(これは、森林プロジェクトの「学習の手引」のために書いた文章ですが、手引の方には載せないので、内容を追加して、ホームページの記事としました。)
●受験の目的は志望校に合格すること、勉強の目的は社会に貢献すること
受験の目的は志望校に合格することというのはあたりまえのことですが、長期間の勉強をしていると、その目的を忘れてしまうことがあります。
例えば、塾や予備校で勉強していると、その塾や予備校でいい成績を取ることが目的のようになってしまいます。また、模擬試験は自分の実力を見るためのテストですから、点数が悪くても問題ないのですが、模擬試験のために詰め込みで勉強してしまうような子もいます。
これまでいろいろな生徒を教えてきて、いつも驚くのは受験の直前になるまで志望校の過去問を解いたことのない子がかなりいることです。
過去問は、受験間際の力試しにためにやるものではなく、受験の1年前から勉強の方向を決めるためにやるものです。まだ解けない問題は、答えを書き込みながら解いていき、問題の傾向と自分の弱点を分析しておきます。
過去問は、勉強の軌道修正のためにときどき取り組むことが大切です。そのためには、古い年の過去問もできるだけ用意しておきます。
受験勉強は、自分のペースで取り組むことが大事です。高校入試、大学入試では、塾の勉強で他人任せに進めるのではなく、できるだけ自分で課題と予定を決めてやっていくことが大事です。中高生で、夏休みに塾や予備校の夏期講習に参加せず、自分で勉強する場合は1日7時間ぐらいの勉強が目安になると思います。
受験勉強の目的は志望校に合格することですが、勉強そのものの目的は、自分自身を向上させ、将来社会に役立つ人間になることです。志望校の合格はそのためのひとつの手段です。合格したから偉いのでも、合格しなかったから駄目なのでもないということを折に触れて親子で確認しておくと、受験後もしっかりと勉強を続けることができます。
●これからの仕事に必要とされる、得意分野と幅広い教養
これから世の中は大きく変わっていきます。一つは、新しい発明や発見によって今よりももっと便利で豊かで自然と共存できる生活になることです。もう一つは、多くの人の人間性が向上し、利己心や策略などが通用しなくなることです。
このような社会では、いい仕事の基準も変わってきます。これからの社会では、自分の個性を生かし社会から喜ばれる仕事ほど、高収入で安定していて自由度の高い仕事になります。
そのような社会に対応する勉強は、自分の興味や関心や得意技を生かすと同時に、幅広い教科を身につける勉強です。
いい学校に入るとか、いい会社に入るとか、いい仕事に就くとかいう目的のために、そこに絞った勉強をするという考えだと、目的を達成した時点で勉強も終わってしまいます。
これからは、自分の個性を生かすために、できるだけ幅広い勉強をし、また勉強に対する向上心も一生持ち続けていくことが必要になります。
●社会に出て必要になるのは、成績のよさよりも人間性
勉強を受験競争における勝ち負けのようなものだと考えると、知的な能力だけを大事なものだと考えてしまいがちです。しかし、現実の社会の中で仕事に活躍できるのは、みんなから信頼される豊かな人間性を持った人たちです。
つまり、人間性という大きな枠の中に、勇気、知性、愛、創造性などという分野があり、知性という分野の中に、国語、数学、英語などという教科があるのです。
だから、家庭での教育では、知性の教育に多くの時間を割くとしても、重要度としては、勇気も、知性も、愛も、創造性もバランスよく育てていく必要があります。
一生懸命に勉強をしていると、つい点数のところにだけ目が向いてしまいます。子供は特にそうです。小学生の子によくあるのは、自分よりもできない子を馬鹿にするような態度をとってしまうことです。
子供の言動の中にそういうものが見えたら、それは人間性の教育を行ういいチャンスです。世の中には、いろいろな人がいて、みんなが自分の力の範囲で努力して助け合っているから社会が成り立っているのだということをじっくり話すと、子供はすぐに理解します。
作文の通信講座で、よく広告を出しているところがあります。朝日小学生新聞などに、月に何度も広告を載せています。顔写真に有名な評論家を使っているので、いかにもいい指導内容のように見えますが、それならなぜそのように頻繁に広告を出しているのかと思うでしょう。
結局、宣伝でたくさんの生徒を集めても、それらの生徒がすぐやめていくので何度も広告を出しているということです。
広告をたくさん出しているところは、一見活気があるように見えますが、実は、生徒の定着率がよくないということなのです。
現に、言葉の森の通学教室は、この何年か宣伝らしい宣伝をしていませんが、生徒はずっと増え続けています。
通学の教室の場合は、宣伝がなくても地元で実際に通っている人の評判を聞けますが、通信講座の場合は、評判がわからないからつい広告に頼るということがまだ多いのです。
また、ネットの評判というのも、匿名の場合は宣伝の一環であることが多いのであまりあてになりません。
このように宣伝に乗せられて勉強を始めてしまう子供たちはかわいそうです。
一見カラフルで楽しそうな教材で勉強を始めてみても、低学年のうちは遊びのようなことばかりで実力はつきません。言葉の穴埋め問題のようなことをいくらやっても、それはクイズのようなもので、何の実力にもならないのです。
そして、中高学年になって、実力をつける必要が出てきたときに、それまでが遊びのような教材だったので実力がついていず、続けられなくなってやめるというパターンが多いのだと思います。
そういう子供たちは、実力がつかなかったばかりか、自分は作文が苦手だという意識を持ってしまいます。
だから、作文の通信講座は、評論家の顔などにまどわされず、体験学習を実際に受けて内容をよく見きわめる必要があると思います。
なぜ、こんなことをわざわざ書いたかというと、ここのところ続けてそういう相談があったからです。
「ほかの作文通信講座でやっていたが、結局全然できなくて」
という相談です。
勉強は、低学年のときほど、最初の始め方が重要なのです。
ということで、小中学生で作文の通信講座を受ける場合の比較の基準です。
1、体験学習ができるかどうか。
(何でも、実際にやってみなければわかりません)
2、先生からの電話指導など、確実に教えられる手段があるか。
(教材だけで勉強する形だと、穴埋め問題のような単純なことしかできません)
3、書いている途中書けなくなったときに、相談の電話などがすぐにできるか。
(作文は、特に途中で書けなくなるということが多いのです)
4、家庭で毎日取り組む自習のようなものがあるか。
(国語の実力をつけるには毎日の勉強が必要です)
5、中学入試、高校入試、できれば大学入試まで同じ先生で対応できるか。
(低学年の指導であっても、将来の指導に結びついている必要があります)
教科の勉強は、教え方によってすぐに成績を上げることもできます。しかし、作文は、書き方を直すだけならだれでもできますが、実力をつけるように教えるということはなかなかできません。また、実際に作文力を上達させるには、かなり長い時間がかかります。
ところが、世間の作文通信講座や、作文教室はそのあたりをあまり深く考えていないと思います。
言葉の森が、小学校1年生から高校3年生まで作文指導をしていて、中にはずっと続けている子もいるというと、多くの人は驚きます。そして、高校3年生の子供たちは、東大、一橋大、早稲田大、慶応大などに合格しているのです。
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