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これからの教育に必要なもの―学力向上の先にあるもの 5 as/1523.html
森川林 2012/04/18 19:51 


 教育の目的は、人間の生きる目的である幸福、向上、創造、貢献と結びついています。

 第一は、幸福に生きるための教育です。

 この前提として、幸福とは外的な環境によってもたらされるものでなく、内的な決心によって得られるものだという考える必要があります。

 もちろん、これは、自分の置かれた状況に対する変革を否定するものではありません。しかし、変革は自分の幸福のために行うのではなく、社会に対する貢献のために行うものだと区別して考える必要があるのです。


 幸福とは、いつも自然に元気で明るくいることです。単純ですが。

 これを、各人が試行錯誤の中で獲得するものだと考える人もいるでしょう。しかし、同じように、数学の公式(例えば三角形の面積の求め方など)を試行錯誤の中で獲得するべきだと考える人はいません。過去の人類の知識や経験の蓄積を生かして、その蓄積を土台にしてより進んだ試行錯誤をするというのが人間らしい試行錯誤です。


 また、幸福は主観的なものだと考える人もいるでしょう。しかし、教育における幸福とは、人間に幸福を押しつけるものではありません。幸福の理論と方法を伝え、その理論と方法を選択できるようにすることです。

 人間は、幸福が選択できる状況であっても、あえて不幸を選ぶ場合があります。芸術の場合は更に不幸の昇華がその芸術の価値になっている場合もあります。だから、大事なことは、幸福になることではなく、幸福を自由に選択できるようになることです。


 この幸福のための教育が、未来の教育のひとつの分野になります。

 現代では、幸福のような主観的な価値観に左右されるものは教育が取り上げるべきではないという考えがあります。しかし、人類の長い歴史の中で、幸福に生きることはだれにとっても大きな関心事でした。そして、その関心に応えていたものが宗教でした。

 宗教の問題点は、論証できない架空の前提も含めてすべてを丸ごと信仰することが要求されることです。教育が宗教と異なる点は、選択の自由があることです。


 幸福に生きるための教育の教材は、プラスのシミュレーションとマイナスのシミュレーションになるでしょう。小説や実話の例をもとに、いかに人間が幸福に生きたか、あるいは不幸を克服したかを追体験する練習です。

 そして、幸福に生きる方法の基本は、感謝の反復と、幸福であることを決心する勇気だと思います。


 幸福とは、弱々しい生き方ではありません。どんな場面でも幸福に生きるというたくましい生き方です。


 幸福の教育は、まだ研究途上です。これから、さまざまな理論や方法が生まれていくでしょう。そして、やがて幸福の教育が広がるにつれて、世の中は次第に明るくなり、その社会を土台にして更に進んだ幸福の教育が発展していくのだと思います。(つづく)

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これからの教育に必要なもの―学力向上の先にあるもの 4 as/1522.html
森川林 2012/04/17 19:12 


 教育の基本は学力を高めることです。しかし、現代はそこだけが肥大化しているように見えます。その結果、かえって学力も十分につかない状況が生まれています。

 学力の低い子は、早めにあきらめてしまう結果、低学力を続けるようになり、学力の高い子は、周囲との比較の中で小さな満足を得る結果それ以上の向上を目指さないようになります。

 なぜそういうことが起きるかというと、求められているものが中身の学力というよりも外見上の学歴であることが多いからです。


 今の親の世代は、ほとんどの人が自分の人生に満足していないのではないかと思います。毎日朝起きるのがうれしくてたまらないという人生を送っている人はほんのわずかです。豊かな社会では外見上の刺激はたくさんあるので、毎日忙しく面白く暮らすことはできますが、本当に自分の人生に満足して生きている人はあまりいないと思います。

 その漠然とした不満の漂う人生の原因を、多くの人は自分の学歴のせいだと考えるのではないでしょうか。そして、その学歴の原因は、自分が勉強を開始するのに遅れたからだと考えます。その結果、親のマイナスを繰り返さないように、子供には早めに勉強させて、いい学歴を獲得し、いい人生を送ってほしいと考えるのです。


 しかし、学歴というのはひとつの土台です。大事なことはその土台の上に何を建設するかということで、その建設するものが生きがいの中身です。

 大人が自分の人生に漠然とした不満を感じているのは、土台がなかったからではなく、建設するものがないからなのです。


 だから、子供の教育と考えるとき、まず外見上の学歴よりも中身の学力を考えることが大事です。次に、学力の土台の上に、何を建設するかということを考えることが大事です。

 その建設の中身は、人生の中身と同じです。だから、人生の目的を考えることが、そのまま教育の目的を考えることになるのです。


 人間の生きる目的を一般的に言えば、幸福、向上、創造、貢献だと思います。教育の目的も、同じように、幸福に生きるための教育、向上するための教育、創造するための教育、社会に貢献するための教育と考えることができます。

 向上の一部の学力の、そのまた一部の受験科目の点数だけにとらわれるのではなく、人間の全体の向上と、その向上と同じように大切な幸福や、創造や、貢献を教育の守備範囲として考えていく必要があるのです。

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