国語力と読書とは関係がないという人がいます。
そう言えるのは、第一に短期間のことについてです。
第二に、読んでいる本が易しすぎる場合についてです。
国語力を建物にたとえると、その建物は、小高い丘の上に建っています。
国語の成績を上げるコツは、短時間で説明でき、ほとんどの子はすぐに成績が上がります。
国語力の建物は、すぐに建つのです。
しかし、問題は小高い丘の方です。
その建物が建っている丘は、その子のこれまでの読書や経験が積み重なってできたものです。
小学生の場合は、大きく言えばそれまでの読書の量です。
読書量が丘の高さになり、それはその上に建つ建物の高さよりも決定的なものなのです。
中学生や高校生になると、丘はだんだん大きくなります。
それはやがて小さな山のようになり、そこに、裾野、中腹、山頂などの区別ができるようになります。
易しい本ばかり読んでいると、裾野だけが広がり、中腹や山頂が形成されません。
しかし、易しい本がよくないというのではありません。
易しい読書の裾野があるからこそ、中腹や山頂につながる道ができるからです。
山頂近くの読書とは、入試問題の国語の文章と同じぐらいのレベルの読書です。
そこまで読んでいる子は、建物をわざわざ建てる必要がないぐらい、読書力だけで国語力をカバーできるのです。
昨日の「子育て講座」は、読解力のつけ方についてでした。
そこで出された質問のひとつが、上の「国語力と読書は関係があるか」ということでした。
約1時間、実際の国語問題をもとにして長々と話をしたので、聞いているお母さん方は眠かったと思います。
でも、このわずか1時間ぐらいの説明を、子供の実際の国語のテストにあてはめて話してあげると、すぐに成績が上がるのです。
その効果は、中学生や高校生という学年が高いほど顕著です。
それは、既に小高い丘ができている年齢なので、建物の高さがすぐに国語の成績につながるからです。
ただし、その場合でも、全体の高さを決めるのは、丘の高さと建物の高さの合計です。
だから、第一に読書、第二に読解力をつけるコツという順番なのです。
言葉の森作文ネットワーク
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国語の読解問題の解き方のコツを身につけるには、子供が解いたものを親も一緒に解いてみることです。
そして、選択問題については、なぜその答えが正しくて、それ以外の答えが正しくないかを理詰めで説明してみることです。
このときに大事なのは、なぜそれ以外の答えが正しくないかの方です。
つまり、合っていることが大事なのではなく、間違っていないということが大事なのです。(これが消去法の解き方)
しかし、問題を解いていると、親でも説明できないものが出てきます。
そのときはどうしたらいいのでしょうか。
親の友人に聞いてみるというのでもいいのですが、基本的には、その問題はできなくてもいい問題だと考えればいいのです。
日本語を何十年も使っている大人が説明できない国語の問題は、できなくてもいいか、答えが間違っているかのどちらかです。
実際に、生徒がときどき持ってくる正答率の低い国語の問題の中には、答えがおかしいというものもかなりあります(笑)。
この考えをもっと広げると、国語以外の勉強についても、同じことが言えます。
社会生活を立派に営んでいる大人が教えられない勉強は、もともとする必要のない勉強です。
少なくとも、小中学校の義務教育の間の勉強は、親が教えられる範囲までのものを徹底することに力を入れることです。
そして逆に、社会生活を送るために必要なことで、学校や塾では教えていないことがあります。
それを教えるのが、親子の対話です。
勉強は、受験のためにするものではなく、よりよい人生のためにするものです。
この原点を忘れないようにしていきましょう。