ログイン ログアウト 登録
 Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 1268番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/11/22
コンテンツの時代と日本人 as/1268.html
森川林 2011/05/10 21:31 



 インターネットのクラウドは、次のように発展してきました。まず、Yahoo!に代表されるポータルの時代、次に、googleに代表される検索の時代、そして今は、ブログやfacebookに代表される交流の時代と言ってよいでしょう。

 それぞれのクラウドで、前の段階における競争は、後の段階によって意味を消失させられてきました。そして、競争は新しい性格のものとして生まれかわっていきました。



 ショッピングのサイトで、楽天とアマゾンとヤフーがあるとします。最初は、どこのサイトでショッピングをするかという顧客の獲得が競争の焦点になっています。

 しかし、やがて価格.comのようなものが登場すると、消費者は、どこのサイトで買うかということを意識せずに、買いたい商品にだけ関心を持つようになります。

 すると、企業にとって競争は、消費者の獲得から別のものに移っていきます。今後の競争の焦点は、いかに消費者を獲得するかということよりも、いかにいい売り手を獲得するかという方向に変わっていくと思います。

 この傾向は、インターネット企業に限らず、一般の企業でも次第に前面に出てきます。これからの企業は、いかに顧客を獲得するかということよりも、いかにその企業で一緒に仕事をする人が居心地よく仕事ができるかという競争の方に移っていくのです。



 品物の買い手から売り手へ向かう流れは、情報の分野にもあてはまります。

 ブログやfacebookに代表される交流の時代も、最初のうちは交流を消費する側に重点が置かれています。つまり、これまでマスメディアに乗らなかったようなマイナーな情報にも接することができるとか、友達と交流が持てるとかいう価値が前面に出ています。

 しかし、このあとやがて、重点は、情報を消費する側から情報を生産する側に移っていきます。

 最初は、互いの交流自体が楽しいのですが、やがて、単なる交流の楽しさから、そこで何を交流するのかという、「何」のコンテンツが問われるようになってきます。交流の重点が、交流の受け手から、交流の送り手に変化していくのです。



 そのような時期になって初めて生きてくるのが、日本文化におけるコンテンツ性です。

 インターネットのこれまでの発展は、大きなビジョンの枠組みとそれに伴う技術の発展でした。このビジョンの枠組み作りに、日本人はほとんど参加していません。だから、逆に、そういう中で、ブラウザの仕様に縦書きやルビふりの要素を導入した日本人は、孤軍奮闘の中で本当によくがんばったと思います。



 なぜ、日本人がビジョン作りや枠組み作りのような分野になると活躍しないのかいうと、たぶん日本人には、それまでの流れを無視して一から作り直すというようなKY的なことをしたくない心理があるからだろうと思います。

 しかし、そのかわり、日本人が得意なのは、いったん決まった枠組みで、その中身を作る仕事をしていくことです。

 短歌や俳句は、日本独特の短詩形の文学です。これまで数多くの短歌や俳句が作られてきましたが、枠組みを変える試みはほとんどなく(石川啄木が3行で短歌を書いたとか、種田山頭火が定型を崩したとかいう以外に)、だれもが定まった形式を前提に、中身を埋めることにだけ関心を持ってきました。



 ブログという概念は、日本の技術者の多くが考えていたはずですが、それを実際に提案して広めたのはやはりアメリカ人でした。しかし、そのブログが広まったあとに、ブログで情報発信を行う中心になっていったのは日本人でした。



 同様のことが、今はまだ日本人の参加が少ないfacebookでもこれから起こるはずです。それは、facebookが交流という消費のツールから、コンテンツの創造という生産のツールに変化していくことです。それに伴って、facebookで使えるアプリも、これから質的に変化してくると思います。



 インターネットの進化は、もう終点に来ています。このあとに来るのは、システムのこれ以上の進化ではなく、コンテンツの進化です。

 インターネットの速度も容量も、これから更に発展していくでしょう。昔、私がニフティのパソコン通信を始めたころのモデムの通信速度は、1200bpsでした。今10MBで通信ができるとすると、その差は約1万倍です。昔のハードディスクの容量はキロバイトという単位ではなかったかと思います。今はメガバイトを超えてギガバイトになっています。

 しかし、1万倍の差といっても単なる量の差ですから、これから更にインターネットやコンピュータが進化して、量子コンピュータができ、ハードディスクの容量が無限大になっても、そこで現れる世界は今の世界の延長で大体予測できます。



 人間の創造力は、予測のできる未来には魅力を感じません。人間が、本当に生きがいを感じるのは、まだ姿の見えていない未知の分野に関してです。

 枠組み作りの時代が終わり、中身の時代が始まろうとしている今、コンテンツの創造に大衆的に参加する文化を持つ日本の役割は実はかなり大きいのだと思います。

この記事に関するコメント
コメントフォームへ。

同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
科学(5) 

記事 1267番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/11/22
子供との対話で深まる作文の勉強 as/1267.html
森川林 2011/05/09 19:54 



 通学教室で、生徒に、「今日は、どんな課題で、どんなことを書くの」と最初に聞くようにしました。これまでは、既に課題の準備をしていることを前提に、先生がすぐにその日の課題を説明していたので、中には準備をしていない子もいました。

 子供たちに説明をさせると、最初は、みんな、「えー!」と驚いていましたが、すぐに熱心に持ってきた課題フォルダを読み始め、それぞれ自分の理解した範囲で説明を始めました。中には、見当違いの読み方をしている子もいましたが、ほとんどの子は的確に内容を把握して読んでいました。



 その中に1人、中学1年生の生徒で、課題フォルダをあらためて開くこともせずに、すぐに長文の内容を説明してくれる子がいました。その週の課題の長文がすっかり頭の中に入っているようでした。

 試しに、「じゃあ、実例はどんなふうに書くのかなあ」と聞くと、最近の時事的な話を盛り込んで、自分の書こうとする実例を説明してくれました。「よく考えてきたね」と褒めると、その子は、お母さんと長文を読んでいろいろ考えてきたのだと教えてくれました。



 作文の勉強を充実させるいちばんのポイントは、作文に書くことを準備してくることです。つまり、予習です。

 その予習のときに生かせるのが親子の対話です。小学生の課題には、「似た話、聞いた話」という項目があり、自分の体験だけでなく、似たような父母の体験を聞いて話題を広げる練習があります。ときどき、この「似た話、聞いた話」で、とても面白い話を取材してくる子がいます。たまに、両親ではなく、祖父母に取材した話を書いてくる子もいます。

 感想文の課題の場合、この親子の対話は更に重要になります。感想文がうまく書けるかどうかは、似た話がどれだけ思い出せたかにかかっています。しかし、小学生の子供は、読んだ本をすぐに自分の似た体験に結びつけられるほど多くの経験を持っていません。本当は、似ていそうな話はたくさんあるのですが、子供が自分でそれを考えつくことはなかなかできません。

 そういうとき、身近な両親が子供と話しながら似た話を探していくと、子供の理解力はかなり深まるのです。読書を通して読んだ実例よりも、身近な両親の話を聞いて理解した実例の方が、子供の心に深く残ります。それは、本で読んだ実例よりも、父母から聞いた実例の方が生きた実例になるからです。



 予習の大切さは、学年が上がるほど高まってきますが、小学校低学年の作文も、予習の有無で大きく変わってきます。小学校1、2年生のころは、毎日が新鮮は体験の連続なので、書くことに困ることはまずありません。しかし、予習をしてこない子は、毎回同じような放課後の遊びの話や、家に帰ってからのゲームの話を書いてしまうことも多いのです。



 この自習は、子供の勉強にとって大きな力になりますが、それだけではありません。実は、子供と一緒に作文の中身や似た例を考えるというのは、大人にとってもかなり楽しいことなのです。

 現代の社会では、親子の対話の機会が少なくなる一方で、テレビやゲームなど、対話の機会を更に減らす環境に囲まれています。作文の課題をもとにした対話は、自然に知的になるので、テレビを見たり、本を読んだりするよりも、実ははるかに頭を使う時間になることが多いのです。

 言葉の森では、今後、この家庭での対話がそれぞれの家庭で軌道にのるように、いろいろなアドバイスをしていきたいと思っています。

 その手段の一つとして、現在、facebookのページ作りに力を入れています。

 作文の勉強は、他の教科の勉強とは違い、教材だけを与えてもなかなかこなしていくことができません。親と子の対話、先生と親子の対話という形で、勉強の中に対話を取り入れた指導をこれからしていきたいと思っています。



 ここまで読むと、お父さんやお母さんの中に、「わあ、大変だ」と思う方も多いと思います。大体、子供に説明をさせるというのが大変で、果たして素直にそういうことをするのだろうかというのが最初に考えることだと思います。

 しかし、これは、やってみるとわかりますが、子供は結構楽しく素直に説明を始めます。

 子供のころ、学校ごっこをした人がいると思いますが、先生の役というのは、結構人気があります。生徒の役は、ただ聞いていて、たまに手を挙げて答えるぐらいですからあまり面白くありません。しかし、先生は、やさしく説明したり、いばって命令したり、褒めたり、叱ったり、突然チョークを投げつけたりと、いろいろな変化ができるからです。

 同じように、人の説明を聞くのはあまり面白くありませんが、人に説明してあげるというのはなかなか面白いものです。特に、ふだん子供が親に説明するような場面はあまりありませんから、子供が先生役のような立場で親に長文の内容を説明するというのは、子供にとっては新鮮なことなのです。

この記事に関するコメント
コメントフォームへ。

同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
対話(45) 
コメント21~30件
……前のコメント
読書を阻むもの 森川林
暇なときは読書をすればいいのですが、今は、スマホで情報に流さ 6/10
記事 5096番
国語の読解検定 森川林
国語読解の問題は、適当に解いて「当たった」「外れた」と言って 6/9
記事 5095番
デジタル教科書 森川林
デジタル教科書という考えがありますが、教科書とか自分の好きな 6/8
記事 5093番
国語読解クラス 森川林
 国語力は、知識として身につけるのではなく、国語力を育てる生 6/7
記事 5092番
国語力はテクニ 森川林
「国語力をつけるために、特に読書をする必要はない」という耳あ 6/6
記事 5091番
リアルな通学教 森川林
 未来の教育は、対話型の少人数オンラインクラスの教育になりま 6/5
記事 5090番
クリティカル・ 森川林
西洋には、批判を通して新しい考えが生まれるという弁証的な発想 6/4
記事 5089番
優しい母が減っ yori
私の母は、もう中学2年生なのに、スマホをもたせてくれません。 6/3
記事 979番
日本を復活させ 森川林
 日本を復活させる道筋は、創造教育文化国家を目指すこと。 6/1
記事 5081番
4月の森リン大 森川林
 大学生や社会人になった元生徒の子供たちが、自分が中学生だっ 5/31
記事 5085番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
現在森リンベス 森川林
このあとの予定。 ・森リンベストを直す(直した) ・森リ 11/20
森川林日記
Re: 入会手 言葉の森事務局
 お世話になっております。  弟さんのみご入会が1週間 11/15
森の掲示板
入会手続きにつ やすひろ
お世話になっております。 個別掲示板を開けませんので、ここ 11/15
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習