理由や、新しい方法を考えることです。また、子供と同じ理由で、親が新しい実例を考えることもできます。つまり、批判によって話を発展させるという欧米流の弁証法的方法ではなく、新たなものを付け加えるという創造的方法によって話を発展させるのです。

 更に言えば、理由にも、Aのよい理由とBの悪い理由の二つが考えられます。方法にも、個人の心構え的な方法と社会的な方法の二つが考えられます。原因にも、歴史的原因と社会的原因の二つがかんがえられます。何だか、作文の勉強のようになってきましたが。(^^ゞ

 では、意見そのものにどうしても反対したくなったときはどうするのでしょうか。そのときは、反対意見の理解という方法が使えます。

 例えば、「○○はよいか悪いか」というテーマで、子供が「よい」という意見を書いていたが、お父さんは「悪い」と思っていたとします。そのときに、「おまえの言っている『よい』とう意見はおかしい。お父さんはこういう理由で『悪い』と思う」とやり出したらどうなるでしょうか。日本人は、言語脳と感情脳を左脳で一緒に処理する世界でも唯一の日本語脳を持っているので、とたんに親子とも消化不良になってしまいます。日本人には、食後の話題でディベートは向かないのです。

 そこで、反対意見への理解を使います。お父さんが、「うーむ。君はよいと思うかあ。確かにこういう理由で悪いという意見もあるかもしれないけど、やはり君の言うようにこういう理由でよいという考えもあるんだろうね」。この反対意見への理解の部分が、お父さんの言いたい意見です。こういうおくゆかしい方法で、だれも批判せずに二人で新しい意見を共有できるのです。

 日本の家庭には、もっと対話が必要です。しかし、その対話を欧米風の討論として行ったのでは、かえって子供が成長してから日本の社会で不適応を起こします。日本人は、討論で勝った人をあまり尊敬しません。しかし、もちろん討論に勝てない人を尊敬するわけではありません。討論に勝つ実力はあるが、そういう討論を好まない人を尊敬するのです。(つづく)

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作文の勉強を家族の対話に生かす。--点数の勉強から対話の勉強へ as/1191.html
森川林 2011/03/09 19:03 



 作文の勉強は、国語の勉強の一部と思われています。また、国語の勉強は、国数英理社などのさまざまな教科の一部と思われています。しかし、本当は違います。

 国語の勉強は、国数英理社などの教科と同列の勉強ではなく、それらすべての教科の土台となる理解力、思考力をつける根本の勉強です。だから、国語力のある子は、たとえ今、ほかの教科があまりできなくても問題ありません。本気になって取り組めば、ほかの教科の勉強もすぐにできるようになるからです。しかし、逆に、国語力のない子は、たとえ今ほかの教科がよくできていても、将来に不安が残ります。考える勉強になればなるほど、どの勉強にも国語的な思考力が必要になってくるからです。

 ところで、国語の勉強は、日本では漢字の読み書きの勉強のように思われていますが、漢字力は国語力のごく一部です。その証拠に、漢字力が国語力として評価されている国は、世界でも日本と中国だけです。国語力の中心は、文章を読んで理解する力、つまり読解力と、考えたことを表現する力、つまり作文力です。だから、子供たちの勉強の中心は、読書と作文になるのです。

 この作文の勉強を、言葉の森では、従来の「点数の勉強」としてではなく、「対話の勉強」として考えています。

 作文以外の勉強は、ほとんどすべてが点数の勉強です。学校や塾でテストがあると、点数のついた答案が返されます。たいていの親は、その点数を見て、よくできていたかあまりできていなかったかを判断し、それで返されたテストはしまってしまいます。もちろん、ほとんどの子供もそうです。テストというものは、習ったことの定着度を調べるためのものですから、点数がわかればそれでいいのです。しかし、そのテストと同じような見方で作文を見てしまうのでは、作文の勉強を生かしたことにはなりません。

 もちろん、言葉の森でも、作文の勉強をできるだけ客観的に評価できるように、点数の評価を行っています。例えば、森リンの点数ランキングや、毎回の作文の項目のでき具合による○×評価などです。作文の評価でこのように客観的な採点を行っているところはほかではほとんどありません。従来のほとんどの作文評価は、評価する人の主観に左右されるので、人によって点数が変わったり、あるいは同じ人でも日によって点数が変わったりしています。

 しかし、言葉の森では客観的な点数は出していますが、小学校4年生以下の生徒には、あまり点数を意識させないように工夫しています。例えば、毎月の森リンのベスト10で、小4以までは上位の作品を表示していません。それは、なぜかというと、お父さんやお母さんが、その点数や作品を見て、点数の競争で子供に意欲を持たせようとすることがあるからです。「この第1位の作文に負けないように書きなさい」というような励まし方をするお父さんお母さんがかなりいるのです。

 作文は、ほかの勉強と違い、がんばったからといってすぐに上手になるものではありません。作文の上達には、きわめて長い時間がかかります。それは、作文力が、その子の本当の学力とむすびついているからです。短期間の努力ではすぐに上達しない勉強を、点数の競争としてあおられると、子供はかえって意欲を失います。

 そこで必要になってくるのが、対話の勉強です。作文が返却されたあとに、それをすぐにしまうのではなく、お父さんやお母さんがその作文を読んでみるのです。しかし、読んだあとに、「この字が違っている」とか、「もっとていねいに書きなさい」とか言うために読むのではありません。特に、子供と接する時間の少ないお父さんは、子供の作文を見ると批評したくなると思うので、言いたくなるのをぐっと抑えてください。子供の書いた作文を読むなり、「ここがおかしい」などと言っているようでは、作文の見方は合格とはいえません。(つづく)

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