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豊かな日本を作るためにーー日本を再び教育立国に as/1373.html
森川林 2011/10/31 18:16 


 戦後の経済成長期は、世界中が物不足から脱出しようとしていた時期であったために、常に需要が供給を上回る傾向にありました。

 それは、なぜかというと、工業生産物そのものが発展途上にあったからです。例えば、最初はラジオであったものが、小さな白黒テレビになり、だんだん画面が大きくなり、やがてカラーテレビになるという製品自体の成長があったために、たえず新しい需要が作り出されていたのです。

 しかし、現代は、もうそうではありません。

 中国の13億の人口が、今、テレビの需要の巨大な吸引力となっていたとしても、それは1回限りの需要です。かつての日本が、ラジオ、白黒テレビ、カラーテレビと成長していったような需要ではなく、最初からカラーテレビを手に入れ、あとは買い替え需要しかないという完成した需要なのです。

 そして、今日の工業国は、供給の側もまた完成しています。

 戦後の経済成長の時代には、供給の側もたえず設備を更新し、新しい製品を開発していかなければ、消費者のニーズの変化に対応することができませんでした。

 しかし、今新しく登場した工業国の供給の場合は違います。最初から完成度の高い製品を作るために、やはり最初から完成度の高い新鋭工場を新鋭設備で作ってしまうのです。だから、供給も1回限りという面を持っています。

 これからの時代を、アメリカから日本に工業生産力が移動していった歴史になぞらえて、日本から中国に工業生産力が移っていくと考える人がいます。それは、事実の本質を正しく見ていません。

 確かに、中国の13億という人口は巨大ですが、その人口が生み出す需要の大きさは、13億人の1回限りの需要であり、それに対応する供給は、最新設備の1回限りの供給なのです。

 1回目の花火のような需要が一巡すれば、次の買い替え需要まで消費も生産も一段落します。

 しかも、最新設備による最新工場は、資本さえ投入すれば、世界のどこでも人件費負担の少ないところを選んで設置することができます。ということは、需要がどれだけ巨大であっても、多数の供給者の競争によって、利益率は限りなく低くなります。

 インドでは既に、20万円の自動車、3000円のパソコンが作られています。大量の消費者に対して最新の設備を使って効率よく製造された工業製品の価格は、このようになるのです。

 だから、中国やインドでこれから始まる工業化は、日本がかつて経過してきた工業化と同じではありません。工業は、もはや利益を生み出さない産業になりつつあるのです。

 では、農業、工業の次に、日本が目指す産業は何なのでしょうか。それは、架空の金融産業ではありません。また、本質は工業である情報産業でもありません。そこで、価値とは何かという問題が出てきます。

 これからの日本は、真に価値あるものを作り出さなければなりません。その一つは植物の持つ自然の力を生かす農業です。もう一つは、人間の持つ創造的な力を生かす教育です。

 この、真に価値あるものを産業の中心に据えていくことが、これからの日本の政治経済の基本方針になるのです。



 では、人間が生み出す価値とは何でしょうか。例えば、子供たちをいいい子に育てることによって、その子たちが成人して穏やかな大人になり、犯罪など犯すようなことがなければ治安がよくなり、防犯のための無駄な支出が不要になります。

 警察も、裁判所も、法律も要らないとなれば、これまでそういうところで仕事をしていた人は、治安を守るという後ろ向きの仕事ではなく、もっと前向きの新しい仕事にとりかかれます。

 これが新しい価値の創造です。

 これは、架空の話ではなく、江戸時代がまさにそうでした。

 松尾芭蕉は、追はぎや強盗の心配をすることなく、日本中を旅することができました。

 江戸は当時世界で最も巨大な都市でありながら、警察は驚くほど少なく、ほとんどすべて住民の自治的なつながりの中で平和な生活が支えられていました。

 真の豊かさとは、こういうことなのです。

 また、子供たちが、能率のよい勉強の仕方によって短時間で早く学力をつけることができれば、知識を身につける勉強以外の、考える勉強、作り出す勉強に時間を割くことができます。

 そういう子供たちが成長すれば、どういう仕事をしても、その仕事の改善点を自分で発見して提案していけるようになるでしょう。

 更に、新しい科学時技術を開発するような人も出てくるでしょう。

 これが価値の創造です。

 農業が、植物の生命力を生かした創造なら、教育は人間の向上心を生かした創造なのです。



 世界の不況の根本原因は、工業に代わる新しい産業が、先進国で見つけられていないことにあります。多くの人は、過去の延長で考えているために、金融業、情報産業、医療、介護、観光、又は、海外への工業の移転、又は、国内での人件費削減のようなところに、日本の経済の打開策があるかのように論じています。

 しかし、そうではありません。時代は、もっと根本的なことを要求しているのです。それは、真の価値を生み出す分野を産業の中核に据えるということです。

 教育は、これまで、個人の受験競争のようなところで行われてきました。しかし、受験に勝つというようなことは、教育の枝葉の部分です。教育の本質は、人間の持つ創造性を開発することにあります。

 日本がこの教育分野で新しい教育を作り、それを創造的な新しい産業に育てていくことが、世界の経済の行き詰まりを打開する道でもあるのです。

 そして、日本が切り開いた経済の新しい分野に、工業化を完成させた途上国が続いて参入してきたときにも、工業のときに起きたような競争による利益率の低下は起きません。

 なぜなら、第一に、そこで生産しているものは、需給の関係によって相対的に生まれた価値ではなく、農業が生み出すものと同じような真の価値だからです。

 また第二に、人間の創造性が生み出すものは、工業製品に劣らない価格を持つことができるからです。例えば、パソコンが20万円で、自動車が200万円で、ピカソの絵が1億円、というような価格が可能です。

 人間の創造性が生み出すものは、今の資本主義的な価格の世界でも十分に工業製品の富に匹敵する力を持っているのです。

 農業は、いくらがんばっても、ダイコン1本が1万円というわけにはいきません(笑)。しかし、それは農業の生み出す価値が低いということではなく、農業が人間の生存という根本の価値に結びついているからです。

 そして、第三に、これが最も重要なことですが、教育によって人間の持つ創造性を開発するという産業は、需要者が同時に供給者になるということです。

 高いお金を払ってあるノウハウを身につけた人が、今度はそこに自分のノウハウを創造的に組み合わせて、より高く売る側に立つことができます。

 そのサイクルを社会全体で実現しているのが創造社会の姿です。

 需要と供給が分離されていずに、役割としていつでも交代できるから、工業時代にあったような過剰生産恐慌は、もう起こりません。また、過剰生産を緩和するために恒常的に行われていた有効需要政策ももはや不要になります。

 無理な生産も無理な販売もなくなり、穏やかにしかし永続的に進歩する社会が未来の産業によって作られるのです。

 今、全国各地で、農業を中心にした地域自給経済圏を作る動きが広がっています。これを農業という価値創造だけでなく、人間の教育という新しい価値創造に結びつけて取り組んでいくことが、日本の未来の社会を作る雛型になっていくと思います。

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森林プロジェクトの漫画 as/1372.html
森川林 2011/10/27 19:06 


 森林プロジェクトの勉強の様子をわかりやすく漫画でかいてみました。



 従来の勉強は、先生が一方的に教える側で、生徒が受け身で授業を受ける側で、保護者は先生に任せる側でした。

 新しい勉強は、先生が全体の方向をアドバイスしながら、生徒が家庭での対話をもとに自主的に勉強の内容を深めていきます。

 そして、先生と親、親どうしのコミュニケーションを通して、子供はバランスよく成長していきます。



 最も大事な勉強の中身は、暗唱、読書、作文で、小学校1年生から日本語の力をしっかり育てていきます。

 日本語の学力さえついていれば、学年が上がってほかの勉強に取り組むときも、何でもすぐに身につきます。


先生「みんな書くこと決めてきた」

生徒「はあい」

先生「じゃあ、あっこちゃんから暗唱ね」

生徒「はい。すらすらすらすら……」

先生「ほかの人は、作文書いててね」

生徒「先生、作文書けました」

先生「いっき君、早いね。じゃあ、時間が来るまで本を読んでいてね。それが終わったら、作文を持って帰って、また来週の話決めてきてね」

子「お母さん、ただいま」

母「お帰りなさい。あとで作文見せてね」

夜帰ってきた父「お、面白いこと書いてるな。ひとことコメントを書いとこう」

子「グーグー」

朝ご飯の父「おはよう。今日の暗唱聞かせて」

子「じゃあ、言うよ。すらすらすらすら」

母「その話、おもしろいね」

日曜日の夕飯の父「じゃあ、次の週は何を書くの」

子「えーと、読んだ長文はこんなので……」

母「田舎のおじいちゃんたちにも聞けるね」

次の授業の日の生徒「先生、こんにちは」

先生「こんにちは。書くこと決めてきたかな。じゃあ、暗唱の練習して待っててね」

ときどき展示会。

先生「さあ、みんなの作文もかざったし。お菓子も用意したし」

展示会のあと、お父さんお母さんと。

親「みんな、どんな本を読んでる」

親「うちはねえ……。わいわいがやがや」


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