英語の勉強法の基本は、国語の勉強法に似ています。それは、問題を解くような勉強の仕方ではなく、まず英文を丸ごと自分のものにすることです。その土台の上に、文法的な知識を身につけていくことです。
英語を自分のものにする方法は、教科書の音読と暗唱です。教科書1ページを繰り返し音読していると、20回か30回読んだところで、全文が暗唱できるようになります。これが英語力の土台になります。
高校入試、大学入試の英語では、長文を読ませてその内容を問うような問題がよく出されます。だから、英語の長文を読む力をつけるとともに、国語の読解力をつけておく必要があります。大学入試の英語では、国語の読解力を要とする部分がかなりあります。
英語の長文を読む練習は、英語の本の読書です。英語の暗唱と英語の読書が、英語の勉強の土台になります。もちろん、入試前の勉強では、入試問題集の長文を読む練習をしていきます。
では、英語は、いつから勉強したらいいのでしょうか。日本人の場合、小1から小3の間に、日本語脳が形成されます。だから、この時期に英語の勉強をしすぎると、日本の発達に問題が出てくる可能性があります。
一方、小4から小6にかけては、外国語を習得する能力が、ちょうど成長途上にあります。だから、小1から小3にかけては、日本語中心の勉強を行い、小4から小6にかけて英語の勉強をするのが理想です。
英語の音声はCDで練習します。日本語による説明の入っていないもの、DVDなど画像の入っていないものが条件です。CDを聴いて練習する場合、上の子が小4以上で、下の子がまだ小3以下であることがあります。すると、上の子の聴くCDによって、下の弟や妹の日本語脳の形成が阻害される可能性もあります。だから、小さい子がいる場合の英語の音声練習は、ヘッドホンを利用することです。
日本語の音声であっても、テレビやビデオやCDがいつもつけっぱなしの環境では、小さい子供の感情面での成長が遅れることがあります。小さい子がいる場合は、テレビやビデオは見たい人だけがヘッドホンをつけて見るという配慮が必要です。なぜテレビやCDにそういうマイナスの影響があるかというと、その子の置かれている状況に関係なく意味のある言葉が流れてくるからです。例えば、気候が穏やかで晴れ晴れとした日なのに、テレビで鳴き声や叫び声が聞こえてくると、小さい子供の感受性は混乱します。おかしくもないのにテレビの笑い声が聞こえたり、それが突然コマーシャルに変わったり、というような変化に、子供は感情的対応することができないので、言語と感情の結びつきを持たない子になってしまうのです。
しかし、小4以上は、もうそういう心配はありません。日本語脳が確立しているので、英語を聞いても日本語脳の発達が遅れるということはありません。また、状況に関係のない音声が流れてきても、事情がわかるので感情面の混乱も起きません。
さて、英語の文章を暗唱する場合、会話中心の文章よりも、説明中心の文章の方が実力がつきます。その点で、現在の中学校の英語の教科書に見られる会話中心の編集には問題があります。
小4から英語の勉強を始めると、まだ単語の意味も文法もわかりません。しかし、ここで勉強的に単語や文法の説明を始めると、日本語的な英語の勉強をすることになってしまいます。英語の勉強は、日本人の場合は特に日本語脳の問題があるせいか、他の国の人が英語を学ぶのとは違った難しさがあります。また、そのため、日本人に有効な英語の勉強法がまだ確立されているとは言えません。しかし、これからの家庭学習では、次のような形が主流になっていくとおもわれます。(つづく)
算数・数学は、できるとできないの差が大きくつく勉強です。だから、入試の主要科目として利用されているという面があります。
しかし、差がつくというのは、それが人為的な勉強だからであって、決して頭のよしあしに基づくものではありません。算数・数学の勉強は、その学年で習う教科書レベルの問題が百パーセント完璧に解けるというのが第一の目標です。それがまだできていない場合は、1冊の問題集をできないところがなくなるまで繰り返し解く練習をすることです。できない問題が残る原因は、前の学年で習ったことが不十分であるためなので、前の学年に戻って、やはりその学年の問題が百パーセント解けるようにやっていくことです。
家庭学習の基本は、この教科書レベルの問題をすべて、ほとんど考えずに解けるか、考えずに解き方を思いつくかできるようになるまで勉強することです。もちろん、これだけでは受験用の問題には対応できません。
しかし、入試問題についても、勉強の仕方の基本は同じです。1冊の入試用の問題集で、できないものがなくなるまで繰り返し解くことです。
教科書レベルの問題が確実にできていれば、受験用の問題は、高校入試では約2か月、大学入試では約6か月で、最難関校に合格するレベルまで得点を引き上げることが可能です。
ひとつの例は、私(森川林)の経験で、中3の子供の高校入試の数学の問題を見るために試しに自分でやってみたところ、最初はほとんど0点でした。しかし、夏休みの40日間、子供が質問する問題をそのつど解法を見て説明しているうちに、夏休みの終わりには国立の難関高の入試問題でもほとんどできるようになりました。
もうひとつの例は、「小学校からの東大入試戦略」の著者、渡辺由輝さんの体験談です。渡辺さんは、浪人時代、東大合格者が毎年数百名というマンモス予備校に通うことにしました。しかし、その授業が全くわかりません。高校時代は数学にある程度自信があったものの、予備校の入学当初の模試では、後ろから数えた方が早いような順位でした。
そこで、1か月も通わないうちに予備校の数学の授業はやめ、自宅で参考書を1種類にしぼり、その参考書に出てくる問題なら1題残らず解けるように繰り返し練習しました。2学期の中ごろにようやくその練習が終わり、予備校の模試を受けてみると、数千人の受験者中ベストテンに入っていたそうです。
このような例は、たまに聞くことがあります。しかし、あまり一般的でないのはなぜでしょうか。それは、1冊の問題集をすべてできるようになるまで繰り返し解くという勉強法を徹底できない人が多いからです。ほとんどの人は、1冊の問題集が大体できたら次の問題集に移るというような勉強の仕方をしています。だから、なかなか成績が上がらないのです。
逆に言えば、受験前の一時期に、受験用の問題集を1冊繰り返し練習し、その問題集でできない問題がなくなるまで徹底すれば受験の得点力は急速につきます。だから、それまでの普段の家庭学習では、難問にあたって時間をかけるよりも、教科書レベルの問題が百パーセントできるようにしておけば十分なのです。
さて、数学では、できない問題に遭遇したときのやり方で、勉強の能率は大きく変わります。問題を見て解き方を考えて、よくわからない場合はすぐに答えを見ます。そして、解法の流れを自分なりに理解します。理解できない場合は、親や先生に聞きます。問題全体を聞くのではなく、解法の流れの一部を聞くだけですから、聞かれる人はそれほど負担にはなりません。この反対に、できない問題をできるまで考えるというやり方をする人が多いのです。
解法を見て理解できた問題は、理解できた気がするだけで、日を置いてもう一度やるとやはりできないのが普通です。そこで、また解法を見て理解します。しかし、また日を置いてやってみると、またできません。このように、2回も3回もできない問題を繰り返して勉強するというのは、本人にとってはかなり苦痛です。解ける問題をやっていると気分がいいのですが、解けない問題ばかりをやっているとうんざりしてきます。このため、1冊の問題集を百パーセントできるようにするという勉強法は、口で言うのは簡単ですが、実行するのはかなり強い意志がないとできないのです。しかし、できない問題も、4回ぐらい繰り返すころには不思議とできるようになります。1回や2回繰り返すだけではできるようにはなりませんが、4回から5回繰り返すようになると、急にできるようになってくるのです。(つづく)
次は、英語の家庭学習の話です。