最近の国語の入試では、記述式の問題が増えています。大学入試センター試験など、短期間で大量の採点を必要とする国語問題ではまだ選択式が中心ですが、選択式の問題は解き方のコツがわかるとかなり高得点がとれるので、子供たちの本当の国語力を表しているとは言えません。
東大をはじめ国立大学の入試問題は、国語に限らず英語などでも記述式の問題が主流です。ですから、中学や高校の入試も、難関校ほど記述式の問題が多くなります。記述式の問題の方が、その子の本当の国語力がわかるからです。
その記述式の問題よりも更に国語力がはっきりとわかるのが作文です。ところが、この作文の課題は、易しいものから難しいものまでかなり広がりがあります。易しい作文課題は、生活作文の一種のようなもので、「私の友達」や「この一年間で思い出に残った出来事」などという内容のものです。実は、こういう易しい作文課題では、子供たちの実力の差はあまり出てきません。実力の差というよりも、取り上げた題材の差の方が大きく出てくるので、本当の実力はなかなかわかりません。
そのため、今の入試で行われる作文の課題は、身近な課題はほとんどなく、意見文的な課題や感想文の課題が主流になっています。
言葉の森の作文の課題も、小学校5年生から感想文が中心になります。この感想文を書くために毎週難しい長文を読み自分なりに似た例を考える練習をしていると、書く力だけでなく読み取る力もついてきます。
作文の実力というものは、実はなかなか上達しないものです。よく穴埋め問題を解かせるようなプリントを使って、それが作文の学習の基礎になっているという指導をしているところがあります。しかし、穴埋め問題を解くことと、作文の実力がつくことの間にはほとんど何の関係もありません。
作文の実力は、作文を実際に書く中でしか身につかないからです。
そして、この、子供たちに作文を書かせるということ自体が難しいのです。小学校低中学年のときにいくら穴埋め問題をやっても、小学校高学年になって作文を書く実力はついていません。だから、作文の勉強をするには、小学校低中学年から正しい方向で勉強をしていく必要があります。その正しい方向とは何かといえば、読む力をつけることと、実際に作文を書く練習をすることです。
言葉の森の子供たちの作文力の推移を見ると、小学校低学年のころに作文が苦手か普通だった子が、小学校高学年からだんだん得意になり、中学生になると自信を持って優れた作文を書くようになっています。しかし、その実力の伸びはきわめてゆるやかなので、途中には、作文力が停滞しているように見える時期が必ずあります。しかし、その停滞しているように見える時期も、気長に読む勉強としての長文音読などを続けることによって、学年が上がるにつれて作文の実力が再びついてくるのです。
実は、こういう長期的な見通しがあって作文指導をしている作文教室はほとんどないと思います。作文の実力はなかなかつかないので、その教え方がいいかどうかは何年かたってみないとわかりません。そして、穴埋め問題でやりやすい勉強をしていたのでは、何年かたったときに結局何も実力がついていなかったということになります。作文の実力をつけるにはかなり時間がかかりますが、実力をつけるための方法は確実にあるのです。