ロシアから久しぶりに帰国した北野幸伯(きたのよしのり)さんが「PRE(ロシア政治経済ジャーナル)2011/8/8号」で、日本に来て感動した出来事を書いています。
http://archive.mag2.com/0000012950/20110807025305000.html
・レストランへの道を、わざわざ一緒に歩いて教えてくれた若いサラリーマン
・路上の電話ボックスでの電話が終わったあと、近くでの工事の騒音を謝ってくれた女性の労働者
・屋外のレストランで暑そうにしていると、自分の方にある扇風機の風を向けてくれた年配の客
いずれも、ごくあたりまえのことのように見えますが、日本標準ではあっても世界標準ではありません。
日本の新しい産業の芽は、こういうところにありそうです。
しかし、それはもちろん単なる観光業やサービス業ではありません。日本のよさを、より高い次元で昇華した産業を創造することがこれからの課題になると思います。
さて、こういう日本文化を育ててきたものは、何なのでしょうか。それは、学校でも、宗教でもないでしょう。民族のDNAのようなわけのわからないものでもないでしょう。文化を支えるものは言語ですから、日本語が影響力を持つことはあるでしょうが、それもはっきりとはわかりません。
もし日本文化を形成するものが直接形のあるものとして指摘できるのであれば、それは世界中で採用することができるでしょう。そうすれば、イギリスの暴動なども、ソーシャルサービスを制限するというようなやり方ではなく、もっと直接的に対策を立てられるはずです。しかし、そういう形あるものではないようです。
欧米では、治安のよい社会を作るために、テレビの暴力番組を規制するなどいろいろな政策を立てています。一方、日本では、フランスで暴力番組と見なされた「ドラゴンボール」を何年か前の子供たちは嬉々として見ていました。しかし、それで日本の子供たちに暴力性が高まったとは思われていません。
日本文化のよさが何に由来するのかということは、まだよくわかっていないのです。
教育でも政策でも、何かの問題に対しての対策を立てるとき、専門的な知識のある人は、目につく欠点を先に直そうとします。目立つ欠点を直せば、自然にいいものができると誰でも考えがちなのです。
しかし、本当の専門家は、そのようなことはしません。欠点を直し始めると、次々と欠点の原因にさかのぼっていき、最後には欠点を直すことによって、最初にあったもっといい長所をなくしてしまうことを知っているからです。
日本社会の今の閉塞状況を打破するために、多くの人がさまざまな対策を提案していますが、その多くは目についた欠点を直そうとするものです。欠点を直すよりも前に、日本の長所がどこにあるのかを考えなければなりません。
その長所の根は、文化の中にあることは確かです。例えば、2月の節分という行事では、どこの家でも「鬼は外、福は内」と豆を投げると思いますが、この無意識のうちにやっている豆まきの行為の中で、子供たちは日本的な優しさを自然に身につけているように思います。
「福は内」はどこの国でも共通だと思いますが、日本では、「鬼は外」、つまり、鬼を滅ぼすのではなく、鬼は、「ちょっと悪いけど、外の方に行ってて」という程度なのです。こういう身近なところに流れている文化の総体が、日本というものを形成しています。
世界の人々のニーズは、今、物から心へと大きく変化しようとしています。確かに、世界にはまだ飢えに苦しむ人が10億人もいますが、飢えからも争いからも解放されたとき、多くの人が望むのは、豊かな消費生活で、その豊かな消費生活の次に来るのが穏やかな生活なのです。
アメリカは、衰退した製造業のあと、IT産業と金融業で新しい経済を作りました。日本は、中国などの新興国に追い上げられて空洞化しつつある製造業のあとに、どのような産業を作っていくべきなのでしょうか。
このときに、日本の長所を生かすという発想を持つことです。世界の先進国の人々のこれからのニーズは、日本人のような生活をしたいということです。高級乗用車に乗り、高級住宅に住んで、暴動におびえて暮らすよりも、普通に動く自動車と、普通の住宅でいいから、穏やかな生活をしたいというのが、これからの世界の先進国の人々のニーズです。そのためには、いくらお金を出してもいいと多くの人が考えつつあるのです。
この経済の流れを素直に見れば、世界のこれからの成長産業は文化で、その中でいちばん売れそうな商品が日本文化なのだということがわかってきます。
しかし、これは、何度も言うように、観光業やサービス業のような産業ではありません。そういうものに接するというのも確かにニーズのひとつですが、世界の人々のもっと根本的なニーズは、自分たちも日本のような生活をしたいということです。
しかし、それは日本に来て暮らすということではありません。自分の住んでいる国で、日本のような文化と暮らしを実現したいということです。
それが日本のこれからの輸出産業です。ところが、ここで何を輸出したらいいのかが、肝心の日本人にもわかっていません。それは大きく言えば教育のようなものでしょう。しかし、その教育の中身は、今の教科書でも学校でも教育制度でもありません。もっと、日本人の家庭と地域の生活の中で自然に行われているものです。
その日本文化を抽象化して、世界に通用するものにしていくことがこれからの課題なのです。
言葉の森では、この8月からfacebookで森林プロジェクトという教育運動を立ち上げます。
これは、これまでの一連の記事で書いてきたように、日本に新しい教育を作り出す試みです。
関心のある方は、どなたも自由にご参加ください。
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森林プロジェクト
1、目的
(1)日本に、地域の自治と家庭の文化を生かした新しい教育を作ります。
2、方法
(1)小1から中3の子供に、作文と読解の勉強を教えます。(言葉の森の教材を利用)
(2)幼児教育にも広げます。
(3)数学、英語、躾にも広げます。
(4)家庭と地域につながるようにします。(家庭での自習と予習を重視)
(5)ソーシャルサービスを活用します。(facebook、google+など)
(6)限りなく低コストを目指します。
(7)学年別に言葉の森の講師が質問などに対応します。。
3、参加資格
(1)モニターとして小1から中3の子供1人以上に作文を教えていただきます。(自分の子供でも、近所の子供でも結構です。会場は自宅又は地域の集会所などを利用)
(2)教材と指導法は、言葉の森から提供します。
(3)指導と評価のフィードバックをfacebookなどで行います。
(4)当面20名まで指導者を無料で募集します。(学年のバランスなどを勘案して選抜させていただく場合があります)
(5)期間は3か月ごとに更新します。(正式スタートは9月からを予定)
4、参加方法
(1)下記のグループにご参加ください。グループ名「森林プロジェクト」
http://www.facebook.com/groups/199885366737376/
(2)自宅のパソコンから1日1回以上facebookにアクセスできるようにしてください。
(3)指導はできないが企画や運営に加わりたいという人も参加できます。
(4)作文読解以外の、幼児教育、数学教育、英語教育、躾教育に関心のある方も歓迎します。
(5)言葉の森の生徒の保護者も参加できます。
(6)学校や塾などで生徒を指導している方も参加できます。
(7)グループの入退はいつでも自由にできます。
5、指導する人に必要な準備
(1)指導のための資格や経験は必要ありません。ただし、人数や学年や対象を制限させていただく場合もあります。
(2)指導する人は、教材をウェブでダウンロードして使う形になるので、
プリンタをご用意ください。
(3)印刷画面は、ウィンドウズのインターネットエクスプローラ8に合わせています。(
マックは縦書き印刷ができないので使えません)
(4)子供の作文画像をアップロードすることもあるので、
できるだけスキャナをご用意ください。
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言葉の森作文ネットワーク(言葉の森のfacebookページ)
http://www.facebook.com/kotobanomori