ログイン ログアウト 登録
 Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 1627番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/12/5
家庭学習のすすめ―解く勉強より読む勉強で学力・作文力がつく as/1627.html
森川林 2012/10/04 09:50 



●いま起きている教育からの疎外

 子育てで大事なことはいくつもあります。勉強も遊びも躾(しつけ)もバランスよくやっていかなければなりません。だから、どれがいちばん大事かということはありません。しかし、どこにいちばん時間がかかるかということは言えます。

 子育てでいちばん時間がかかるのは学力をつけることです。だから、家庭の役割は、子供に勉強させることにあります。

 特に、小中学校の義務教育においては、家庭学習の役割は重要です。しかし、多くの家庭で、いま、家庭が子供の教育から疎外されるような現象が起こっています。

 例えば、子供が学校から持って帰ってきたテストの点数が悪いとき、そのテストの中身を見て家庭でできる対策を考えるのではなく、点数だけを見て、その点数を上げてくれる塾や家庭教師を探すという発想をしてしまう家庭がかなり多いのです。

 この最初の出発点が大事です。というのは、いったんどこかの塾に子供の勉強を任せると、今度はその塾から持って帰るテストの点数が、これまでの学校のテストの点数に取って代わるだけになることも多いからです。

 家庭では、テストの点数を見て、「よくできたね」と褒めたり、「もっとがんばりなさい」と励ましたりすることはありますが、何ができて、どれをこれからがんばればいいかという肝心の教育の中身まで話が進みません。教育の中身を塾に任せているために、家庭が教育から疎外されてしまうのです。


●勉強の中心は理解を定着させること

 勉強の中身のいちばん重要な部分は、自分で読み、自分で解き、自分なりに納得した上で反復し定着させるという時間のかかる部分です。学校や塾で授業を聞くとか、与えられた教材で問題を解くとかいう部分は、勉強の表面的な部分なのです。

 学校や塾でやった問題できなかったところがあれば、それを自分なりに理解し定着させるという作業が必要になります。しかし、学校や塾では、できなかった問題を理解できるように説明することはできますが、その理解を定着させることまではなかなかできません。理解をくりかえし定着させることができるのは家庭しかないのです。

 ところが、塾から家庭に、家庭学習として何をどれだけやったらいいかという指示は普通はないので、家庭では子供に何をさせたらいいのかがわかりません。これが何度も言うように、教育からの疎外です。

 家庭でせいぜいできるのは、全員一律に与えられた宿題をやることです。しかし、本当はその子のできなかったところだけを定着させることが大事なのに、できることもできないこともすべて最初からやるという宿題が多いために、時間ばかりかかって成績が上がらないという状態になりがちなのです。


●教育の中身のブラックボックス化

 この無駄で効率の悪い勉強に耐えた子は、それなりに成績が上がりますが、その分、読書をしたり、遊んだり、自分の好きなことに熱中したりする時間がなくなります。勉強以外の生活が乏しい子は、学年が上がるにつれて勉強に対する意欲が低下する傾向があります。

 これも、すべて小学校低中学年の時期に、勉強を塾などの外部の機関に任せてしまったことから来ています。いったん他人に任せてしまうと、その中身はブラックボックスになり、テストの点数という結果しか見えなくなります。低中学年ではブラックボックスがまだ小さいので、中身を見ようと思えば見られますが、高学年、中学生になると、家庭では、学校や塾で何をどう勉強しているのかがだんだんわからなくなります。

 実は、中学生までの勉強の中身は、大して複雑なものではなく、大人なら少し本気になって取り組めば誰でもわかるものばかりです。しかし、いったん外部の機関に任せてしまうと、その中身に関与することができなくなるのです。


●学校や塾と家庭との正しい関係

 今の学校は、異なる家庭環境の生徒を一斉に教える形で運営されています。昔の日本は、家庭環境に共通性があったので、こういう一斉指導が可能でしたが、今は家庭環境の差が大きくなり、一斉指導の焦点からはずれる子が増えています。すると、先生は生徒に理解できるように説明することが中心になり、勉強で最も肝心な定着の部分がおろそかになります。そして、定着が不十分なまま学年が上がると、今度は理解も十分にできないようになってきます。この定着と理解の不足が、テストの点数の結果となって現れます。

 しかし、そこで塾や家庭教師に任せるようになると、塾や家庭教師は毎日見るわけではなく、週に何回かという形がほとんどですから、結局そこでも理解と定着の不十分なところは残るのです。


 では、どうしたらいいのでしょうか。

 第一は、学校や塾がそれぞれの生徒に応じた家庭学習のメニューを作ることです。

 第二は、その家庭学習の中身を、問題を次々に解かせるプリント学習のようなものにせず、理解と定着を目指した読む学習(又は繰り返す学習)にすることです。

 第三は、家庭が、勉強の定着は学校や塾で行うものではなく、家庭で行うものだと自覚することです。


●続けやすいが力のつかないプリントを解く学習

 言葉の森の作文の勉強は、他の教室の勉強とはかなり違うと思います。それは、家庭の学習とセットで行うようにしているからです。

 他の教室で勉強を行う場合は、次のような形が多いと思います。

 まず、いろいろなプリントが送られてきます。子供はそのプリントを解けばいいので、簡単に勉強ができ、親も手間がかかりません。

 しかし、このプリント学習は(算数の場合は勉強の中身が問題を解くことなので意味がありますが)、国語の場合は、できることもできないことも同じように解くだけなのでほとんど意味がありません。

 そして、プリントだけの学習は、子供が楽にできる問題でないと長続きしないので、結局できることを何度も同じように繰り返すという意味のない勉強になってしまうのです。これは、勉強ではなく、勉強らしい外見の手作業です。

 しかし、このプリント学習のような勉強に効果がなかったとわかるのは、かなりたってからです。それまで無駄な回り道をすることになります。


●続けにくいが力のつくテキストを読む学習

 これに対して、言葉の森の家庭学習は次のようなものになります。これは、理想の形なので、ここまでできていない家庭も多いと思いますが。

 まず、毎日朝ご飯の前に、課題の長文を1編音読します。そして、暗唱長文の一部を暗唱します。時間としては15分ほどです。

 夕方は、必ず読書の時間を確保します。

 そして、週に1回、次の週に書く作文、又は感想文、又は読んだ長文の説明を、子供が親に説明します。

 お父さん、お母さんは、その説明を聞き、似た話を話してあげることによって子供の理解を深め、題材を広げます。

 子供は、この家庭での対話をもとに、次の週に作文に書くことを簡単な構成図としてメモしておきます。

 プリントのような形に残るものがないので、最初のうちは親が毎日子供に声かけをしてやらせる必要があります。しかし、形のないものでも決めたことは毎日やるという習慣が子供の生活に定着すると、ほかの勉強も躾もほとんどがうまく行くようになります。というのは、生活の中で大事なことの多くは、プリントのように形には残らないものだからです。

 言葉の森の家庭学習の難しいところは、親も頭をしぼって考えなければならないことです。それは、子供に、作文の課題や感想文の長文に関する似た話をしてあげるときに必要になります。しかし、この親子の対話が、子供の思考力や表現力を育て、家族が共有できる時間を知的で充実したものにします。

 親子の対話を身のあるものにするためには、親が片手間に子供に似た話をしてあげるのではなく、本腰を入れてじっくり対話を楽しむという姿勢になることが大事です。片手間にやろうとすれば、かえってそのことが負担になりますが、じっくり楽しもうという姿勢で取り組めば、その対話が親にとっても子供にとっても、ほかでは得られない充実した時間になるのです。


●手間のかかる分だけ実りがある

 一方は、配られたプリントをこなす手のかからない家庭学習、もう一方は、形の残らないしたがって親の声かけが必要な音読や暗唱や読書や対話の家庭学習。

 楽に続けられるのは、プリント学習の方です。しかし、1年間やってみて、ほとんど力のついていないことがわかると思います。

 形の残らない音読、暗唱、読書は、最初のうちは親の働きかけが必要です。また、風邪で自習を休んだり、旅行で自習を休んだりしたときは、再開させるときにまた親の働きかけが必要になります。よくここを誤解して、元の生活に戻ったらまた子供が自動的に自習を始めることを期待する人がいますが、そういうことはありません。中断したら、また外からスタートさせることが必要なのです。

 また、対話の家庭学習では、作文や感想文の似た話を考えてあげるために、親も子供の話にじっくりつきあう姿勢が必要になります。

 しかし、そうして苦労した結果が、1年たつと大きな実りになっているのです。


●親の仕事は、実際の仕事と子供の教育

 よく仕事が忙しいので、子供の教育まで手が回らないという人がいます。しかし、親の仕事は、実際の仕事と子供の教育の二つです。

 親が将来年をとって働けなくなったとき、面倒を見てくれるのは国でも年金でもありません。頼りになるのは、自分の育てた子供か、兄弟や親戚、又は子供がわりに育てた弟子などです。人類の歴史のほとんどは、こういう血縁地縁関係によって支えられてきました。

 もし、自分の子供が勉強も仕事も嫌いで、自分で働くことをしなかったら、親の老後の負担は倍加します。そう考えると、子育ては、勉強だけできればいいのではなく、勉強も体力も人柄もすべてバランスよく育てていく必要があります。つまり、いい学校に入れることが子育ての目標なのではなく、いい社会人に育てることが子育ての目標です。そして、いい社会人になるために、勉強が必要だという関係になっているのです。

 そう考えれば、教育は学校や塾に任せるものではなく、第一に家庭で責任を持って取り組むものになるはずです。その家庭教育の方針を肉づけするものとして学校や塾があるのです。

この記事に関するコメント
コメントフォームへ。

のりパン 20121005  
高校1年男子の母親です。fbで言葉の森を知り、毎日コメントを楽しんでいます。
今回は相談なのですが、息子は文字を書くことが嫌いで、特に意見・感想を書かされるとまことにお粗末な単語を一つ二つ並べて終わり。小さい時から本は嫌いではなく良く読むのですが、「書く」となると全く手が進みません。
言葉の森HPを見ると、小学生対象のようですが、息子にも何か良い事がないかとメールさせていただきました。
このままでは、進学にしても社会にでても自己表現が乏しくて他人から理解されにくい人間になるのではないかと心配しています。
中学3年のとき不登校になり、今は通信制のサポート校に通っていますが、塾などには行きたくないといい今は何もすることがなく日々ゲームなどをして時間をつぶしています。

なにか良い方法があれば教えていただきたいと思います。


森川林 20121005  
 のりパンさん、こんにちは。

 言葉の森は、幼長から高校生や社会人の方まで勉強しています。
 本を読むことができるのに文章が書けないというのは、文章を書くことに対する心理的な抵抗があるためですから、書けるようになるのは早いです。
 無料体験学習が2回できますから、それを申し込まれるといいと思います。
 お電話でご相談いただいても結構です。


同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
家庭学習(92) 言葉の森の特徴(83) 

記事 1626番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/12/5
デフレの時代は、創造の時代(facebook記事より) as/1626.html
森川林 2012/10/02 20:03 



 もらうより、あげる方が楽しい。
 買うより、売る方が楽しい。
 教わるより、教える方が楽しい。

 これがデフレの時代です。

 供給が常に需要を上回るので、消費はどんどん楽になりますが、しかしその分雇用はどんどん厳しくなります。

 そういう時代に生き残るには、まず自分が今の仕事を離れても、他人に提供できる何かを持つことです。
 つまり、他の人に、あげるもの、売るもの、教えるものがあれば、それがこれからの時代の生き残りの切り札になります。

 それは、子供の教育も同じです。
 今の社会の枠にあてはまる人間になるだけでなく、自分から何かを作り出すことのできる人間になることが子供たちのこれからの勉強の目標です。
 なぜなら、今の社会の枠組になっているものは、デフレの時代に対応するために、これからますます、国外化、自動化、機械化していくからです。

 楽になる物やサービスの恩恵を受けながら、自分が提供できる新しい文化を創造することが、これからの時代の生き残り戦略です。



 今日もさわやかな日本晴れ。
 収穫の秋、食欲の秋、読書の秋です。

 facebookグループ「読書の好きな子になる庭」では、子供向けの本のおすすめを募集しています。
http://www.facebook.com/groups/118437524908264/

この記事に関するコメント
コメントフォームへ。

同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
facebookの記事(165) 
コメント51~60件
……前のコメント
低学年の作文の 森川林
低学年の作文でいちばん大事なことは、題材選びです。 その題 3/3
記事 5001番
作文における書 森川林
 作文で大事なのは中身です。  しかし、中身はなかなか進歩 3/2
記事 4999番
これからの新し 森川林
 今はまだ、勉強のゴールは、大学入試になっています。  大 3/1
記事 4996番
上手な作文とそ 森川林
 上手な作文とそうでない作文の差は、語彙力の差です。  そ 2/29
記事 4997番
ChatGPT 森川林
 創造発表の勉強のネックになるのは、個性的なテーマであればあ 2/28
記事 4955番
夏期講習でのデ 森川林
 国語の勉強の方法としていちばんいいのは、ディスカッションで 2/25
記事 4993番
教育論に欠けて 森川林
 ボタンの掛け違いは、最後になるまでわかりません。  最初 2/18
記事 4981番
教育論に欠けて 森川林
 しっかり勉強して、いい学校に入り、成績を上げて、目指す大学 2/18
記事 4981番
創造発表クラス 森川林
創造発表の勉強は、知識的にやるのではなく、実験的にやることが 2/5
記事 4966番
齋藤孝さんへの 森川林
私は、ブンブンどりむのようなレベルの低いものは誰もやらないだ 2/4
記事 4964番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
WinSCPの 森川林
ダウンロードとインストールは、特に問題なく、次々と進めて 12/4
プログラミング掲示板
Re: 標準新 森川林
 これは、確かに難しいけど、何度も解いていると、だんだん感覚 12/2
算数数学掲示板
標準新演習算数 あかそよ
3の1はできました。 2は、答えを見るとなんとか理解できま 11/23
算数数学掲示板
2024年11 森川林
●サーバー移転に伴うトラブル  本当に、いろいろご 11/22
森の掲示板
現在森リンベス 森川林
このあとの予定。 ・森リンベストを直す(直した) ・森リ 11/20
森川林日記
Re: 入会手 言葉の森事務局
 お世話になっております。  弟さんのみご入会が1週間 11/15
森の掲示板
入会手続きにつ やすひろ
お世話になっております。 個別掲示板を開けませんので、ここ 11/15
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習