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インターネットと教育(その1) as/1243.html
森川林 2011/04/22 18:32 



 インターネットと教育について考える際に大事なことは、今のインターネットと教育を考えることではありません。インターネットと教育が今後どういう方向に進むのかという未来の視点から考える必要があります。そして、ドングリの本質が将来大きく成長するシイやナラの樹木であるように、インターネットと教育の今ある本質の中に、その未来の姿が既に現れています。

■教育の本質

 教育とは、人間的なものです。

 犬や猫などの動物は、教育を必要としません。それは自然に任せているだけで完全な成長を達成します。確かに、親犬は子犬に生きていくのに必要なルールを教えるかもしれません。しかし、その親の持っている知恵自体がもともと自然に成長してきたものです。

 一方、機械は、動物とは別の意味で教育を必要としません。それは、最初から誕生とともに完成されていて、時間の変化とともに減価償却していくだけのものだからです。

 ただ人間だけが教育を必要とするのは、なぜでしょうか。それは、人間がもともと不完全性な存在だからです。自然のままに任せていてはその不完全を克服することができないので、人間は自身の生存のために創造を行います。

 例えば、人間は動物と違い、暖かい毛皮も硬いうろこも持っていないので、寒さや怪我から身を守るために衣服を作り出さなければなりませんでした。しかも、衣服を作るためのノウハウは、学ぶことによってしか獲得できませんでした。この本質的な不完全性こそが、人間の持つ優れた特質だったのです。

 ところが、これまでの社会では、不完全を克服するための完全の理想は、個人の側にではなく社会の側にありました。ちょうどマスゲームの美しい演技が目標となる完全の姿で、個人はその美しい完全な演技を作るための歯車としての完全を目指すことが求められていました。

 優れた歯車になることが個人の目標とすべき完全さだという考えからは、優れていない歯車は社会に不要だという考えが生まれてきます。これが、今日の「地球には人間が多すぎる(優れた人だけが少数いればいい)」という考え方につながっています。

 しかし、真実はそうではありません。優れていない歯車という不完全さもまた、人間にとっては創造の土台となっているのです。

 あるピアニストは事故で片手を失ったあと、その片手でしか弾けないという不完全さを、片手で弾ける曲の創造という方向に向けました。手が1本しかないことがハンディだと思われるのは、ほとんどの人が手を2本持っているからです。もし、手が4本の人が多くいれば、今度は2本しかないことがハンディになります。しかし、だれもがそう思わないのは、手が4本ある人の作曲した曲がないからです。

 片手で弾ける曲は、両手で弾ける曲の2分の1の価値しか持たないのではありません。それは、墨1色の水墨画が多くの色を塗り重ねた油絵の何分の1かの価値しか持たないではないのと同様です。片手で弾ける曲があれば、両手の人は、そこから、一方の手でピアノを弾き、もう一方の手でドラムを叩くというような新しいジャンルの演奏を創造することができるかもしれません。人間においては、不完全はすべて創造のきっかけに転化させることのできるものなのです。

 人間の持つ不完全性をもとにして完全に向かうための創造が教育の本質であるとすれば、未来の教育とは、その完全の理想を、社会の側から個人の側に取り戻すことだと言えるでしょう。社会の側が用意した完全の枠に合わせる教育ではなく、個人個人の不完全を生かす創造の教育が未来の教育の姿です。

 このような創造の教育に必要なものは、画一性や強制性ではなく、多様性や自主性です。その多様性と自主性の教育において欠かすことのできないものが対話です。(つづく)

※次は、「インターネットの本質」です。

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インターネットの未来と言葉の森 as/1242.html
森川林 2011/04/21 18:06 


 インターネットの本質は、コミュニケーションです。その特徴は、手軽で、広範囲で、整理しやすく、リアルタイムなのに、相手の邪魔になりにくい、というところにあります。

 だから、インターネットは、特別なものではなく、電話や葉書やファクスの発達したものとして考えられます。今はまだ古い世代はそのリテラシーがありませんが、やがて全世代が、電話やメールのような日常的なプラットフォームとしてインターネットを利用するようになるでしょう。



 従来の教育は、ひとつの解答に向かって全員が狭い道を競争し、速さと正解数を競う知識の勉強でした。こういう形の知識の勉強は、これからも残りますが、未来の教育の中心になるものは、単なる知識の勉強ではなく、その知識を土台とした創造の勉強になります。



 従来の教育でインセンティブ(意欲刺激)になっていたものは、強制、競争、賞罰でした。今でもほとんどの先生、親、子供が、そういうものが勉強の本質的な要素であるかのように考えています。しかし、それは歴史的なものにすぎません。

 未来の教育でインセンティブになるものは、発表、交流、賞賛です。この賞賛のやりとりのひとつとして、「いいね」ボタンのようなものがあるとも考えられます。インターネットは、オープンソース思想などのように未来の社会の先取りをしている面があります。



 知識の教育は、解答がひとつでしたから、大勢の生徒に対して、教材もひとつで(細分化してはいても)、先生もひとりで(少人数学級であっても)、一斉指導という能率のよい勉強ができました。知識の教育は、マスプロ的なやり方の方がうまくいっていたのです。

 しかし、創造の教育は、創造する内容がひとりひとり違うので、その個人と対話できる特定の先生、特定の親、特定の人間が必要になります。



 知識の教育においては、勉強の予習は試験範囲を覚えることで、復習は答えあわせをすることでしたから、任意の先生による一斉指導が可能でした。

 創造の教育においては、予習は対話で、復習も講評という形の対話ですから、特定の先生と保護者による手作りの教育しか対応できません。



 知識の教育で生徒に点数をつけて成績順に並べるだけならば、どの先生でも多数の生徒を教えられます。今、行われている作文指導のほとんどは、このような知識教育時代の方法に依存しています。その典型的な例が、作文コンクールや感想文コンクールです。

 しかし、コンクールのように上手な作文を表彰して、その作文をひとつの模範解答と見なす指導法によって作文の力がつく子はまずいません。創造の教育では、もっと個別化した対話の指導が必要になるのです。



 創造の教育で子供の作文を読んでコメントを付け加えることができのは、その子供に関心のある親がいちばんで、次が担任の先生で、次がその子供をよく知っている友達です。つまり、創造の教育では、特定の個人との対話が勉強の重要な要素になってきます。



 言葉の森の作文指導でこれから最も力を入れていく分野は、対話の教育です。その対話とは、生徒と先生の対話、生徒と親の対話、生徒どうしの交流の対話です。」

 そこで、今後その対話の教育のために、対話のツールとしてのSNS(mixi、twitter、facebook、ブログ)を本格的に活用していく予定です。



 言葉の森は、ホームページの開設が19966年だったことにも見られるように、もともとインターネットの利用が早く、メーリングリスト、掲示板、チャット、生徒や先生の個人別のページなど、SNSの方向で通信教育の教室作りをしていました。

 今後は、独自のホームページ作りを進めるとともに、既存のSNSをホームページに組み込む形で、生徒や保護者との対話の学習を充実させていきたいと思います。



 しかし、対話の本質はコミュニケーションそのものであり、インターネットはあくまでもそのための手段です。ですから、当面、敷居の低い電話でのコミュニケーションを充実させ、次に携帯メールなどのコミュニケーションを充実させ、その延長でSNSのコミュニケーションに発展させていきたいと考えています。



 リアルとバーチャルという言葉で考えると、これまで、通学の教室はリアルな教室で、通信の教室はバーチャルな教室のように思われてきました。しかし、リアルとは、相手の意思がわかる関わり方であって、場所と身体を通しての関わり方に限るわけではありません。

 その証拠に、通信の教室では、電話によるコミュニケーションだけで、一度も会ったことのない生徒と先生が深いコミュニケーションを築いています。

 今、facebookやtwitterなどの新しいSNSの登場によって、インターネットのリアル性が更に増してきました。近い将来、通信教室と通学教室の区別はあまり意味のないものになり、リアル化されたインターネットによって、より充実した対話の教育が可能になると考えられます。



 言葉の森は、今回facebookで会社のファンページを作りました。今後、twitterとfacebookを言葉の森のホームページに連動する形で対話のある教室を運営していきたいと思っています。



twitter

http://twitter.com/#!/kotomori

(正式アドレスは上記のとおりです。4/27追加情報

http://twitter.com/#!/kotobanomori_j



facebook

http://www.facebook.com/kotobanomori

(正式アドレスは上記のとおりです。4/22追加情報

http://tinyurl.com/3qn6cjh

(facebookの上記のURLは一時的なもので、正式のアドレスは後日お知らせします)

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