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創造産業の前提としての日本の国防 (日本の新しい産業 その4) as/1211.html
森川林 2011/03/25 19:20 



 さて、これまで経済活動の本質や、創造の本質について長々と書いてきましたが、これから話は一挙に具体的になります。それは、何よりも日本が今後早急に新しい創造産業を生み出さなければならないという差し迫った状況があるからです。

 今、日本にとって大事なことは二つあります。ひとつは国防、もうひとつは産業です。

 まず、国防ということについて言えば、アメリカの支配と中国の侵略から、日本の独立を守り抜くことです。アメリカと中国は、明確な支配と侵略の意図を持つ国家で、国家が軍隊と一体となって行動しています。それに対して日本には、明確な国家戦略もそれを支える強力な軍隊もありません。

 日本は、平和憲法に書かれているとおり、他国の善意に信頼して国際社会の中で生きていこうとしています。しかし、日本が考えるような善意を持つ国は、世界にはほとんどありません。日本以外の世界中のほとんどすべての国は、自国の利益のために他国を支配し侵略することに何のためらいも持っていません。日本人の持つ倫理感は、世界の標準から見ると進みすぎているのです。

 これまで日本が、他国の善意に信頼して来られたのは、日本が根本的なところで、他国、特にアメリカと中国の利害に深く対立していなかったからです。しかし、いったん利害が対立したらどうなるでしょうか。アメリカはもともと、自国の利益のために、何の合理的な根拠もなくイラクに戦争をしかけ自国の支配下に置くような国です。中国もまた、自国の利益のために、何の合理的な根拠もなくチベットとウイグルを支配し続ける国です。アメリカと中国が気にするのは、国際世論でどう言われるかという外面的な建前だけであって、決して内面的な倫理感ではありません。日本の周囲の国は、すべてこのような野蛮な国々なのです。

 そして、更に大事なことは、これから世界の経済が全体的に低迷化する中で、日本とアメリカや中国との利害の不一致が今後大きくなっていく可能性が高いということです。利害の対立が利害の一致よりも大きくなれば、アメリカと中国はどのような口実も作ってでも日本をイラクやチベットのように自国の支配下に置き、日本の独立と日本の資産を奪いに来るでしょう。

 そのときに、アメリカや中国の動きにブレーキをかけるものがあるとすれば、それは日本人ひとりひとりが持つ独立心です。かつて日本を占領したアメリカ軍が、戦争に勝利しながら日本という国を解体することができなかったのは、それまでの硫黄島、沖縄での激戦、特攻隊の攻撃などに見た日本人の独立心に恐れを抱いていたからです。

 同じことは、今でも通用します。ベトナムは、日本と同じように小さな国でありながら、アメリカの侵略をはねのけ(ベトナム戦争1960年12月-1975年4月)、その後、中国の侵略をはねのけました(1979年2月-3月)。日本人ひとりひとりが日本の独立を守る意志を持ち続けるかぎり、どのように強力な軍事力を持つ国家も日本を支配することはできません。

 これから経済環境が困難を増すにつれ、日本の周囲の国々は、アメリカや中国ばかりでなくロシアも北朝鮮も韓国も含めて、日本の富を奪うために日本を支配するためのさまざまな策略をめぐらしてくるでしょう。その策略の中には、当然暴力的なものも含まれます。野蛮な国々に、日本に対する侵略を思いとどまらせるのは、日本人ひとりひとりが強い意志を持っているということを示すことです。

 世界中の国が、日本人はどんな弱者に対しても優しいが、しかし決して力で屈服させることはできないということを共通の認識とすれば(そして、それは既にそうなっていますが)、日本を侵略しようとする国はなくなります。たとえ一時的に日本を侵略できたとしても、日本人のすべてが、小野田寛郎(おのだひろお)さんのように最後のひとりになっても日本を守るという意志を持っていれば(そして、それも既にそうなりつつありますが)、日本の侵略を維持できる国はありません。

 大事なのは、日本が明確にこの意思表示を行うことです。日本を脅かすどのように小さな不正であっても、それを黙認せず、日本を守ることをはっきりと明言することです。

 さて、日本の防衛に対して、今緊急に必要なことは、三つあります。

 第一は自衛隊を日本を守るための正式の軍隊として認め、その存在に誇りと自信を持たせることです。自衛隊という名前と立場は今のままでもかまいませんが、日本国民と自衛隊が一体感を持つことが重要なのです。

 しかし、それは、日本がより強力な軍隊を持ったり、核兵器を持ったりすることではありません。力に対して力で対抗しようとすることは、日本が、アメリカや中国と同じレベルの国になることです。

 力の均衡という論理を前提とするかぎり、世界には永久に平和は訪れません。なぜなら、今のアメリカやロシアに見られるように、ある時期、自国の経済力に対応した軍事力を持っていた国が、やがて経済の衰退とともに、国力に不釣合いな軍隊を持つようになるという歴史の変化が必ずおきるからです。そして、その一方で、中国のように新たに経済力をつけた国がその国力に応じた軍事力を持とうとすれば、世界には、常に経済力の不均衡に見合った軍事力の不均衡が新たに生まれます。

 国家間の問題の解決に軍事力は使わないという原則を打ち立てることが、地球の平和の最も確実な保障になります。そして、その原則を率先して提案できる唯一の国は日本です。核兵器を開発する科学技術も経済力も十分に持ちながら、しかし敢えて核兵器を持たないと世界に宣言している国は、日本だけです。世界中の心ある人たちは誰もが、日本が中心となって世界に平和が訪れることを期待しているのです。


 第二は、既に日本の国内に潜伏しさまざまな工作を続けているはずの、中国、北朝鮮、アメリカ、ロシアなど他国の諜報機関に対して、日本独自の諜報機関を強化して対抗することです。軍事訓練を受けたプロの工作員から日本国民を守れるのは、日本側のプロの組織だけです。

 第三は、海外、特に中国からの大量の移民に大きな制約を課すことです。多くの善良な移民に紛れ込む形で、必ず日本の国内工作を目的とした組織が、民間人の顔をして日本に永住しようとしているからです。

 日本は、アジアの国々と政治的、経済的、文化的に深く交流していく必要があります。しかし、それは日本の玄関を開ける鍵を相手に渡すことではありません。外国人を、日本の客間に招き入れるのはいいのですが、寝室にまで入れることは拒否しなければなりません。まして、外国人が勝手に入り込んでその家の書斎や金庫を自由に使うようなことを許してはなりません。具体的には、外国人を政治やマスコミや教育の中枢に入れることについては、個々に慎重に審査し、必ず一定の歯止めをかけておく必要があります。

 日本は、世界のほかの国とは違います。世界の中でただひとつだけ、国全体が人間の共感を前提として成立している家族的国家です。日本のこの独自の文化を守るためには、移民に関してグローバル・スタンダードを適用することはできません。日本は、世界中の国に門戸を開いています。しかし、それは外国人が日本の国を自由に支配していいということではありません。日本の国は、日本人を中心に、日本を心からよい国にしていこうと思う人たちだけで運営していく必要があるのです。(つづく)

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人間の持つ創造性の土台としての不完全性 (日本の新しい産業 その3) as/1210.html
森川林 2011/03/24 21:17 



 日本の未来の産業は、IT産業でも金融工学産業でもありません。もちろん、農業でも、製造業でも、サービス業でもありません。

 これらの過去の産業に共通しているものは、自然や人間がもともと持っている力を拡大し、その一方でその仕事にかかわる人間の労働を省力化することによって利益を上げるという方法でした。そのため、その産業の内部での革新が行き詰まると、企業はリストラによって利益を確保するという方向に向かいました。

 この方向の先にあるものは、ある意味でユートピアともいえる不思議な世界です。従来の産業が発展した先にある究極の社会は、ロボットがすべての生産活動を行い、人間はその成果を消費するだけという社会です。そこでは、ほしいものがすべて無料で手に入ります。だから、労働する必要のない人間は、無給でも困ることはありません。

 しかし、この世界は、南の島でバナナを食べ放題の人たちの暮らす社会と本質的には何も変わっていません。変わったのは、バナナのかわりに、もっと多様なものが手に入るようになったということだけです。

 生産力が極度に発達し、労働がすべて機械にとってかわられるようになった社会では、人間のすることは豊かな消費だけになります。この平和な停滞した社会は、もはや自らの内部に、問題を発見し新しい何かを創造するという動機を持ちません。このような社会では、人間は、機械の恩恵を受けるサルと同じような存在になっていきます。ボタンを押して機械を利用することはできますが、その機械がどのような仕組みで動いているのかは知りません。まして、自分がその機械を作ったり改良したりすることなど思いもつきません。

 豊かな日本の社会では、既にこのような若者たちが生まれています。物心ついたときから、テレビも車もエアコンもあり、インターネットでいながらにしてほしいものが手に入る環境で育った子供たちは、消費には敏感ですが、自分で何かを生産するという動機には乏しいのです。



 人類の未来がこのような停滞したユートピアにならないようにするためにも、これからの日本が生み出すものは、新しい創造産業でなければなりません。この創造産業を生み出すだけの経済力と文化を持った国は、世界の中でも日本しかないからです。

 創造産業は、従来の産業と違い、人間の労働を減らすことによって価値を生み出すのではなく、逆に人間の特質を生かすことによって価値を生み出します。この場合の人間の特質とは、創造性です。

 従来の産業が、人間の労働の省力化をめざしたのは、そこで使われている人間の労働力が創造性を抜きにした労働力だったからです。工場で歯車のねじをしめる仕事、物を運んで送り先に届ける仕事、エレベーターで開閉のボタンを押す仕事、レジで金額を計算し代金をもらう仕事、これらの仕事に求められる人間の資質は、故障のない機械に求められているものと同じです。ブルーカラー、ホワイトカラーに限らず、現在のほとんどの人が従事している仕事は、本来人間がやるよりも機械に任せた方がよい仕事です。人間は、機械に代替できる仕事ではなく、人間だけができる創造の仕事をするために生まれてきたのです。

 では、人間が、他の生物やロボットが持たない創造性を持っているのは、なぜなのでしょうか。人間の創造性の土台は、逆説的に聞こえるかもしれませんが、実は人間が本来的に持つ不完全性に根ざしています。創造とは、不完全なものがより完全なものを目指すときに現れる新しい空間のことです。

 機械が不完全であれば、それは単なる故障した機械でしかありません。機械は完全であることによって本来の役割を発揮します。だから、機械の中には創造へと向かう動きはありません。逆に、完全な人間がいたとしたら、その完全な人間の中にも創造へと向かう動きは存在しません。不完全さの中に生きる人間だけが、創造への強い意志を持っているのです。

 未来の創造産業は、この人間が持つ創造への意志によって成立する産業です。



 さて、人間の持つ不完全性は、人間の身体と言語に特徴的に表れています。

 人間の身体が不完全であるために、人間は生まれつきの素質のままでは、どのようなスポーツも上手に行うことはできません。一方、他の動物は、生まれつきの素質のままで、自然の中を自由に生活していくことができます。犬や猫が、持久力や瞬発力をつけるためにトレーニングをするということはありません。しかし、人間は、この人間の身体が不完全であるがゆえに、訓練することによってある運動に熟達し、その分野で新しい技能を作り出すことができます。

 身体の不完全性は、運動だけでなく感覚にも表れます。人間の感覚は、味覚も、触覚も、視覚も、聴覚も、不完全であるがゆえに、訓練によってより高いレベルに到達することができます。この身体の不完全性、したがって向上の可能性の中に、創造産業の芽があります。

 人間のもうひとつの不完全性は、言語の中に表れています。動物は、一方通行のうなり声やさえずりのような言語は持っていますが、コミュニケーションの道具としての言語は持っていません。集団行動をするオオカミなどは、ある種の以心伝心の力を持っているようですが、この場合のテレパシー的な言語は、人間の持つ不完全な言語とは違って完全な言語です。

 機械が持っている言語は、プログラミング言語に見られるようにやはり完璧な言語です。正しいコマンドであれば、だれが命令してもソフトは正確に動きます。しかし、つづりを1文字間違えただけでも、全く動かなくなることがあります。(私も、ただ一ヶ所の半角スペースや改行記号が抜けていたためにプログラムが動かず、原因探しに数時間かけたというようなことが何度かありました。)

 人間の言語は、この動物の言語とも機械の言語とも異なっています。その特徴は、不完全な言語であるということです。しかし、人間の言語のこの不完全性こそが、創造の土台となっています。

 簡単な例を挙げると、人間が、トウモロコシを間違えてトウモコロシと読んだとき、機械はそれをエラーと見なすでしょう。動物は(人間の言うことが通じる犬のような場合)それを正しいトウモロコシに還元して理解するでしょう。しかし、人間だけは、この間違いを笑いとして受け止めることができます。ダジャレの本質は、言語の不完全性が、人間の受け取り方によって笑いに転化することにあります。

 正しいもの、完全なものは原則としてひとつしかありません。しかし、間違ったもの、不完全なものは原則として多数存在します。この不完全性の多様さこそが、創造の多様性の土台となっています。

 言語の持つ不完全性は、ダジャレのような単純なところだけでなく、もっと大きく学問体系の創造のようなところにも表れます。ある学問分野で、これまでA→Bだと考えられていたものが実はA→B→Cであると理解が進んだとき、隣接する学問分野に、類推できる理論A’→B’があると、そこから未知のC’を創造ないし発見しようという動きが出てきます。

 例えば、自然科学におけるダーウィンの進化論は、社会科学におけるダーウィニズムを生み出し、そのダーウィニズムに基づいて優勝劣敗の制度の合理化という政治経済政策を生み出しました。しかし、逆に、その優勝劣敗の制度の矛盾が明らかになってくると、今度は、もとの自然科学の分野にまでさかのぼってダーウィニズムの弱点や限界が明らかになっていくのです。このように考えると、学問の発展は、完全な真理の発見の過程ではなく、無限に続く真理の創造の過程だということができます。この無限の創造性の土台となっているものが、人間の持つ言語の不完全性なのです。(つづく)



※話がだんだん長くなっていきますが、これから次第に具体的な話に進み、やがて作文の話に戻るので、もうしばらくおつきあいください。(^^ゞ

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