シェアという概念が広がっています。所有から共有へという考えは以前からありました。しかし、それが社会生活のさまざまな分野に広がり、新しい経済活動を生み出すまでになったというのが現代の特徴です。
シェアのひとつの例として挙げられるのが、カー・シェアリングです。カー・シェアリングは、当初の予想に反して、アメリカで急速に広がりました。
ところで、これまでのシェアの概念は、個人の所有に基づいた共有の概念で、一種のギブ・アンド・テイクでした。
これに対して、日本に昔からあったシェアの概念は、お裾分けという言葉で表されるもので、テイクを期待しないギブでした。それは、譲り合い、分かち合い、助け合いという考えに近いもので、英語ではそれに該当する言葉はありませんでした。お裾分けを漢語で言い換えると、譲与になりますが、この譲与も、英語にはぴったり該当する言葉がありませんでした。
では、共有と譲与は、どこが違うのでしょうか。
譲与の前提になっているものは、私的所有ではなく余剰です。(ダジャレのようですが)。つまり、譲与とは、自分のところに、誰かからもらいすぎたか、何かが取れすぎたかしために、ありあまっているものがあるので、それを周囲の人に分け与えるという言葉です。
共有の前提になっているものが私的所有で、譲与の前提になっているものが余剰だとすると、その余剰を生み出しているものは創造です。「畑でトマトがたくさん取れすぎたから、近所の人にお裾分けする」。これが、日本的な感覚のシェアです。
資本主義は、私的所有に基づいて富を奪い合うシステムでした。資本主義の発展期には、この奪い合うことが動機となって、科学技術も経済も発展しました。しかし、今、それが環境の面でも、金融システムの面でも、行き詰まりつつあります。奪い合うことでは、これ以上豊かにならないということがわかってきたのです。
共有というシェアの考え方が、この資本主義の枠内で資本主義に改良を加えていく考えだとすれば、譲与というシェアの考え方は、資本主義の先にある、資本主義を超えた考えだと言っていいでしょう。資本主義の先にある社会は、創造に基づいて富を与え合うシステムです。
創造というものの最もわかりやすい形は、農業生産です。トマトは、太陽と水と空気だけで食べられる赤い実をつけます。農業の本質は、植物の持つ創造性の利用です。
では、工業の本質とは何でしょうか。工業は、例えば、これまで人間が手作業で丸一日かかって織っていた布を、機械の力で数分で織ってしまうということです。それは、科学技術という方法が持つ創造性を利用したものです。
工業と農業に共通するものは、この「方法」です。トマトの創造性とは、トマトが太陽と水と空気で光合成をして実をつけるという方法だからです。
なぜ、人類が過去から未来に向けて、たえず豊かになってきたかというと、方法は、作り上げるまではコストがかかるが、いったんできてしまえば永久に無料で利用できるという性質を持っていたからです。
そして、この方法が、農業、工業から、人間に向けて作られつつあるのが、これからの社会です。人間の持つ創造性を発揮させる方法が教育であり、その新しい教育が、これから日本的なシェア文化の中で作られつつあるのです。
言葉の森では、今、次のような計画を考えています。それは、教材をオープンソースで作ってシェアし、課題や解説や指導法をシェアし、発表や交流をシェアするというシステムです。この場合のシェアは、もちろん所有を共有し合うことでではなく、創造を譲与し合うことです。
言葉の森では、これらの新しいシェアをfacebookの中で作るとともに、それを地域社会の中にリアルに広げる仕組みを作っていきたいと考えています。
言葉の森作文ネットワーク(facebookページ)のグループに、「高校大学入試小論文の岸」があります。
ここは、公開グループなので、どなたでも参加できます。
今回は、そのグループの記事の一部を紹介します。
もう、ここでバンバン、小論文のコツを教えちゃおう。ただで。
しかし、試験をする側の高校の先生も大変だろうから、森リンを使えばいいのになあ(笑)。
とりあえず、よくあるパターンから。
まず、書きようがないテーマ。これが実はいちばん書きやすい。
例えば、「あ」なんてテーマが出たら、君はどうする。これで800字か1200字を書けなんて言われても困る。しかし、こういうテーマが実は簡単。
それは、次回のお楽しみに。ヽ(`◇´)/
「あ」というような書きにくいテーマが出されたときのコツは、「人間の生き方に結びつける」です。
例えば、「私は、『あ』という言葉のように、何でも率先していちばん最初に出てくるような前向きな人生を歩みたい」というような主題です。
そして、その主題に合わせて展開する中断は、もう、。「あ」とは関係なく進めていって、そして、最後の段落で、また。「あ」という言葉に戻ってまとめるという形です。
この書き方は、うまく決まると、自分でも驚くほどいい文章になります。
小論文の採点は、実はかなり大変です。
文章力に一応自信のある生徒がそれぞれ力作を書くのですから、読む方もかなり頭脳を使います。
そのときに、明らかに上手でなさそうな作文を見ると、ほっとするというのが、正直なところだと思います。
その上手でなさそうな作文の条件は、
1、誤字が2か所以上あること
2、字数が短いこと
3、文章が途中で終わっていること
です。
誤字というのが実は、通常の漢字力とはかなり違います。中学校で習う漢字が完璧にできている子でも、小学生のころに習った漢字を勘違いして覚えていることがかなりあります。
作文の誤字は、一般的な漢字の勉強では見つけることができません。実際に作文を書いていみて初めてわかるものです。
ですから、勉強法は、実際に作文を手で書いて、身近な人に見てもらうことです。毎週1回作文を書いて、そのつど誤字を直して、最終的に誤字がすべてなくなるのは、1年ぐらいたってからです。
次回は、逆に、上手な小論文のコツを。
さて、今日は、上手な小論文のコツ。
それは、結びの10行を盛り上げることです。
読む人は、文章の最初の部分で、大体その文章の実力をつかみ、途中はどんどん飛ばし読みをして、結びの部分で全体の印象を決めます。
だから、結びの10行がしっかり書いてあれば、途中多少こけていても、高評価が得られます。
そのコツは、光る表現を入れること。
これは、その場でももちろん思いつきますが、普段の練習でいくつも自分の得意な技(というか表現)を作っておき、それを応用することです。
文章のうまい子は、自然に、この結びに力を入れるというコツがわかっているようです。
※そのほかの記事は、「高校大学入試小論文の岸」で。
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