facebookに公立中高一貫校の受験問題の話を書きました。
その続き。
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「(ゼニゴケの写真とスイレンの写真を見せて)ゼニゴケがスイレンよりずっと小さな植物だということが分かる写真にするためには、どのような工夫をすれば良いですか。」
「東京スカイツリーの展望台からの眺めを想像して、その様子を俳句のように五・七・五の十七音で表現しなさい。」
「日本の人口構成をふまえて、今後の日本の輸送をどうしていったらよいか、あなたの考えを書きなさい。」
こういうのが、公立中高一貫校の受験問題です。(東京都立の公立中高一貫校のうち3校の問題から)
普通の試験で連想するような漢字や計算の問題はひとつもありません。
計算が必要としても、+-×÷ができて、A:B=a:bの考え方ができれば解けるようなものだけです。
文章を読む力と自分で考えて書く力があれば誰でもできる問題です。しかし、考える力がないと書きようがありません。
こういう学力は、問題集を解くような勉強ではつきません。
では、どうしたら、こういう問題に答えられる学力がつくかというと、ひとつは、普段の家庭の対話です。
もうひとつは、勉強を楽しむ姿勢です。
そして、それらの基礎としての文章を読む力と、考えたことを書く力です。
こういう勉強なら、子供も楽しくできるし、親も一緒に楽しめます。
小中学生のころは、こういう勉強でいいのです。
いろいろなことを詰め込んでがんばる勉強は、高校生になってからやっていけば充分間に合います。
言葉の森では、今、そういう小学生からの楽しくできる家庭学習を計画しているところです。
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ほかにどんな問題があるかというと、こんな問題です。
■A池とB池のスイレンの花のこみ具合をあなたはどのように比べますか。
●答えは、
まず、それぞれの池のスイレンの花の数を数える。
次に、スイレンが生えているところを正方形の数として数えそれを面積ととする。
花の数を面積で割ったものが、それぞれの池の混み具合。
(都立両国中 2012年の問題より)
■図1にア⇔イ操作を行うと図2になります。
では、図2に何回かの操作を行って図3にしたいときどんな順番で行えばよいですか。
●答えのひとつは、
1⇔2、2⇔3、イ⇔ウ
(都立小石川中2012年の問題より)
こういう問題を、家族で一緒にクイズを解くような感じでやっていけば、休日の夕方の楽しいレジャーになります。
更に、「同じような問題を作ってみようか」とか、「同じように新しいパズルを考えてみようか」となれば、もっと創造的です。
例えば、太って背が低い人のシルエットとやせて背が高い人のシルエットをくらべて、どっちがシルエットの面積が多いかという問題などが作れます。
また、9つのマスを16個に増やしてみるとか、立体にしてみるとかすれば、もっと頭を使う問題が作れます。
こういう勉強は、一斉授業の詰め込みではできません。
たっぷり時間のとれる家庭での学習で、本人が納得するまで考える中で初めて身についてくるのです。
言葉の森では、こういう家庭学習の交流の場をホームページの中に作っていく予定です。
そこで、公立中高一貫校の過去問から毎週一つテーマを選び、家庭でどう取り組んだらいいかという案を提供します。
これは、受験生でなくても参加できます。小学校低学年の子の保護者でも、低学年に合わせて生かしていくことができます。
春にスタートする予定ですので、もうしばらくお待ちください。
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言葉の森は30年前から、作文だけに絞った勉強を続けてきました。
その間に、大学入試や高校入試や中学入試などさまざまな作文小論文の試験の指導をしてきました。だから、どんな問題が出ても、わかりやすく書き方を説明することができます。
実際に、大手予備校などで小論文の指導を1年間受けていても、自分の書き方に今ひとつ納得できなかった高校生が、言葉の森に来てすぐに書き方のコツがわかり志望校に合格したという例がよくあります。それは、大学入試だけでなく、高校入試でも、中学入試でも同じです。
近年、公立中高一貫校を設置する自治体が増えてきたので、言葉の森に来る生徒も、公立中高一貫校を目指す人が多くなってきました。
しかし、言葉の森はこれまで、国語、算数、理科、社会の受験指導のようなことはしていませんでした。だから、作文は言葉の森で、教科の勉強は塾でという生徒もいたのです。
言葉の森が、なぜこれまで教科の勉強を指導しなかったかというと、作文以外の勉強というものは、本来答えのある勉強ですから、生徒自身の力でできると考えていたからです。
昔の小中学生は、塾などに行かず、みんな学校と自宅で勉強しているだけでしたが、学力的に何も問題ありませんでした。また、今でも、小中高と塾にも予備校にも行かず、学校と自宅だけの勉強でゆとりのある学校生活を送り、高校生の最後の1年間の受験勉強だけで難関大学に合格する生徒もいます。
塾や予備校をうまく利用するのは悪いことではありません。自分ひとりで自宅で勉強するよりも、勉強に対する強制があるのでやりやすいという面もあります。また、合格可能性を判定するための模試は、塾や予備校の模試に頼らざるを得ません。
しかし、そういう他人に依存する勉強に慣れていると、肝心の高校生ぐらいになってからも自分で勉強する仕方がわからず、他人に教わる勉強に頼るようになります。
自分で工夫して行う勉強は、大学生や社会人になればますます重要になりますが、大人になっても人に教わる姿勢のままだと、そういう勉強スタイルがずっと続いてしまうのです。
そこで、言葉の森では、この春から独自のやり方で、国語、算数、理科、社会の受験に対する勉強もアドバイスすることにしました。
しかし、そのやり方は、先生が生徒を引っ張って教えるような方法ではありません。生徒が家庭で自分のペースで自学自習をしながら実力をつけていくという方法です。
週に1回の作文指導はそのままですから、この全教科の勉強は、希望者がウェブを利用して自宅で行うような形になります。
どうしてウェブを利用する形にするかというと、勉強を進めていく上で疑問に思った点や迷った点は、すぐに相談できるからです。
公立中高一貫校の入試に出てくる適性検査(国算理社の総合的な問題と作文の試験)は、年々難度の高いものになっています。しかし、公立の学校ですから、特別の受験勉強をしなければ解けないような問題は原則として出ません。教科書の基本的な知識をもとにして自分なりに考えて文章化するという、どちらかと言えば東大型国立大型の問題が中心です。
だから逆に、実際の受験をしない生徒でも、公立中高一貫校の試験に答える力をつけるために勉強するという目標を持つことによって確実に実力がつきます。
人気のある公立中高一貫校で10倍以上の倍率のあるところは、もともと合格する生徒の方が少ないのですが、合格してもしなくても勉強したことが中学に入ってからの勉強に生かすことができます。
合格は目標ですが、そのために必要以上の勉強をするのではなく、むしろ小学生時代に勉強の目標ができるいいチャンスだと考えておくぐらいでいいのです。
では、公立中高一貫校の受験のための勉強は、家庭でどのように進めていったらいいのでしょうか。(つづく)
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facebookに次のような記事を書きました。
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勉強というと、答えを隠しておいて、問題を解かせて、合っていたとかいないとかやる形が多いのですが、本当は、問題も答えも両方すぐに見られるようにして、「なるほど、こういう問題でこういう答えになるんだ」と考えさせた方が、ずっと密度の濃い勉強ができます。
だから、高校生用の問題集などでは、答えが問題のすぐ横に書いてあるものも多いのです。
しかし、小中学生の問題集は、答えがすぐには見られないようになっています。学校や塾で使っている問題集の中には、答えがはずしてあるものもあります。
また、答えがついている場合でも、解説が簡単すぎて自学自習に向いていないものもよくあります。
解かせる勉強から、読ませて考えさせる勉強に、という工夫がこれから必要になってきます。
公立中高一貫校の問題などを見ると、勉強のできる子というよりも、読んだり考えたり書いたりすることが好きな子が、楽しんで解くような問題が中心です。
時間内に解くという制約があるので試験になっていますが、時間制限がなければ、子供が楽しめる知的な読み物という感じの問題です。
これからの時代は、こういう考えることが好きという学力が必要になってくるのだと思います。
「え、なあに。私のこと呼んだ?」
「いや……別に」
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最後のカンガルーは、おまけです(笑)。
では、公立中高一貫校の受験に対応できるような考える力はどのようにしてつくのでしょうか。
高学年になってからの勉強ももちろん大切ですが、もっと大切なのは小学校中学年までの勉強です。
まず、低中学年のころまでに、読むことが好きという姿勢を作っておくことです。
言葉の森の教室で、生徒に保護者向けのプリントなどを渡すと、すぐにそれを読み出す子がいます。そういう子が、読むことが好きな子です。
その反対に、字がたくさん書いてあるものを見ると、すぐにしまってしまう子もいます。そういう子は、読むのがあまり好きでない子です。
次に、考えることが好きな子にしておくことです。そのためには、詰め込みの勉強はかえってマイナスです。
小さいころから問題を解くような勉強をたくさんさせられている子は、勉強という言葉の響きにいい感情を持っていません。
そういう子は、問題をじっくり考えて解くよりも、早く答えを出して正解にしたいという気持ちを持ちがちです。
考えることを好きにするには、勉強の量を増やしすぎないことです。
そしてもうひとつは、書くことが好きな子にしておくことです。
これは、書く機会を増やすことと、書いたものをいつも褒めることです。
今の教育環境では、文章を書く機会はあまり多くありません。そして、たまに書くと、書き間違いを注意されたり直されたりします。
書き間違いは、読む量がまだ少ないために起きていることなので、作文の上だけで性急に直そうとすると、書くことが自体が苦手になってしまうことが多いのです。
こういう、低中学年の、読む力、考える力、書く力の基礎の上に、高学年の受験対策があるのです。
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今日のfacebook記事に、次のような記事を書きました。その追加の話です。
====facebook記事より====
早く終わっていいことがあるなら、早く終わるけど、
早く終わって新しい勉強が追加されるだけなら、ゆっくりやっていこう。
そういうことを子供のころから繰り返していると、集中せずにやることが身についてしまいます。
集中力をつける一つの方法は、小さいころからお手伝いをさせることです。
お手伝いのような本当は面倒なことを毎日繰り返しやっていると、手際よく仕事を済ませる習慣が身につきます。
しかし、現代のような電化社会では、苦労してお手伝いするようなことがあまりないので、そこは工夫が必要です。
集中力をつけるもう一つの方法は、勉強に関しては、時間で計らず分量で量ることです。
その点、お手伝いは、時間ではなく分量で量るのは自然だからいいのです。
○時から○時まで勉強するというのではなく、○○を○○ページまでという形にすれば、自然に早く済ませるようになります。
ただし、早く済んだから新しい勉強を追加させようとしてはだめ(笑)。
何度かそういうことをすると、子供は意地でもゆっくりやるようになります。
子育てにも、それなりの作戦が必要なのです。
いちばんいい基準は、自分がもし子供だったらそうされたらどうかと考えることです。
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その追加。
集中力をつける第三の方法は、目標を明確化し、それをできるだけ数値化し、それをできればグラフ化し、自分の目標と達成度が自分自身にビジュアルに見えるようにすることです。
他人に見せたり他人と競争したりするのではなく、自分の目に見えれば、人間は自然に集中してやるようになるのです。
しかし、今の社会では、こういう工夫があまり教えられていません。
昔の親の世代は、生きるのに必死だった時代を経ているので、自然に集中して仕事をする癖がついていますが、子供の世代は生まれたときからそれなりに豊かだったために、集中しないで生きる癖がついているのです。
そのため、子供が勉強をなかなかしないことに親が業を煮やすと、すぐ塾に行かせるようなことを考えます。
塾に行けば、勉強の場所と時間が強制されるので、嫌でも勉強するようになりますが、それは逆に自分で工夫して勉強する機会を失うことにもなるのです。
社会に出れば、そういう塾に行くような外からの強制はありません。
みんな、自分で自分を律して生きています。
だから、子供のころから、遠回りのように見えても、自分で自分を励まして勉強したり仕事をしたりする機会を作っていくといいのです。
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