最近、言葉の森の体験学習を始める人の中で、次のように言う人が増えています。
「今まで、○○で作文の勉強をしてきたけど、やはり全然書けないので、言葉の森にした」(○○には、いろいろな名前が入ります)
今年の春は、他の作文通信講座が、中高一貫校入試の作文試験に対応しようとしたためか、一斉に宣伝を行いました。ある通信講座などは、週に何度も広告を出し、それも小学生新聞を1面全部使うような派手なカラー広告を出していました。しかし、そこで書かれている内容は、これまで言葉の森が書いてきたことの焼き直しのようなものばかりでした。
タレント教育評論家が監修しているので、いい教材だと思った人も多いのだと思いますが、実際の指導内容については、いろいろな指導法の寄せ集めです。
その結果、カラフルな楽しそうな教材に(そして、毎週ではなく月に1回とか2回とかいう手軽な料金に)惑わされて、そういう通信講座で作文の勉強を始めてみた人も多かったと思います。
ところが、楽しくできそうな気がして始めてみたものの、そういうところでは実際の指導のノウハウがなくただ赤ペンを入れるだけの添削が中心なので、結局、課題が少し難しくなるともう続けられなくなるのです。
ところが、いったん赤ペンによる添削だけで、作文がなかなか書けなくて苦しい思いをした子供は、もう作文という言葉だけで拒否反応を示すようになります。作文のような表現する勉強は、嫌いにさせるのは簡単です。間違いを注意だけしていれば、だれでもすぐに書くことが嫌いになります。しかし、世間のほとんどの赤ペン添削は、そういう間違いを直す指導が中心です。
この春、言葉の森以外の作文通信講座で作文の勉強を始めた子の中には、作文が苦手になった子がかなり多かったと思います。いったん作文が嫌いになると、もうほかのところでまた作文の勉強を始めてみようという気にはなかなかなれません。
だから、作文の勉強は、電話指導で確実に書けるところまで指導する言葉の森で始めていくことが大切なのです。
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英語の勉強を始めるのは、小学校4年生からです。4、5、6年生というのは、日本語の能力が既に安定していると同時に、外国語を習得する能力がまだ高い時期だからです。
これが、小学校1、2、3年生で英語の勉強をするようだと時期的には早すぎます。小学校3年生までは、日本語の能力を確実に身につけていく時期ですから、この時期に日本語以外の言語の勉強をすると、日本語能力が正しく成長しなくなる可能性があります。
今の親の世代は、自分が英語で苦労してきたために、子供にその苦労をさせまいと思い、早期の英語教育をさせる傾向があります。しかし、早期の英語教育はうまく行かなくても問題はありませんが、日本語教育がうまく行かないとそれは一生の問題になります。現代は、CDやDVDなど機器を利用した教育が可能なので、やりすぎの危険性は昔よりも高くなっています。
英語教育を始めるのに遅すぎるという心配はありません。しかし、早すぎとやりすぎによる危険性だけは親が注意しておくべきだと思います。
さて、小学校4、5、6年生から始める英語の勉強の教材は、英語の文章と英語の音声です。まず、子供が興味の持てそうな易しい英語の物語の本を選びます。その場合、CDがついていることが条件です。
日本で出版された英語の物語の本は、日本語による説明が不必要に入っている場合があるので、英語圏で出版されたものの方がいいようです。
昔、私は、教材としては、中学の英語の教科書がいいと言っていました。しかし、最近の中学の英語の教科書は、短い会話ばかりが載っているので、教材としてはあまりふさわしくありません。しかも、教科書に載っているその簡単な会話ばかりの文章とは結びつかない形で、文法的な勉強をするようになっています。こういう勉強の仕方では、英語はかなり勉強のしにくい教科になります。これは、むしろ、子供たちの間に、できる子とできない子の差をつけるための勉強になっているような気さえします。つまり、教科書と学校の授業だけをやっている子は実力がつかず、教科書と授業以外の勉強をやっている子だけが力がつくような仕組みになっているのです。
英語の教育では、まず英語圏の絵本など(CD付き)を選びます。この本のCDを繰り返し聞き耳を英語に慣れさせると同時に、その英語をそのまま暗唱できるようにします。慣れてきたら文章も暗写できるようにし、それと同時に単語の意味や文法的な説明をしていきます。
毎日CDを5分から15分聞きます。勉強するのは小学校4年生以上ですから、子供が自分でCDを聞くように習慣づけていきます。
日本語の暗唱は、言葉の森では1か月で900字を暗唱するようにしていますが、英語の場合は1か月で200から300ワードが目安です。1日に暗唱するワード数は、20から30ワードです。この30ワードなら30ワード分を20回から30回音読で繰り返すと、日本語と同じように丸ごと暗唱できるようになります。
暗唱する前に、子供が自分で辞書を使い、単語の意味と読み方を調べるようにします。
単語の意味は、ノートなどに書き出します。読み方は、英語の文章にふりがなをつける要領で書き込んでいきます。
親や先生は、その意味や読み方のふりがなを見て、不適切なところがあれば直してあげます。家庭学習で大事なことは、子供ができるだけ自分の手でやっていくようにすることで、親や先生が子供たちに教える場面は少なくしていくことが大事です。
次は国語の勉強法です。(つづく)
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勉強をすれば頭がよくなるというのは、普通の話ですが、勉強をして頭が悪くなるような勉強の仕方もあります。
しかし、なぜそういう勉強の仕方をしてしまうかというと、その勉強でそれなりに点数がよくなるからです。
目に見える形で表面に出てくるのは点数ですから、親も子もつい点数を上げることを目標にしがちです。しかし、点数は勉強の目的ではありません。勉強の目的はひとことで言えば、頭をよくすることです。その計測の方法のひとつとしてテストがあるのです。
小学校低中学年の子で、勉強や宿題が忙しいから本を読む時間がないというようなことを言う子がいます。
勉強が忙しいというだけあって、みんなそれぞれ学年相応よりも賢くしっかりしています。しかし、そう見えるのは小学校の間だけで、中学、高校と学年が上がるにつれて、成績が見劣りするようになってくるケースが多いのです。
頭のよさの基本は、考える力です。考える力のもとになるのは、考えるための語彙の豊富さです。そういう生きた語彙は、読書のように生きた言葉と接することによって身につきます。熟語集のように知識として身につけるものは、生きた言葉にはなりません。
しかし、テストというものはその性格上、大量に客観的に採点する必要から、死んだ知識をたくさん覚えているクイズマニアのような子の方が、自分の頭で考える生きた知識を持つ子よりも、往々にしてテストの点数がいいことがあります。
だから、そのテスト結果を見て、「本など読む暇があったら、テストに出る知識のひとつでも余計に覚えておいた方がいい」という発想になりがちなのです。
もちろん、ただ何の本でも読んでおればいいというのでは、本の読み方としては不十分です。本当は、その学年に応じて少し難しい抽象的な語彙も含まれた本を読んでいくことが大事です。
しかし、それでも、テスト対策向けの知識を覚えるような勉強をするよりも、どんな本でも読書をしていた方が頭の成長にはずっといいのです。
次は、頭をよくする本の読み方です。(つづく)
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なるほど( ̄^ ̄)ゞ
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言葉の森のfacebookページを更新しました。
http://www.facebook.com/kotobanomori
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漢字かな交じり文だから、漢字が思考をイメージ化し、かながそれらを結びつける。
母音言語だから、音声となった言葉が心に響いてくる。
膠着言語だから、てにをはの助詞と文末の助動詞に気を配る集中力が生まれる。
だから、頭をよくするいちばんの勉強は日本語を使うこと。
日本人は、そんな日本語を使っているから、勉強麺では本当はとても有利な立場にいるのです。
しかし、その日本で学力格差が生まれているのは、日本語の学習(国語ね)がうまく行っていないからです。
日本語の学習の大部分は、学校ではなく家庭で行われています。
だから、家庭での日本語環境を豊かにすることが、これからの教育の大きな課題になると思います。
(中根)
静かな夜明け前。遠くでヒグラシが鳴いています。
今日も暑くなりそうな予感。
「宿題なんかお母さんがやってあげるから、あなたは楽しく遊んできなさい」
って言ってくれるお母さんがいたらいいなあ(笑)。
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頭をよくする勉強として日本語を使うというのは、具体的には、ちょっと難しい文章を繰り返し音読することです。
言葉の森では、これまで受験生には、入試問題集の問題文を読書がわりに読むことをすすめていました。
今、これをもっと発展させた勉強を開発しているところです。
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中学入試でも、高校入試でも、もちろん大学入試でも、そして就活のエントリーシートでも、文章を書く形の試験が増えています。
勉強の仕方として、チャレンジやZ会の通信講座で作文の添削を受けることもできます。しかし、書いたあとにいくら赤ペンを入れられても、ほとんどの子の作文力は上達しません。
作文は、子供が小さいころほど、教える先生と教わる生徒の人間的なつながりが必要になってきます。言葉の森のような毎回の電話指導がなければ、通信講座で作文を勉強することはかなり無理があるのです。
作文指導で、いちばんいい先生は、その子のことをよく知っているお母さんや、お父さんや、近所の人たちです。そこで、言葉の森では、言葉の森独自のカリキュラムと教材によって、お父さんやお母さんが自宅で自分の子供や近所の子供たちに作文を教えられるシステムを作りました。
しかし、作文を教えるのは、ほかの勉強を教えるのと違って独特の難しさがあります。ほかの教科は頭と手だけで勉強できますが、作文はそれに加えて心の働きが必要になります。つまり、書きたいという意欲をいかに引き出して持続させるかということが、作文を教える上で重要なノウハウとなっているのです。
そこで、お父さんお母さん方を対象に、日曜日の丸1日合計6時間の作文指導の講習会を開きます。この講座は有料ですが、これを受講すれば講座の中で講師資格試験が受けられ、その試験に合格すれば、言葉の森の教材を使って自宅で作文を教える講師資格が取得できます。
これからの教育で最も大事になるのは、思考力と表現力と創造力です。作文教育の大切さが、これから必ず注目されてきます。
作文指導は、学校の一斉指導でも、塾の個別指導でも、通信講座のプリント学習でも、決して十分にはできません。
書く力や考える力は、毎日の家庭の生活の中で自然に育てていくのが最も確実な勉強の仕方です。
月に1、2回、通信講座で知らない先生の赤ペン添削を受けるよりも、自宅で毎日10分の音読をして毎週1回の作文を家族の対話の中で書く方がずっと力がつくのです。
「言葉の森 作文 講師資格講座」受講者募集中。
https://www.mori7.com/sikaku/
7月29日(日)10時~17時 横浜
8月26日(日)10時~17時 品川
以下、全国各地で講師資格講座を開いていく予定です。
開催地をご希望の方はご連絡ください。
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講師資格講座、是非埼玉県で開講していただきたいです。
ご検討をよろしくお願いいたします。
kayokayoさん、ありがとうございます。
埼玉県にも行きたいと思います。
いい会場があったら教えてください。→ nane@mori7.com
大阪では開催しないんですか?
順番としては、今の言葉の森の生徒数の多い順に、神奈川、東京、千葉、大阪、兵庫、愛知、埼玉と、月に1、2回のペースで回っていきたいと思っています。
大阪でいい会場があったら教えてください。
森川森様
コメントありがとうございました。
講座会場ですが、条件などはございますか?
会場の大きさや交通の便など条件がありましたら教えてください。
森川林様
先ほどはペンネームを間違えてしまい失礼いたしました。
すいません。
kayokayoさん、ありがとうございます。
主要な駅の近くで、20人ぐらいが入れる小会議室で、時間は午前10時から午後5時ごろまで、料金はもちろん安い方がいいけど高くても構わない、という感じです。
こちらにご連絡くださっても結構です。
→ nane@mori7.com (メール)
→
http://www.facebook.com/kotomori (facebookページ)
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小学校4年生までは、読書感想文を書かせることに教育的意義はほとんどありません。
言葉の森では、小学校5年生以降に本格的に感想文の勉強をするための準備として、小学校3年生から感想文の指導をしています。しかし、それは、あくまでも小5の勉強につなげるための準備であって、小学校3,4年生で上手な感想文を書かせることを第一の目的にしているのではありません。
言葉の森では、小学校1、2年生でも、感想文の課題を選択することができるようになっていますが、よほどのことがないかぎり低学年の子が感想文を書くことはおすすめしていません。
とは言っても、やはり宿題の感想文を書かざるを得ない人のために、書き方の例を説明します。
以下の説明は、すべて言葉の森のオリジナルです。学校や塾や他の通信教育の関係者の方も、自由に使っていただいて結構です。
■書き方の手順「まず本選び」
まず本選びですが、子供が「この本、おもしろいから書きたい」と言うような本が必ずしも書きやすい本であるとは限りません。子供が自分なりに似た話を見つけることができたり、想像をふくらませたりできるような本が書きやすい本です。この本選びは、大人がアドバイスをした方がいいようです。少なくとも、子供には「似た話や想像した話が書けるような本が、感想文の本としては書きやすいよ」と言ってあげるといいと思います。
書きたいテーマが決まっているときは、インターネットの書店を利用して関連する図書を数冊用意すると話題が広がって書きやすくなります。
■書き方の手順「次に字数配分」
感想文の宿題は、原稿用紙3枚程度(400字詰めで1200字)の分量で指定されることが多いようです。これだけの分量を1日で書くというのは大変です。無理のない字数配分は、1日1枚(400字)です。感想文の宿題をするために、4日間の予定を立てて、1日目に400字以上、2日目も400字以上、3日目も400字以上と書いていって、4日目に全体を通して要らないところを削り、清書するという予定を立てれば無理なく書くことができます。
■書き方の手順「1日目の400字」
本のはじめの方から一ヶ所、似た話や想像した話の書けそうな場所を選び、そこを引用し、自分の似た話を書き、最後に「たぶん」「きっと」「もしかしたら」などという言葉を利用しながら、自分の感想を書きます。
本の引用(1)→似た話(1)(もし…だったらと想像してもよい)(たとえも入れる)→感想(1)(たぶん、きっと、もしかしたらなどと考えてみる)
■書き方の手順「2日目の400字」
2日目も同じです。本の中ほどから一ヶ所、似た話の書けそうな場所を選び、そこを引用し、似た話を書き、感想を書いていきます。
本の引用(2)→似た話(2)→感想(2)
■書き方の手順「3日目の400字」
3日目も同じように、本の終わりのほうから一ヶ所選んで書いていきますが、最後の感想のところがちょっと違います。1日目、2日目は、引用した小さな箇所の感想でしたが、3日目は本全体についての感想を書いていきます。
小学5・6年生の生徒の場合、この感想は、「○○は(人間にとって)……である」というような一般化した大きな感想を書いてまとめます。この感想の部分は、お母さんやお父さんと話し合いをして、子供自身の考えを深めていくといいと思います。そして、「私はこれから」などという言葉を使い、この本から得たことを自分のこれからの生き方にどうつなげていくかを考えてまとめます。中学生の場合は、結びの5行に「光る表現」を入れていくとよいでしょう。
本の引用(3)→似た話(3)→大きな感想(○○は人間にとって……。私はこれから)
■書き方の手順「4日目の清書」
4日目は清書です。お母さんやお父さんが全体を通して読んであげると、要らないところが見つかると思います(書いた人自身には、要らない部分というものはなかなかわかりません。これは大人でも同じです)。この要らない部分を削ります。次に、書き出しの部分に本の引用として情景描写の部分を入れられれば、書き出しの工夫ができます。これは無理のない範囲でやっていくといいでしょう。
■書き方の手順「できたらほめる」
書いている途中でも、書き終えたあとでも、親や先生が「これは、おもしろいね」「それは、いいね」と、子供の書いた内容のいいところやおもしろいところをどんどん認めてあげることが大切です。多少おかしいところや変なところがあっても、子供が書いた内容をできるだけ尊重してあげてください。これと反対に「これは、こうした方がいいんじゃない?」「そこは、ちょっとおかしいんじゃない?」などという否定的なアドバイスをすると、勉強でいちばん大事な子供の意欲をそぐことになります。大事なことは、いい作品を仕上げることではなく、手順にそってできるだけ自力で書く力をつけることです。
■教室では宿題の感想文の個別指導はしません
感想文の指導には、生徒ひとりずつ異なるアドバイスが要求されます。更に作品として完成させるためには、書いている途中にも頻繁にアドバイスをする必要が出てきます。このような対応は、普段の勉強の中ではできませんので、夏休みの宿題のための感想文指導は、教室では行ないません。
宿題として感想文を提出しなければならないという事情のある方は、教室で練習した長文の感想文で似た話のよく書けたものをベースにして、ご家庭で書き直していかれるといいと思います。
また、どうしても書いた作品を見てアドバイスをしてほしいという場合は、担当の先生ではなく、言葉の森の事務局に直接ご相談ください。
▼「桃太郎」を例にした感想文の書き方
https://www.mori7.com/as/1314.html
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みんながよく知っている「桃太郎」を読んで感想文を書く練習です。このような形で書いていけば、読書感想文は簡単です。
感想文のコツは、似た話を長く書くことです。1日に書く分量を400字ぐらいにしておき、3日か4日で全部仕上げるようにすれば負担がありません。
以下は、小学校5、6年生ぐらいで書く感想文の例です。
▼1日目
緑の山と青い川、桃太郎が生まれたのは、こんな自然の豊かな村だった。しかし、その村は、毎年来る鬼のためにとても貧しい村だった。(情景などがわかるようにして書き出しを工夫する)
ある日、いつものように、おばあさんが川で洗濯をしていた。すると、川上から大きな桃がドンブラコッコ、ドンブラコッコと流れてきた。(物語の序盤から引用する)
ぼくは、一年生のころ、父と母と弟でキャンプに行った。キャンプ場には、きれいな川があり、その川の近くでぼくたちはバーベキューをした。食べたあとのお皿を洗うと、川の流れがすぐに汚れを運んでくれる。ぼくは、昔の人はこんなふうに川で洗濯をしたのかなあと思った。(自分自身の体験を書く)
さて、その川のキャンプでのいちばんの思い出は、冷やしておいたスイカがいつの間にか流されてしまったことだ。夜冷やしておいて、次の日に食べようと思っていたスイカが、朝起きてみるとなかった。一緒に冷やしておいた父のビールはそのまま残っていたので、たぶん夜のうちに川に流れていってしまったのだろう。
ぼくは、ふと、桃太郎の生まれた桃も、上流でだれかが冷やしておいたのではないかという気がしてきた。(この感想は主題に関係なくてもOK)
▼2日目
桃から生まれた桃太郎は、一杯食べると一杯分、二杯食べると二杯分大きくなった。しかし、桃太郎はいつまでも食べては寝るだけで何もしようとしなかった。(物語の中盤から引用する)
ぼくの小さかったころの話を、父と母に聞いたことがある。最初三千グラムで生まれたぼくは、一年たつころには、もうその三倍の十キログラム近くになっていたそうだ。ぼくの今の体重は三十五キログラムなので、生まれたときの約十倍になっている。そんなに大きくなるまで何杯ご飯を食べたかはわからないが、たぶん最初のころの桃太郎と同じようにぐんぐん大きくなっていったのだろう。(身近な人に取材する)
母に聞くと、ぼくは小さいころ、自分から言葉をしゃべろうとせず、まるでお地蔵さんのようにいつもにこにこ人の話を聞いているだけだったそうだ(「まるで」という比喩は文章を個性的にする)。母は、そのことを少し心配していたらしい。たぶん、そのときの母の気持ちは、いつまでも食べて寝るだけの桃太郎を見ておじいさんやおばあさんが感じた気持ちと同じではなかったかという気がする(「たぶん」という推測は自然と感想になる)。
▼3日目
やがて成長した桃太郎は、犬と猿とキジを連れて鬼を退治に出かけた。犬は噛み付き、猿は引っかき、キジは目を突っつき、桃太郎は鬼を投げ飛ばした。(物語の終盤から引用する)
ぼくは、この戦いぶりを見て、ふとぼくたちのサッカーチームを思い出した。サッカーには、もちろん、噛み付きや引っかきはない。まして目を突っついたりしたらすぐに退場だ。しかし、足の速い次郎君、シュート力のある和田君、ピンチのときでもみんなを笑わせるケンちゃんなど、ぼくたちのチームは、それぞれの得意なところを生かす点で桃太郎のチームと似ているのではないかと思った。
このことを父に話すと、父は、こんなことを言った。
「桃太郎がいなかったら、鬼には勝てなかったけど、桃太郎が四人いても、やはり鬼には勝てなかっただろうなあ」(長い会話をそのまま書くと味が出る)
ぼくは最初、桃太郎だけが主人公で犬や猿やキジは脇役だと思っていたが、次第に全員がそれぞれの役割で主人公なのだと思うようになった。どうしてかというと、みんなそれぞれの長所があり、その長所でお互いの短所を補い合っているからだ(「どうしてかというと」などの接続語を使うと感想も長くできる)。(結びは、本の主題に関する感想を書く)
▼4日目
鬼を退治し、宝物を持って村に帰った桃太郎は、それからどうしただろうか。きっと、もう鬼の来ない平和な村で、豊かな自然に囲まれて楽しく過ごしたにちがいない。おばあさんが洗濯をしているきれいな川の横で、犬や猿とキジと水遊びをしている桃太郎の姿が思い浮かぶ。(書き出しと結びを対応させる)
いま、ぼくたちの街に、桃太郎が戦うような鬼はいない。しかし、ぼくたちの街には、桃太郎が暮らしていた緑の山や青い川もない。もし、桃太郎がいまここにいたら、人間にとって戦う相手は鬼ではなく、きれいな自然を取り戻すことになるかもしれない。そして、その桃太郎とは、たぶんこれからのぼくたちなのだ。(「人間」という大きい立場で考え、自分のこれからの行動に結びつける)
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●「プレジデントファミリー9月号」に特別付録。「作文、読書感想文のテクニック」(復刻版)
https://www.mori7.com/as/1582.html
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7月18日(水)本日発売の「プレジデントファミリー9月号」の特別付録は、言葉の森監修「作文、読書感想文のテクニック」です。
夏休みの読書感想文の宿題に生かせるのはもちろん、公立中高一貫校の作文試験、高校、大学の小論文試験にも使えるテクニックが満載です。
言葉の森オリジナルの指導法で、ほかのどこの作文教室でも教えていない作文の書き方のコツが載っています。
売り切れにならないうちに、お早めにお買い求めください。
プレジデントファミリーのホームページでもご注文いただけます。
http://www.president.co.jp/family/backnumber/2012/20120900/
購入された方は、巻末のアンケートハガキもぜひ出してくださるようお願いいたします。
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英語の勉強法の基本は、国語の勉強法に似ています。それは、問題を解くような勉強の仕方ではなく、まず英文を丸ごと自分のものにすることです。その土台の上に、文法的な知識を身につけていくことです。
英語を自分のものにする方法は、教科書の音読と暗唱です。教科書1ページを繰り返し音読していると、20回か30回読んだところで、全文が暗唱できるようになります。これが英語力の土台になります。
高校入試、大学入試の英語では、長文を読ませてその内容を問うような問題がよく出されます。だから、英語の長文を読む力をつけるとともに、国語の読解力をつけておく必要があります。大学入試の英語では、国語の読解力を要とする部分がかなりあります。
英語の長文を読む練習は、英語の本の読書です。英語の暗唱と英語の読書が、英語の勉強の土台になります。もちろん、入試前の勉強では、入試問題集の長文を読む練習をしていきます。
では、英語は、いつから勉強したらいいのでしょうか。日本人の場合、小1から小3の間に、日本語脳が形成されます。だから、この時期に英語の勉強をしすぎると、日本の発達に問題が出てくる可能性があります。
一方、小4から小6にかけては、外国語を習得する能力が、ちょうど成長途上にあります。だから、小1から小3にかけては、日本語中心の勉強を行い、小4から小6にかけて英語の勉強をするのが理想です。
英語の音声はCDで練習します。日本語による説明の入っていないもの、DVDなど画像の入っていないものが条件です。CDを聴いて練習する場合、上の子が小4以上で、下の子がまだ小3以下であることがあります。すると、上の子の聴くCDによって、下の弟や妹の日本語脳の形成が阻害される可能性もあります。だから、小さい子がいる場合の英語の音声練習は、ヘッドホンを利用することです。
日本語の音声であっても、テレビやビデオやCDがいつもつけっぱなしの環境では、小さい子供の感情面での成長が遅れることがあります。小さい子がいる場合は、テレビやビデオは見たい人だけがヘッドホンをつけて見るという配慮が必要です。なぜテレビやCDにそういうマイナスの影響があるかというと、その子の置かれている状況に関係なく意味のある言葉が流れてくるからです。例えば、気候が穏やかで晴れ晴れとした日なのに、テレビで鳴き声や叫び声が聞こえてくると、小さい子供の感受性は混乱します。おかしくもないのにテレビの笑い声が聞こえたり、それが突然コマーシャルに変わったり、というような変化に、子供は感情的対応することができないので、言語と感情の結びつきを持たない子になってしまうのです。
しかし、小4以上は、もうそういう心配はありません。日本語脳が確立しているので、英語を聞いても日本語脳の発達が遅れるということはありません。また、状況に関係のない音声が流れてきても、事情がわかるので感情面の混乱も起きません。
さて、英語の文章を暗唱する場合、会話中心の文章よりも、説明中心の文章の方が実力がつきます。その点で、現在の中学校の英語の教科書に見られる会話中心の編集には問題があります。
小4から英語の勉強を始めると、まだ単語の意味も文法もわかりません。しかし、ここで勉強的に単語や文法の説明を始めると、日本語的な英語の勉強をすることになってしまいます。英語の勉強は、日本人の場合は特に日本語脳の問題があるせいか、他の国の人が英語を学ぶのとは違った難しさがあります。また、そのため、日本人に有効な英語の勉強法がまだ確立されているとは言えません。しかし、これからの家庭学習では、次のような形が主流になっていくとおもわれます。(つづく)
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算数・数学は、できるとできないの差が大きくつく勉強です。だから、入試の主要科目として利用されているという面があります。
しかし、差がつくというのは、それが人為的な勉強だからであって、決して頭のよしあしに基づくものではありません。算数・数学の勉強は、その学年で習う教科書レベルの問題が百パーセント完璧に解けるというのが第一の目標です。それがまだできていない場合は、1冊の問題集をできないところがなくなるまで繰り返し解く練習をすることです。できない問題が残る原因は、前の学年で習ったことが不十分であるためなので、前の学年に戻って、やはりその学年の問題が百パーセント解けるようにやっていくことです。
家庭学習の基本は、この教科書レベルの問題をすべて、ほとんど考えずに解けるか、考えずに解き方を思いつくかできるようになるまで勉強することです。もちろん、これだけでは受験用の問題には対応できません。
しかし、入試問題についても、勉強の仕方の基本は同じです。1冊の入試用の問題集で、できないものがなくなるまで繰り返し解くことです。
教科書レベルの問題が確実にできていれば、受験用の問題は、高校入試では約2か月、大学入試では約6か月で、最難関校に合格するレベルまで得点を引き上げることが可能です。
ひとつの例は、私(森川林)の経験で、中3の子供の高校入試の数学の問題を見るために試しに自分でやってみたところ、最初はほとんど0点でした。しかし、夏休みの40日間、子供が質問する問題をそのつど解法を見て説明しているうちに、夏休みの終わりには国立の難関高の入試問題でもほとんどできるようになりました。
もうひとつの例は、「小学校からの東大入試戦略」の著者、渡辺由輝さんの体験談です。渡辺さんは、浪人時代、東大合格者が毎年数百名というマンモス予備校に通うことにしました。しかし、その授業が全くわかりません。高校時代は数学にある程度自信があったものの、予備校の入学当初の模試では、後ろから数えた方が早いような順位でした。
そこで、1か月も通わないうちに予備校の数学の授業はやめ、自宅で参考書を1種類にしぼり、その参考書に出てくる問題なら1題残らず解けるように繰り返し練習しました。2学期の中ごろにようやくその練習が終わり、予備校の模試を受けてみると、数千人の受験者中ベストテンに入っていたそうです。
このような例は、たまに聞くことがあります。しかし、あまり一般的でないのはなぜでしょうか。それは、1冊の問題集をすべてできるようになるまで繰り返し解くという勉強法を徹底できない人が多いからです。ほとんどの人は、1冊の問題集が大体できたら次の問題集に移るというような勉強の仕方をしています。だから、なかなか成績が上がらないのです。
逆に言えば、受験前の一時期に、受験用の問題集を1冊繰り返し練習し、その問題集でできない問題がなくなるまで徹底すれば受験の得点力は急速につきます。だから、それまでの普段の家庭学習では、難問にあたって時間をかけるよりも、教科書レベルの問題が百パーセントできるようにしておけば十分なのです。
さて、数学では、できない問題に遭遇したときのやり方で、勉強の能率は大きく変わります。問題を見て解き方を考えて、よくわからない場合はすぐに答えを見ます。そして、解法の流れを自分なりに理解します。理解できない場合は、親や先生に聞きます。問題全体を聞くのではなく、解法の流れの一部を聞くだけですから、聞かれる人はそれほど負担にはなりません。この反対に、できない問題をできるまで考えるというやり方をする人が多いのです。
解法を見て理解できた問題は、理解できた気がするだけで、日を置いてもう一度やるとやはりできないのが普通です。そこで、また解法を見て理解します。しかし、また日を置いてやってみると、またできません。このように、2回も3回もできない問題を繰り返して勉強するというのは、本人にとってはかなり苦痛です。解ける問題をやっていると気分がいいのですが、解けない問題ばかりをやっているとうんざりしてきます。このため、1冊の問題集を百パーセントできるようにするという勉強法は、口で言うのは簡単ですが、実行するのはかなり強い意志がないとできないのです。しかし、できない問題も、4回ぐらい繰り返すころには不思議とできるようになります。1回や2回繰り返すだけではできるようにはなりませんが、4回から5回繰り返すようになると、急にできるようになってくるのです。(つづく)
次は、英語の家庭学習の話です。
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