算数・数学は、できるとできないの差が大きくつく勉強です。だから、入試の主要科目として利用されているという面があります。
しかし、差がつくというのは、それが人為的な勉強だからであって、決して頭のよしあしに基づくものではありません。算数・数学の勉強は、その学年で習う教科書レベルの問題が百パーセント完璧に解けるというのが第一の目標です。それがまだできていない場合は、1冊の問題集をできないところがなくなるまで繰り返し解く練習をすることです。できない問題が残る原因は、前の学年で習ったことが不十分であるためなので、前の学年に戻って、やはりその学年の問題が百パーセント解けるようにやっていくことです。
家庭学習の基本は、この教科書レベルの問題をすべて、ほとんど考えずに解けるか、考えずに解き方を思いつくかできるようになるまで勉強することです。もちろん、これだけでは受験用の問題には対応できません。
しかし、入試問題についても、勉強の仕方の基本は同じです。1冊の入試用の問題集で、できないものがなくなるまで繰り返し解くことです。
教科書レベルの問題が確実にできていれば、受験用の問題は、高校入試では約2か月、大学入試では約6か月で、最難関校に合格するレベルまで得点を引き上げることが可能です。
ひとつの例は、私(森川林)の経験で、中3の子供の高校入試の数学の問題を見るために試しに自分でやってみたところ、最初はほとんど0点でした。しかし、夏休みの40日間、子供が質問する問題をそのつど解法を見て説明しているうちに、夏休みの終わりには国立の難関高の入試問題でもほとんどできるようになりました。
もうひとつの例は、「小学校からの東大入試戦略」の著者、渡辺由輝さんの体験談です。渡辺さんは、浪人時代、東大合格者が毎年数百名というマンモス予備校に通うことにしました。しかし、その授業が全くわかりません。高校時代は数学にある程度自信があったものの、予備校の入学当初の模試では、後ろから数えた方が早いような順位でした。
そこで、1か月も通わないうちに予備校の数学の授業はやめ、自宅で参考書を1種類にしぼり、その参考書に出てくる問題なら1題残らず解けるように繰り返し練習しました。2学期の中ごろにようやくその練習が終わり、予備校の模試を受けてみると、数千人の受験者中ベストテンに入っていたそうです。
このような例は、たまに聞くことがあります。しかし、あまり一般的でないのはなぜでしょうか。それは、1冊の問題集をすべてできるようになるまで繰り返し解くという勉強法を徹底できない人が多いからです。ほとんどの人は、1冊の問題集が大体できたら次の問題集に移るというような勉強の仕方をしています。だから、なかなか成績が上がらないのです。
逆に言えば、受験前の一時期に、受験用の問題集を1冊繰り返し練習し、その問題集でできない問題がなくなるまで徹底すれば受験の得点力は急速につきます。だから、それまでの普段の家庭学習では、難問にあたって時間をかけるよりも、教科書レベルの問題が百パーセントできるようにしておけば十分なのです。
さて、数学では、できない問題に遭遇したときのやり方で、勉強の能率は大きく変わります。問題を見て解き方を考えて、よくわからない場合はすぐに答えを見ます。そして、解法の流れを自分なりに理解します。理解できない場合は、親や先生に聞きます。問題全体を聞くのではなく、解法の流れの一部を聞くだけですから、聞かれる人はそれほど負担にはなりません。この反対に、できない問題をできるまで考えるというやり方をする人が多いのです。
解法を見て理解できた問題は、理解できた気がするだけで、日を置いてもう一度やるとやはりできないのが普通です。そこで、また解法を見て理解します。しかし、また日を置いてやってみると、またできません。このように、2回も3回もできない問題を繰り返して勉強するというのは、本人にとってはかなり苦痛です。解ける問題をやっていると気分がいいのですが、解けない問題ばかりをやっているとうんざりしてきます。このため、1冊の問題集を百パーセントできるようにするという勉強法は、口で言うのは簡単ですが、実行するのはかなり強い意志がないとできないのです。しかし、できない問題も、4回ぐらい繰り返すころには不思議とできるようになります。1回や2回繰り返すだけではできるようにはなりませんが、4回から5回繰り返すようになると、急にできるようになってくるのです。(つづく)
次は、英語の家庭学習の話です。
国語の勉強というと、漢字の書き取りを連想する人が多いと思いますが、漢字を書く力は国語力のごく一部です。大事なのは、漢字を読む力です。読む力があれば、書く力は比較的早く身につきます。
読む力はどうしたらつくかというと、読書によってです。学校の教科書は、その学年で習う漢字以外はかな書きにしてしまうので、かえって読む力がつきません。その点、児童図書は、ほとんどの漢字にふりがなが振ってあるものが多く、読書を楽しむうちに自然に漢字を読む力がつきます。そして、読んだことのある漢字は、書けるようになるのも早いのです。
では、どうしたら読書をするようになるかというと、それは、学校で行われている朝の10分間読書運動が参考になります。その方法は、
1、毎日、
2、決まった時間に(学校では朝のHRなど、家庭では夕食後など)、
3、全員で(学校ではクラス全員で、家庭では家族全員で)、
4、それぞれ自分の好きな本を、
5、10ページ以上読む(学校では10分間)、
というやり方です。
逆に、次のようなやり方では、なかなか本を読むようにはなりません。
1、たまに、
2、思いついたときに、
3、その子だけ、
4、お母さんがすすめる本を、
5、「本でも読んでみたら」という漠然とした指示で読ませる。
子供に何かを指示する場合は、場所や時間や基準をルール化しておくことが大事です。
毎日本を読んでいると、それがたとえ10ページでも次第に読む力がついてくるので、必ず読書好きになります。
しかし、時に、読みにくい本に出合うことがあります。そういうときは、その本をわずかずつ読ませ続けるよりも、途中の読んだところまでに付箋をつけて、別の読みやすい本に移ることです。そして、気が向いたときに、またその読みにくい本も少しずつ読めばいいのです。読んだところに付箋をつけて読むことによって、何冊もの本を並行して読むことが可能になるので、難しい本で読書が足踏みしてしまうことはありません。
国語の家庭学習の基本は、この読書だけです。このほかの、漢字の書き取り、文字の練習、音読や暗唱、難読や復読、対話、作文などは、またあとで説明します。
家庭学習でいちばん大切なのは読書です。学校や塾の宿題などよりも、毎日の読書を優先するという原則を家庭のルールとして作っておくことが大事です。
次は、算数の勉強法です。(つづく)