ログイン ログアウト 登録
 Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 1384番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/12/2
現在の経済情勢と子供の教育3 as/1384.html
森川林 2011/12/27 15:16 



 昨日、山一證券のことを書きましたが、もし、今の会社で突然リストラに遭ったら、みなさんはどうするでしょうか。

 当面、食べていくことは何らかの形でできるでしょう。

 これまでのように、個別企業の破綻でしたら、新しい就職口を探すということで対応できます。しかし、今回の経済破綻は、再就職の可能性がないほど、経済全体が破綻することになるかもしれません。

 そのときに、焼け跡の荒れ地から最初に芽を出して立ち上がるのは、徒手空拳でも、つまり肩書や資格や組織や資金がなくても、自分の力で周囲に喜びを提供できる人です。

 そのときの喜びの提供の仕方は、戦後の焼け跡で闇市が立ったときのような形のものではありません。戦後の焼け跡時代に、不足していたものは物でした。食べ物も衣服も住居もなくなったところから戦後がスタートしました。だから、そのあとに訪れた高度経済成長時代は、物の経済の時代でした。

 しかし、今回は、そうではありません。世界経済のバブルのお金が吹き飛んだために、資産がなくなり、その影響で仕事もなくなるかもしれません。しかし、物は豊富にあるのです。ないのは、物を回すために使っていたこれまでのお金です。

 終戦直後の社会では、生産力が破壊されていました。だから、物作りからスタートしました。しかし、今度の経済破綻は、生産力の破壊ではありません。生産力は、十分にあったのです。そして、経済破局の中でもそのままあり続けるのです。それが売れないというだけです。

 なぜ売れないかというと、皆が欲しがるような普通の生産物、例えば、食料品、衣料品、家電製品などは、中国をはじめとする新興国で、もっと安く大量に作られ売られるようになったからです。

 かつて時代の先端を行っているように見えたパソコン生産も、電子化によってただ部品を組み合わせて箱に詰め込むような簡単な生産になりました。自動車生産も、電気自動車化によってやがてどこの国でも組み立てられるようなものになるでしょう。農業生産も、工業生産も、買いたい人よりも、作りたい人の方が多い時代になったので、物が売れなくなったのです。だから、リストラが始まったのです。

 企業は、従業員の数を減らし、機械化を進め、低賃金の労働者を移民の受け入れや派遣の採用の形で雇うことによって、売れない競争に勝とうとします。そのことによって、社会全体の物がますます売れなくなっていきます。

 使い道のなくなったお金だけが余り、欲しいものがないので、当面必要な安い物だけを買い合う結果、ますます物が売れなくなりお金だけが余るという状態になっているのが現代の経済です。

 だから、突破口は、個々の人の再就職ではなく、みんなの欲しがるものを提供できる人が登場することにあります。今度の経済破局の焼け跡から立ち上がる最初の芽は、物資の横流しで利益を上げる闇市ではなく、文化の創造で喜びを与える光の市です。(対比の言葉が格好よすぎますが(笑))




 世界の未来は、中国やブラジルやインドなどの巨大な新興国が担うわけではありません。新興国の経済は、これからも発展しますが、新興国のあとに続く国も、続々と同じ道を進んできます。その道の先端にいる日本が、不況からいちばん最初に立ち上がり、新しい経済のモデルを作っていくことが求められています。

 今の世界経済の行き詰まりは、日本が工業時代のあとに続く新しい産業のビジョンを提案できなかったために起こったものです。日本が工業時代の成功で使い道のなくなったお金をためる一方、アメリカがそのお金を借りるという名目で横取りして(笑)、博打を始め最初は大儲けしたもののやがて賭けた大金を返せなくなったというのが、今の日米関係です。

 アメリカに貸したと思うのではなく、もうそれは恵んであげたことにして、日本は今まだある手持ちの資金で新しい創造産業を始めればいいのです。そのために、創造とは無縁のところにとどまっている淀んだお金を一掃しなければなりません。それが、これから起こる混乱の本質です。だから、これは、混乱というよりも、新しい時代を迎えるための大掃除という意識で前向きに取り組んでいくことなのです。

 新しい産業は、価値を生み出すものでなければなりません。今、多くの人が思いつく新産業の多くは、単に消費する産業です。おいしいものを食べて、いい服を着て、景色のいいところを見に行くという程度の消費では、世界経済の立て直しにはなりません。それは、今、新興国の人たちが既に始めていることです。日本は、そういう消費の喜びを超えた喜びを創造しなければなりません。それが、同義反復のような表現になりますが、創造の喜びです。

 周囲の人に新しい喜びを創造することを、自分の喜びとするような仕事が、これからの時代に必要とされる仕事です。

 もちろん、世の中は、それほど単純に進むものではありません。現実に起こってくる諸問題には、バランスよく対応していくことが必要があります。

 世の中には、おいしいものを食べるどころではない人も大勢います。また、工業生産の多くは新興国に取って代わられずに日本国内で競争力のある生産を続けています。また、経済の混乱から弱者を守るには、今よりも強力な政治の力が必要です。

 しかし、大きな目でみると、今は、新しい社会が登場する前の入口にみんなが集まっている時期なのです。入口の方向さえわかれば、やがて行列は静かに動き出し、新しい時代が日本から始まっていくでしょう。

この記事に関するコメント
コメントフォームへ。

森川林 20111228  
 facebookの方のコメントで、「入口は一つではない」という話があったので、その補足説明です。

 行列というのは、経済の方向です。
 世界の経済のお金の使い道がわからないために、今の行き詰まりが起きています。
 大きく見ると、これからの経済は工業の時代から文化の時代に移っていくと思います。
 しかし、その移行の仕方は、これまでのように他人を押しのけて我勝ちに進むものでなく、周囲の人との共感の中で静かに進んでいくものです。
 だから、行列は静かに動き出すのです。列を崩して殺到したり塀を乗り越えて入ったりしないということです(笑)。


同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
政治経済社会(63) 教育論文化論(255) 

記事 1383番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/12/2
現在の経済情勢と子供の教育2 as/1383.html
森川林 2011/12/26 11:00 


 これまでの経済は、マネーを持っている人の意向が反映した経済でした。それは、政治の面では金権政治という形で現れていました。

 しかし、経済危機が深化する中で出てくるのは、マネーの意志ではなく、国民の集合意識としての国家の意志です。今の世界経済の中では、国家の意志は単独で自国の利益を追求するよりも、ブロック化された枠内で自国の利益を追求していくようになるでしょう。

 ヨーロッパは、EUの分裂ではなく、EUの更なる統合強化の方向に進むでしょう。アジアも、アジアの中での結びつきを強化していく方向に向かうでしょう。

 ブロック経済の結びつきの強化と並行して、国内では統制経済が進行するように見えます。しかし、今日のネットワークの時代に、統制が長期間徹底できるとは考えられません。

 統制経済は、最初のうちこそ、預金封鎖、資産課税、配給制度などの形で現れますが、架空の需要のもとになっていた規制に支えられた古い体制が勢いを失ったあとは、統制の役割はなくなります。

 統制が新たな利権の温床になる前に、統制とは異なる原理を経済の中心に据えなければなりません。それが、ネットワークの中で生まれる自助の文化です。


 自助の文化とは、一人一人が、消費者としては本当に欲しいものを求め、生産者としては自分が他の人から本当に求められているものを作る文化です。だから、未来の社会で人間が生きていく条件は、自分がみんなに喜ばれるような何かを提供することができるかどうかにかかってきます。資産の量ではなく、貢献の量が問われる社会になっていくのです。

 教育もまたそうです。勉強は、受験に合格するために行うものではなく、自分が将来社会に何かを貢献するために行うものになっていくでしょう。

 これまでの勉強の基本は、志望校の過去問に合わせたものでした。だから、志望校の試験科目が英、国、社だけで、数、理がなければ、数、理の勉強はしなくていいと思われていました。そして、点数を上げるためには、受験する教科の重箱の隅の知識もしっかり身につける必要があったのです。

 しかし、自分の将来の仕事のために勉強するとしたら、勉強の仕方も当然変わってきます。新しい勉強のスタイルは、全教科を万遍なく、しかし、重要なポイントをしっかり身につけ、そして自分の興味関心のあることについては徹底してこだわるようなものになるでしょう。


 バブル崩壊の影響で山一證券が倒産したとき、優秀な大学を出た優秀な社員がたくさんいましたが、多くの人が再雇用に苦労しました。そのときに言われた言葉が、「優秀な人なら、いくらでもいる。欲しいのは自分の持ち味のある人だ」ということでした。

 肩書に支えられた社会は、今回の経済危機で大きく後退するでしょう。それは、明治維新が、武士階級の小さな肩書の差を一掃したことと似ています。古い社会の無駄がなくならなければ、新しい社会の芽は出てこないのです。

 新しい時代は、新しい需要を作り出す人によって作られていきます。新しい需要とは、これまでの規制下の制度で作られた架空の需要ではなく本当の需要に根差したものです。

 新しい需要を作り出せる人は、同時に、自分が新しい何かをしたいと思っている人です。

 これからの子供の教育で大事なことは、いつも新しい何かをしたいと思っている子供たちを育てることです。そして、子供たちは模倣によって成長する存在ですから、何よりも身近な大人が新しい何かを求めて生きていくことが大切になってくるのです。


 教育の分野にも古い体制は残っています。教育の本来の目的は、子供たちの実力を育てることですが、実力以外のものが目的のように遂行されている面があります。そのひとつは、受験に合格させることを目的にした教育です。

 もちろん、実力をつけた結果として合格するのであれば問題はありませんが、受験をめぐる情報が精緻になるにつれて、実力以外の要素が合否を分けるような面が大きくなっています。

 例えば、ある試験に合格するためには、その試験の過去問の分析が欠かせません。しかし、受験する子供には、分析のためのデータや方法がありません。すると、そういうデータを利用できる子供の方が利用できない子供よりも、合格する可能性が高くなります。このため、教育は、不必要にお金のかかるものになっています。

 新しい教育とは、教育を本来の実力をつけるための教育に戻すことです。そのための方法のひとつは、子供たちの教育を家庭と地域を基盤としたものにすることです。教育を学校だけに任せるのではなく、学校と家庭が連携したものにしていく必要があるのです。

 他人に委託する教育から、自分たちで工夫する教育、つまり自助の教育に変えていくことが、これからの新しい教育に求められてくると思います。

この記事に関するコメント
コメントフォームへ。

森川林 20111228  
 最初に書いた記事で、「リーマンショックの影響で山一証券が」となっていたのを訂正しました。
 以下は、言葉の森新聞に書いた補足説明です。

 バブル崩壊(1990年ごろ)→山一證券(1997年)→リーマンショック(2008年)です。

 と書いていてふと思ったのが、後世の歴史は、1990年の日本のバブル崩壊と、その後のアメリカのITバブル崩壊と、その後のリーマンショックと、今起きつつある経済危機を、同じ流れのものとして記述するだろうということです。
 共通しているのは、生産活動に使うのでは使いきれなくなったマネーをギャンブルにつぎこんで、最初はうまく行っているような気がしていたものの、結局返せなくなったということだからです。

 この出口は、ひとつしかありません。それは、使いきれなくなったマネーを新しい産業の創造にふりむけることです。
 その新しい産業とは、昔ながらの公共事業の延長にはありません。タヌキしか通らないような道に高速道路を作っても仕方ないのです。(タヌキさんごめんね)

 新しい産業は、上からの指示で作られるような大きな産業ではなく、ひとりひとりの人間がその産業に従事することを喜びとするような、下から作っていく産業です。

 私は、そのひとつとして森林プロジェクトを考えています。人間が、その地域で、周囲の人に喜ばれながら自分の提供する何かを受け取ってもらえるような仕事です。
 そして、それを受け取った人が、自分も同じように周囲の人に喜ばれる何かを提供できるのだと気づくような仕事です。

 その芽は、実は既にいろいろな形で現れています。その具体的な話を、今後書いていきたいと思います。


同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
政治経済社会(63) 教育論文化論(255) 
コメント261~270件
……前のコメント
作文自動採点ソ 森川林
 森リン採点は、こちらの方で入れてください。 ▽ htt 7/19
記事 89番
作文自動採点ソ NNN
私は興味のある職種が2つあります。    1つ目はエンジ 7/18
記事 89番
兄弟で作文を書 シナモロ
参考になりました 7/15
記事 1880番
頭括型の書き方 乙女
わかりやすかった 7/13
記事 1352番
公立中高一貫校 森川林
受験勉強は答えのある世界ですから、答えを見るというのがいちば 6/28
記事 4487番
公立中高一貫校 kana
初めて質問させていただきます。 先に答えを見る勉強法は、国 6/28
記事 4487番
日本の作文教育 森川林
 これまでの作文指導でわかったことは、作文の通信教育には、も 6/27
記事 4490番
web3.0時 森川林
 web3.0時代の教育とは、勉強ができるのはもちろんいいこ 6/24
記事 4489番
公立中高一貫校 森川林
 公立中高一貫校に限らず、受験勉強には共通する勉強法がありま 6/22
記事 4487番
作文と国語読解 nane
 親の前で音読するのを嫌がるのは、これまで音読を注意していた 6/19
記事 4485番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
標準新演習算数 あかそよ
3の1はできました。 2は、答えを見るとなんとか理解できま 11/23
算数数学掲示板
標準新演習算数 あかそよ
3の1はできました。 2は、答えを見るとなんとか理解できま 11/23
算数数学掲示板
2024年11 森川林
●サーバー移転に伴うトラブル  本当に、いろいろご 11/22
森の掲示板
現在森リンベス 森川林
このあとの予定。 ・森リンベストを直す(直した) ・森リ 11/20
森川林日記
Re: 入会手 言葉の森事務局
 お世話になっております。  弟さんのみご入会が1週間 11/15
森の掲示板
入会手続きにつ やすひろ
お世話になっております。 個別掲示板を開けませんので、ここ 11/15
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習