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創造のコンテンツは日本から as/1269.html
森川林 2011/05/12 05:34 



 インターネットのコンテンツは、今後、個々のホームページからソーシャル・ネットワーキング・サービスに移行していくようになると思います。

 なぜかというと、クラウド化の流れの中で、自社サーバーの中にコンテンツもプログラムも全部入れてきっちりと管理運用することは時代後れになりつつあるからです。(容量の限界、プログラム開発の限界、スペックアップの限界、検索しやすさの限界などのため)

 ワールドワイドのインターネットのクラウドの中に、どのコンテンツも全部投げ込んで、それを検索エンジンで探していくか、又はフェイスブックなどのつながりを拠点にして探していくかという形になってくと思います。



 この流れを別の言葉で言うと、Consistency(一貫性)から、Eventually-consitency(結果オーライ)への流れということになります。

 途中の過程で論理的に無矛盾の一貫性を保つ必要はなく、結果的につじつまが合えばいいということです。だから、どこかのページを探す場合も、「AからBに行ってCをクリックすれば確実に行けます」という形ではなく、「あのへんで探すか、このへんの人に聞けばわかるんじゃないかなあ」でいいということです。



 こういうアバウトな発想は、日本人ではまずできなかったと思います。しかし、グーグルの処理が1日2万テラバイトを超え、百万万台のサーバーにデータを分散している状態では、途中経過の一貫性などはもう望めません。そして、こういう規模のスケールは、今後多かれ少なかれどの企業にもやってきます。



 このクラウド化の流れの先にあるものは、コンテンツの創造の世界です。



 インターネット技術では、日本は大きく立ち遅れていました。その最も大きな原因は、日本語処理の難しさから(文字コードが4種類もあり、どれも多少不備がある)、若い人がコンピュータの世界に入る最初の敷居が高すぎるところにあったと思います。

 しかし、インターネットの技術は今後も発展していくでしょうが、もうすでにコンピュータのソフトやハードでできる世界は、量子コンピュータなども含めて見通しを想像できるものになっています。

 人間は、未知のものに最も惹かれますから、たぶん世界の最も優秀な頭脳は、もうだいぶ前からコンピュータやインターネットの世界とは別の科学分野の研究を進めていると思います。



 そういう優秀な頭脳を持たない人にとっても、コンピュータやインターネットのソフトとハードの世界は、もう既に日常生活のインフラになりつつあります。ちょうど、家の前に舗装道路があるとか、家の中で水道や電気が使えるというのと同じ感覚です。大昔は、自分で山の中に人の通る道を作ったり、近くの川に水を汲みに行ったり、まきを拾ったりしたのでしょうが、今はそういうことはすべて基本的なインフラとして提供されています。人間のすることは、そのインフラを前提にして豊かな生活をすることです。

 ところが、その「豊かな生活」というものが、これまでのアメリカ型消費社会の発想では、豊かな消費生活でしかなかったのです。おいしいものを食べて、いい服を着て、広い家に住み、テレビでのんびりスポーツ観戦を楽しむとか、たまに家族で海外旅行に行くとかという消費生活は、確かに魅力あるものです。しかし、そういう生活のもたらす満足感には限界があります。



 消費文化の国々では、内心満たされないものを感じながら、そのような消費生活を更に豊かに続けるという方向にしか進みようがありませんでした。より豊かな食事、よりきれいな服、より長い休日、より豪華な自動車や住居、あるいはより激しい刺激という方向です。

 しかし、日本人は、豊かな生活のよさは認めても、その先に限界があることをすぐに理解できるだけの文化を持っています。それは、縄文時代や江戸時代の長い豊かな生活をすでに何度も経験して、その中で人間が幸福に生きる方法を模索してきた歴史があるからです。

 逆に言うと、日本以外の国々では、豊かさの限界を大衆的なレベルで歴史的に経験したことがないので、いまだに豊かな消費生活の幻想から脱却することができないのです。



 インターネットは、これからコンテンツの時代に入ります。

 しかし、そのコンテンツの内容は、これまでの消費生活の延長にあるコンテンツではありません。言い換えれば、検索エンジンで探して手に入れるという消費のコンテンツではなく、ソーシャルサービスで自ら作り出して友達と共有するという創造のコンテンツと言ってもよいでしょう。

 その創造のコンテンツの文化を世界で最も豊かに持つ国が、この日本なのです。まだ、だれもそのことに気づいていないようですが(笑)。

 しかも、創造のコンテンツは、日本の過去の文化から引っ張り出してくるだけではありません。日本人は創造の文化というものを経験しているので、現代の環境に合わせた創造のコンテンツを新たに作り出していくことができます。

 その創造のコンテンツを作り出すプラットフォームが、今、フェイスブックなどを中心に世界中に広がっているソーシャルサービスなのです。





(注)創造のコンテンツ

 日本における創造のコンテンツとは、例えば、折り紙を折ったり、綾取りをしたり、短歌や俳句を作ったり、百人一首をしたりするような文化に象徴されるコンテンツです。

 これらのコンテンツの特徴は、

(1)習得するために時間がかかるという向上の要素がある(折り紙や綾取りや百人一首には学習が必要)、
(2)決まった枠内で行うというルールのようなものはあるがその中身は自由に工夫できる(例えば、折り紙は1枚の紙で、綾取りは1本のひもで、短歌や俳句は決められた字数で)、
(3)個人が創造したものは個性や交流を楽しむ面が強く、勝敗や優劣に還元されない(百人一首も家庭で行う場合は交流のため)、
(4)一般庶民から支配階級までの格差がなくどの階層でも共通している(費用をかけて行うようなものは少ない)、

などです。

 これに対して、欧米の文化は、一方で、学習や習得をあまり必要としないトランプゲームのような大衆的な娯楽があり、他方で、プロを目指して勝敗や優劣を競う学問や芸術やスポーツやビジネスの分野があるという形で文化が二極化しています。これは、欧米のこれまでの歴史のほとんどが、支配と被支配の格差に基づいたものだったからです。

 このように考えると、世界に創造のコンテンツを広げるのが、これからの日本の役割になると思います。

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コンテンツの時代と日本人 as/1268.html
森川林 2011/05/10 21:31 



 インターネットのクラウドは、次のように発展してきました。まず、Yahoo!に代表されるポータルの時代、次に、googleに代表される検索の時代、そして今は、ブログやfacebookに代表される交流の時代と言ってよいでしょう。

 それぞれのクラウドで、前の段階における競争は、後の段階によって意味を消失させられてきました。そして、競争は新しい性格のものとして生まれかわっていきました。



 ショッピングのサイトで、楽天とアマゾンとヤフーがあるとします。最初は、どこのサイトでショッピングをするかという顧客の獲得が競争の焦点になっています。

 しかし、やがて価格.comのようなものが登場すると、消費者は、どこのサイトで買うかということを意識せずに、買いたい商品にだけ関心を持つようになります。

 すると、企業にとって競争は、消費者の獲得から別のものに移っていきます。今後の競争の焦点は、いかに消費者を獲得するかということよりも、いかにいい売り手を獲得するかという方向に変わっていくと思います。

 この傾向は、インターネット企業に限らず、一般の企業でも次第に前面に出てきます。これからの企業は、いかに顧客を獲得するかということよりも、いかにその企業で一緒に仕事をする人が居心地よく仕事ができるかという競争の方に移っていくのです。



 品物の買い手から売り手へ向かう流れは、情報の分野にもあてはまります。

 ブログやfacebookに代表される交流の時代も、最初のうちは交流を消費する側に重点が置かれています。つまり、これまでマスメディアに乗らなかったようなマイナーな情報にも接することができるとか、友達と交流が持てるとかいう価値が前面に出ています。

 しかし、このあとやがて、重点は、情報を消費する側から情報を生産する側に移っていきます。

 最初は、互いの交流自体が楽しいのですが、やがて、単なる交流の楽しさから、そこで何を交流するのかという、「何」のコンテンツが問われるようになってきます。交流の重点が、交流の受け手から、交流の送り手に変化していくのです。



 そのような時期になって初めて生きてくるのが、日本文化におけるコンテンツ性です。

 インターネットのこれまでの発展は、大きなビジョンの枠組みとそれに伴う技術の発展でした。このビジョンの枠組み作りに、日本人はほとんど参加していません。だから、逆に、そういう中で、ブラウザの仕様に縦書きやルビふりの要素を導入した日本人は、孤軍奮闘の中で本当によくがんばったと思います。



 なぜ、日本人がビジョン作りや枠組み作りのような分野になると活躍しないのかいうと、たぶん日本人には、それまでの流れを無視して一から作り直すというようなKY的なことをしたくない心理があるからだろうと思います。

 しかし、そのかわり、日本人が得意なのは、いったん決まった枠組みで、その中身を作る仕事をしていくことです。

 短歌や俳句は、日本独特の短詩形の文学です。これまで数多くの短歌や俳句が作られてきましたが、枠組みを変える試みはほとんどなく(石川啄木が3行で短歌を書いたとか、種田山頭火が定型を崩したとかいう以外に)、だれもが定まった形式を前提に、中身を埋めることにだけ関心を持ってきました。



 ブログという概念は、日本の技術者の多くが考えていたはずですが、それを実際に提案して広めたのはやはりアメリカ人でした。しかし、そのブログが広まったあとに、ブログで情報発信を行う中心になっていったのは日本人でした。



 同様のことが、今はまだ日本人の参加が少ないfacebookでもこれから起こるはずです。それは、facebookが交流という消費のツールから、コンテンツの創造という生産のツールに変化していくことです。それに伴って、facebookで使えるアプリも、これから質的に変化してくると思います。



 インターネットの進化は、もう終点に来ています。このあとに来るのは、システムのこれ以上の進化ではなく、コンテンツの進化です。

 インターネットの速度も容量も、これから更に発展していくでしょう。昔、私がニフティのパソコン通信を始めたころのモデムの通信速度は、1200bpsでした。今10MBで通信ができるとすると、その差は約1万倍です。昔のハードディスクの容量はキロバイトという単位ではなかったかと思います。今はメガバイトを超えてギガバイトになっています。

 しかし、1万倍の差といっても単なる量の差ですから、これから更にインターネットやコンピュータが進化して、量子コンピュータができ、ハードディスクの容量が無限大になっても、そこで現れる世界は今の世界の延長で大体予測できます。



 人間の創造力は、予測のできる未来には魅力を感じません。人間が、本当に生きがいを感じるのは、まだ姿の見えていない未知の分野に関してです。

 枠組み作りの時代が終わり、中身の時代が始まろうとしている今、コンテンツの創造に大衆的に参加する文化を持つ日本の役割は実はかなり大きいのだと思います。

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