文章の構成の仕方を大きく分けると、頭括型と尾括型に分類できます。
頭括型というのは、最初に意見を書き、次に実例を書くような書き方です。
尾括型というのは、その反対で、最初に具体的な実例を書き、最後に意見を書くというような書き方です。
作文を書く側からすれば、尾括型の方が書きやすく思えます。それは、人間は、最初に具体的な物事を考え、そこから次第に抽象的な意見に移る形で考えるからです。尾括型の作文は、考える順序と書く順序が一致しているので書きやすいのです。
また、文章の出来栄えという点から見ると、尾括型の方が、途中で文章の盛り上がり、飛躍、落ちなどの工夫ができるので、文学的な文章を書きやすいという面があります。
しかし、入試の小論文は、わかりやすく理路整然と書くことが大事なので、尾括型よりも頭括型で書いた方がいいのです。特に、テーマが難しくなればそれだけ、頭括型で書く必要が出てきます。
頭括型の書き方には、大きく三つのパターンがあります。
第一は、文章全体を、意見→実例という形で書いていくことです。
高校生の書く小論文では、課題が難しくなるので、第一段落の結びのところではっきりとした意見を書いておかないと、そのあとの展開がスムーズにできなくなります。それは、最初に意見をはっきりさせておかないと、書いている本人が、自分が何を書いているかわからなくなることが多いからです。このケースは、実はかなりよくあります。
第二は、展開部分を、抽象→具体という形で書いていくことです。
例えば、意見のあと、理由と実例を書く場合、理由→実例という流れで書いていくことです。同じように、方法→実例、原因→実例、対策→実例の場合も、最初に抽象的な説明を書き、そのあと裏付けとなる具体例を書くようにします。
例を挙げると、こういう形です。
▲私はこう思う。→この間、こんなことがあった。→だから、こういう理由なのである。
◎私はこう思う。→その理由はこうである。→例えばこの間、こんなことがあった。
実は、中学生のころは、この書き方がなかなかできません。それは、具体的な実例を書く語彙力はあるのですが、抽象的な理由や方法を簡潔に書く語彙力がまだ不十分であることが多いからです。
第三は、構成の仕方自体を頭括型で書いていくことです。
例えば、最初に、「○○は三つある」などと、文章全体の構成を提示し、そのあと、「第一に……」とひとまとまりの内容を書き、「第二に……」で次のひとまとまり、「第三に……」で最後のひとまとまり、と書くような書き方です。
入試の小論文では、普通、こういう形で書くほど余裕のある人はいません。ほとんどの人は、大まかに全体の見通しを考え、書きながら少しずつ見通しを修正して書いていきます。
「○○は三つある」という形で先に全体の構成を提示して書けるのは、構成力に自信のある人に限られると思います。
今回は、作文力のつけ方についてです。
先日、(言葉の森の生徒でない)保護者の方から、次のような相談を受けました。
「中高一貫校向けの塾に行っているが、作文がなかなか書けない。しかし、どう書いていいかわからない」
子供が作文を書いたあとに添削することは、大人なら誰でもある程度できます。
しかし、子供がどう書いたらいいかわからないで困っているときに、事前にアドバイスできる先生はあまりいません。
また、子供が作文を書いた場合、先生の添削を受けますが、その添削は実はあまり効果がありません。一般に、作文は添削によって上達すると思われがちですが、添削は、下手なところを直す効果があるだけで、上手に書かせる効果はありません。
作文指導というものは、書かせて添削するという形だけならば、誰でもできますが、上手に書かせる指導まではなかなかできないのです。
では、作文力はどのようにつけたらよいのでしょうか。
まず前提になるのは、作文力の土台となる国語力、読解力がついていることです。例えば、本をよく読んでいる子は、わずかの指導でも急速に上達します。
だから、試験までもう時間がないという場合は、とりあえず今の読む力の範囲でいちばん上手に書けるように勉強していくということになります。
作文の勉強の基本は、構成を意識して書くことです。テーマを出されたら、どういう方向で書いていくか大体の見当をつけ、それから書き出します。
言葉の森のfacebookページに、いくつかの書き方のパターンが載せてあります。
http://www.facebook.com/kotobanomori?sk=app_149005838493066
例えば、最初に意見を書き、次に理由を書き、その実例を書き、次に方法を書き、その実例を書き、最後に、反対意見にも言及し、意見をまとめる、というような書き方です。
構成の仕方は、どのようなものでもいいのですが、作文を書きだす前に、大まかな方向を決めておくという姿勢が大事です。
構成を考えて書くことができるようになったら、次は書きなれることです。今の作文入試は、点数の差をつけるためだと思いますが、短時間で、長い文章を読ませ、速く書かせるような仕組みになっています。時間内にある程度の字数まで書けなければ、内容がいくらよくても合格作文は書けません。
本当は、こういう試験の仕方は邪道で、長い時間をかけて長い文章を書かせた方が実力がわかるのですが、早く採点しなければならないという試験の性格上、時間制限があるのはやむをえないことなのだと思います。
しかし、速く長く書く力をつけるまでの余裕がない場合もあります。
その場合は、次のような勉強します。
まず、親子で相談して、出題されそうな課題を10本作ります。これは、題名課題で構いません。「志望理由」「私の家族」「私の夢」「○○学校時代の思い出」「がんばったこと」「思いやり」「協力の大切さ」などというテーマです。
そして、それぞれのテーマについて、構成を考え、実例を工夫し、表現も工夫し、漢字もしっかり書けるようにして、最高傑作を書いておくのです。その最高傑作を何度も読んでいるうちに、似たテーマであれば、同じような内容の作文がすばやく書けるようになります。
学校によってはこういう形の勉強では対応できないように、ひとまとまりの作文ではなく、設問を何問かに区切って作文課題を出すところもあります。
しかし、その場合でも、ひとまとまりの作文を10本書く力があれば、設問に合わせて中身を埋めていくことはずっと簡単にできるようになります。
最高傑作を書く上で、大事なポイントになるのは、その子自身の体験実例を書くということです。また、その実例の中身も、個性、挑戦、感動、共感があるようなものを中心に書くようにします。
子供は、どういうものが個性、挑戦、感動、共感のある実例か自分ではわかりません。親や先生が、第三者の立場でアドバイスしてあげるといいと思います。