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あるがままを褒める―作文がなかな書けないときはすぐに電話を( as/1623.html
森川林 2012/09/26 05:39 


 注意しない。直さない。あるがままを褒める。
 これが、子供を伸ばす秘訣です。

 今週行っている作文発表会で、見学に来たお母さんたちは、自分の子供の発表をしっかり褒めてくれたようです。
 注意したり直そうとしたりすれば、そういうところはいくらでもあるはずです。
 しかし、そういうことは、誰でもできます。


 難しいのは、今のあるがままを褒めるということで、特に自分の子の場合は、これは決心しなければなかなかできません。
 しかし、この単に褒めることが子供たちの実力を伸ばしていきます。

 植物になぞらえれば、褒めることは太陽の光のようなものです。
 毎日の読書や音読や対話は、水やりのようなものです。
 太陽の力と水の力で植物はしっかり成長して花を咲かせます。

 直したり注意したりすることは、花が咲いたあとに、その花に注文をつけているようなものです。


 先日、小学校3年生の子で、塾から帰ってくるのが8時過ぎなので、そのあとは何もできないから、作文の勉強は土曜か日曜に時間をかけてじっくりやっているというお母さんの話を聞きました。
 そういうやり方をすると、大抵親子喧嘩になり、親も子もくたびれてしまいます。

 塾から帰ってくるのが8時過ぎというところに問題があるのであって、そんな塾などには行かせずに、家で楽しく読書と遊びと対話をしている方がいいのです。
 そして、そういう毎日の太陽と水やりの積み重ねの上に、作文の勉強は平日の夕方に1時間か1時間半で済ませてしまえばいいのです。

 毎日の積み重ねがあれば、作文はすぐに書けます。
 毎日の積み重ねがない中で、作文だけをうまく書かせようとするから、無理に引っ張ってやらせるような形になるのです。

 ほかの勉強であれば、無理にやらせれば一応できることはできます(長い目で見ると実力はつきませんが)。
 しかし、作文はメンタルな勉強なので、無理にやらせようとすると、ますますできなくなります。
 例えば、子供を叱って、「さあ、今日の『楽しかった思い出』という課題の作文を早く書きなさい!」というようなものです。

 大事なことは、何か月かがんばってやることではなく、長く続けてやることです。
 そのために大事なのが、直したり注意したりせずに、ただ褒めることと毎日の自習を続けることなのです。


※ただし、言葉の森では、子供が作文をなかなか書き出せず、お母さんの手ではどうしていいかわからないときは、教室に電話をすればすぐにその子に追加の説明をするようになっています。
 書けないときにすぐに電話をしてくれればいいのですが、ときどき、親子でさんざん喧嘩をして収拾がつかなくなって電話をかけてくる場合があります。そういうときは、まず子供を立ち直らせるのに一苦労(笑)。
 そして、たまには、お母さんやお父さんに、「今日はもう書かなくていことにして(考えただけで勉強になっているので)、親子で仲直りをしておいしいものでも食べに行ってください」というアドバイスになることもあります。

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森川林 2012/09/21 20:02 



■世界を襲う大きな変化

 子供たちの教育を考える際に、日本の社会の現状がどうなっているかということと、これからの社会がどうなるかという見通しを持つことは、きわめて重要になっています。それは、これまでの社会がある一定の方向に(例えば高度成長経済やその後の停滞した経済のように)長期間続く傾向に動くものであったの対して、これから起こる変化は、もっと激しいものになるからです。
 結論を言えば、これまでの、与えられたものだけをただ消化して安定した職業につくという既定のコースは急減します。そういう社会が今後も続くとしたら、それは現在の利権社会が今後も同じように存続することになります。そのような社会では、これからの国際環境の変化に対応できませんから、結局現在の社会は日本が鎖国でもしない限り大きな変化に見舞われることになるのです。

■グローバリズムの未来と多様な未来

 では、新しい社会はどういうものになるのでしょうか。そこには二つのシナリオが考えられます。そのひとつは、グローバルな競争社会です。国境の壁が今よりも更に徹底して取り払われ、弱肉強食の世界が地球を覆い、すべての国でひとつの言語が人類の共通語となり、やがて強力な単一の君主制とカースト制、つまり身分制が人種を基準として確立するような安定した世界です。問題は、このシナリオがエゴイズムを前提とした、どちらかと言えば人間性の低い人たちによって担われていることです。
 もうひとつのシナリオは、国家や民族や言語の多様性を残したまま、ゆるやかな連帯でつながる平和な世界です。しかし、この第二のシナリオを遂行する中核となる国はまだありません。日本が世界への責任に目覚めない限り、第二のシナリオは発動しないのです。

■日本の文化が対立の焦点に

 そして、この二つのシナリオの対立の最後の焦点となるのが、やはり日本なのです。
 今、世界ではさまざまな地域で民族や宗教や国家間の争いが起こっています。しかし、これからの紛争や戦争は、ある意味でいずれ収集できる性格のものです。それは、多くの紛争が単に相互のエゴイズムによって生まれているからです。エゴイズムの世界は強弱の論理でまとまりやすいのです。
 ところが、日本の場合は性格が違います。日本は、エゴイズムを原理としたばらばらな個人の集まりによって作られた国ではなく、地域や歴史や文化のつながりによって有機的に生まれた国だからです。だから、グローバリズムの広がりと最も根本的にぶつかるのが日本の文化です。
 このために、これからの世界の変化は、現象的には世界の各地で行われながらも、本質的には日本を焦点にして行われることになります。そういう大きな変化の流れがある中で子供たちをどう育てるかというビジョンが必要になっているのです。(つづく)

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