言葉の森の作文指導の特徴は、高校生、大学生、社会人になっても通用する論説文の力をつけることを目標にしています。
しかし、小学校低中学年では、そういう文章はまだ書けないので、その前段階として、身近な生活作文を楽しく書く練習をしています。
小中学生の段階で上手な作文を書くことが目的ではありませんが、小学生のころは、楽しく書いていれば自然に上手な作品が生まれます。
そこで、自分なりによく書けたと思った作文は清書をして、新聞社やコンクールに投稿するようにすすめています。
小学校3、4年生は、子供たちが最も小学生らしいのびのびとした作文を書く時期です。この時期に、誰でも必ず年に何回かは傑作を書きます。
昨年(2014年)は、さまざまなコンクールに76名の人が入選しました。
入選は、子供たちに自信をつけます。どの子も、自分が入選したときの作文はよく覚えています。
よく書けたと思う作文があったら、家庭でお母さんができるだけコンクールなどに応募してくださるとよいと思います。
言葉の森の作文指導の特徴は、構成と表現をあらかじめて決めて書かせることです。
この書き方は、言葉の森が独自に開発したものですから、このように事前に書くことを指定した書き方を指導しているところはほかにないと思います。
この書き方をすると、不思議なことに、どんなに作文が苦手な子でも、すぐに書き出せるようになります。体験学習などで、初めて長く楽に書けたので、本人もお母さんも驚くということがよくあります。
また、指導の目標が決まっているので、先生は子供の作文のよいところを中心に褒めることができます。無理に褒めようと思わなくても、自然に褒めることができるようになるのです。
事前の指導がない作文を書かせると、ほとんどの子は、何をどう書いていいかわからないので途方にくれます。
また、先生は、事前指導がないと、子供が書いた作文をどう褒めていいかわからないので、つい直すところや注意するところが中心になります。
書き方がわからないまま、無理やり書かされて、やっと書いたと思ったら、次々に注意されるというのが、これまでの作文指導でした。だから、作文が苦手な子が増えていたのです。
言葉の森の作文指導では、誰でも自分のペースでしっかり書けます。だから、苦手な子もすぐに書きだすことができ、一方上手な子は更に上手な作文を書くことができるようになります。
苦手な子も、得意な子も、同じように勉強できるのが、言葉の森の構成と項目の事前指導を中心とした作文です。
同じ教材を使っていても、同じ塾に行っていても、同じ先生に教わっていても、子供たちの成績は同じにはなりません。よくできる子とできない子の差は必ず出てきます。
では、その違いはどこから出てくるかというと、それは決して生まれつきの差ではなく、家庭学習を含めた家庭での育て方の差なのです。
しかし、その育て方というのは、なかなか伝えにくいものです。それは、典型的な例というものが、あまり身近にないからです。
その意味で、うまく子育てをした家庭の例は、これから子育てをするお父さんやお母さんの参考になります。
受験は、合否を競う競争という面が中心になりがちですが、同時に子供たちにバランスのよい学力をつけるひとつのきっかけとして取り組んでいくことができると思います。
この本の全体の内容は、それぞれ読んでいただくとして、言葉の森が普段述べていることと共通している点について、主な目次を紹介します。
1章の 3「子どもはとにかく褒めて褒めて褒め倒す」
9「母親の知的好奇心が子どもをつくる」
11「自分の読書は家事よりも優先させる」
3章の22「おもちゃは我慢させない、制限しない」
30「テレビなどの『画面』はなるべく見せない」
7章の55「何よりも読み・書き・そろばんから始める」
56「早期の英語教育は必要ない」
8章の62「お母さんの音読+解説で国語の成績は上がる」
褒めれば、子供は気分よく勉強するので、どんどんはかどります。注意をしたり直したりすれば、だんだん暗くなり勉強が進まなくなります。何しろ褒めることは、褒める方にとっても、褒められる方にとっても健康によいものです。
読書好きな子に育てるには、お母さんが子供の前で本を読んでいる姿を見せることです。「昔読んでいた」というのはだめで、「今もいつも本を読んでいる」というのが大事です。お母さんが、忙しくて本を読んでいる暇がないと言えば、子供も同じことを言うようになります。
テレビは、見る場合でも、1週間の予定を決めて見ることです。食事中は、必ずテレビは消しておきます。見たい人だけがヘッドホンをつけて、外部に音が流れないように見るのが理想です。特に幼児がいる家庭では、テレビはできるだけつけないことです。
小学校低中学年のころの勉強の基本は、第一が読書です。第二は算数が普通にできることです。英語は必要ありません。
国語読解力の中心は、難しい文章を読む力ですが、その難しい文章をどう読むかというと、繰り返し音読することと、その音読をもとに親子で対話をすることです。
その対話も、子供の話を聞くというよりも、お父さんやお母さんが自分の体験談を中心に似た話を楽しく話してあげることです。
親子の対話の際に大事なことは、子供の音読の仕方や説明の仕方を決して注意しないことと、脱線してもいいので何しろ楽しく話をすることです。
家庭で、そういう対話の習慣のあるうちは、まだあまりないと思います。しかし、今の家庭で親子で曲がりなりにも対話の習慣ができるようにしておけば、その子供が親になったとき、今度はもっとたやすく家庭での対話ができるようになります。
親子の対話は、二世代にわたって家庭の文化を作っていくという気長な気持ちで取り組んでいくといいと思います。