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親子の対話の中心は、親の体験談 as/2123.html
森川林 2014/04/15 07:05 



 子供が毎日長文を音読して、週に1回その長文の内容をお父さんお母さんに説明します。そして、次の週の課題とともに、その長文の内容について親子で対話をします。これが、言葉の森の音読と対話の予習です。

 このときに対話の中心となるのが、お父さんお母さんの体験談です。

 親子の対話が進まない原因のひとつは、親が体験ではなく知識や意見を披露してしまうことです。子供は、両親の実際の体験にはとても興味を持って聞こうとします。しかし、両親の知識や意見には、あまり関心を示しません。

 面白い体験談を話すためには、その場の思いつきで話すだけでなく、ある程度の準備も必要です。子供の次回の課題や、次回の長文をもとに、どんな体験談が話せるか考えてみるのは、やってみると意外と面白いものです。作文の勉強を支える親子の対話として、お父さんやお母さんの面白い体験談をできるだけ用意するようにしてください。

 言葉の森のオープン教育の掲示板に「森の予習室」があります。その学年別の掲示板には、体験談のヒントになる例がよく載っています。参考にしていただけるとよいと思います。 

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森川林 2014/04/14 06:42 


予想外のランニング(小5の部より)
らめき
「どこまで行くの?」
「河口まで。」
「えーっ。」
ぼくの学校では毎年二月、近くの川沿いを走るマラソン大会がある。走ることは好きだったが、マラソンのような長距離を走ることは、あまり好きではなかった。そんなぼくをきたえようと思ったのか、お父さんが一緒にランニングをしようと誘ってきた。とても寒い日だったのであまり気分は乗らなかったが、学校のマラソン大会が近いということもあり、練習のつもりでランニングをしようと思った。お父さんはマラソン大会で走るコースを下見しようと言っていた。お父さんは走ることが大好きでいつも休みの日には必ずジムに行って走っている。耳がちぎれそうなくらい寒い日だったが、しばらく走ると体がポカポカして、だんだん暑く感じるようになった。マラソン大会で走る予定のコースを過ぎてもまだ、お父さんは走り続けていた。ぼくはいやな予感がした。
 予感は的中した。途中、休けいを取りながら走り続けるお父さんについて行った。ここではぐれたら、一人で家に帰れないと思い必死だった。ついに、マラソン大会の予定コースをはるかに過ぎ、河口に到着した。ぼくはヘトヘトだったが、さらにお父さんは埋め立て地の方へ続く道を進んでいった。ぼくはその時、足が棒のようなっていた。足の感覚がなくなり、もうだめだと思った時「足湯」という文字が目に入った。さすがにお父さんも疲れたのか足湯で休けいすることになった。少し熱めのお湯に足を入れるとジワーっと温かさが伝わってきて、いやされてきた。ぼくにとってその時の足湯は、まるで砂漠の中のオアシスのようだった。結局、三十分のつもりで出かけたランニングが三時間の長距離マラソンになってしまった。
 お母さんが通っていた小学校でも、毎年冬になるとマラソン大会が開かれていたそうだ。走ることが苦手なお母さんは毎年この季節になると、ゆううつな気分になっていたそうだ。数回転校を経験したお母さんだが、どの学校でもマラソン大会はあったらしい。学校の運動場をただひたすら何周も走り続ける大会。大きなグラウンドを貸し切ってする大会。学校の周囲を走る大会。どれも辛い思い出だそうだが、特に学校の周囲を走る大会ではその学校が山の上にあったため、かなりの坂を上ったり下ったりしたらしい。ゴール直前には「心ぞう破りの坂」と呼ばれる場所もあったそうだ。マラソン大会は嫌だったが、ゴールした後は清々しい気持ちになり達成感でいっぱいになったと言っていた。
 今年もマラソン大会の季節がやってきた。お父さんと走ったおかげで学校のマラソン大会のコースが短く感じられる。「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」というが、今回に限っては良い結果につながった。今年は、十位以内を目指すため、
「河口まで走ろう。」
今度はぼくからお父さんを誘ってみようと思う。

理想と現実(中2の部より)
れたす
 私の通う学校では、「LIFE」という総合的な学習の時間がある。その授業では主に自分の夢について考え、三年間かけて自分の「夢プラン」というものを完成させる。なお、それぞれの夢の膨らませ方は学年によって異なる。たとえば、一年生だったら保護者に話を聞く。また二年生は、職場体験をして、三年生は修学旅行中に自主研究をする。こうして生徒たちは、そのとき出会った人の生き方について学んでいくのである。
 理想を持つことは大切だ。なぜなら、理想を持つことでより生き生きとできるからだ。私が小学校中学年のころ、シール交換と同じようにプロフィールシートを友達に配って書いてもらうというのが流行った。私も、かわいいプロフィール帳を親にねだって買ってもらい、とにかく色んな人にそれを配ったのを今でも覚えている。私は先日、その小学生の頃の思い出が詰まったプロフィール帳を久しぶりに開いてみた。小学生らしい文字で書かれたそれは、とてもロマンチックな内容だった。たとえば、「あなたの夢は何ですか?」という質問には、全員が何かしら回答していて、読んでみるとケーキ屋さんやキャビンアテンダントなどの夢あふれる職業が沢山あった。私はふと、今、これを周りの子に渡したら一体この質問の答えを持っている人は何人いるのだろうかと考えてみた。もしかしたら、ほとんどの人は小学生の頃に書いたような夢の職業から、夢と言えるものなんてないと言って、無回答へ変わってしまうのかもしれない。このように、夢を大きく持ち、またそれを素直に語ることが出来る小学生の方が、毎日を塾や部活などの拘束された時間の中で忙しく生きる私たち中学生よりも、より人間らしく生きることができるだろう。
 しかし、現実を見ることも大切だ。なぜなら、理想ばかり追っていると最後に痛い目に合うのは自分だからだ。私は、中学一年生の時から志望校判定の出来る模試を塾で受けている。一年生のときは、まだ中学校に入ったばかりだったので、名の知れていて漠然と行きたいと思う高校を志望校に設定すれば良かった。しかし、二年生になってからは模試の回数も増え、きちんと考えて志望校を設定しなければならなくなった。なぜなら、どれだけその高校に行きたいと思っていても、そこを合格するだけの学力がなければ落ちてしまうからだ。また公立高校は、私立高校と違って一校しか受けられないのでなおさらである。つまり、これまでは見なくてもよかった「現実」だが、合格を勝ち取るためには自ら凝視しなければならないのである。こうして二年生も終わろうとしている今、まだまだと思っていた高校受験ももう目前に迫っている。そしてこれから、この高く大きな壁を越えようとする過程でますます様々な現実に向き合わなければならなくなるだろう。
 確かに、理想を持つことも現実を見ることも大切だ。しかし、一番大切なのは
「夢があるから行動するのではなく、行動するから夢が生まれる。」
という名言もあるように自分と向き合う時間を持つことである。私は、これから始まる忙しい日々にうもれてしまうことなくうまく自分を保っていきたいと思う。

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