ログイン ログアウト 登録
 Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 2302番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/11/22
資本主義を超えたこれからの社会における教育 as/2302.html
森川林 2015/01/31 19:20 


 今の経済体制は、行き詰まりを見せています。まだ、これまでのストックがあるので、その行き詰まりは目に見える形として現れてはいませんが、破綻は水面下で進行しています。

 その原因は、おおまかに言えば、世界中の生産力が世界中の消費力を上回るようになったためです。つまり、需要の減少が、供給の減少につながり、供給の減少が収入の減少につながり、それがまた需要の減少につながるという負のサイクルが生まれているのです。

 資本主義の発展期には、この正反対のサイクルが存在していました。需要が伸びるために供給が伸び、供給の伸びに比例して収入が伸び、それが再び需要に投入され、生活は日増しに豊かになっていったのです。
 発展期の社会では、消費に回らずに貯蓄に回された分は、新しい供給を生み出すための投資になっていました。しかし、そこには次々に生み出される供給をすぐに吸収できる貪欲な需要があったのです。

 現在の資本主義の行き詰まりを解消する方法として考えられている一つは、戦争経済です。もう一つは、地球規模のインフラ整備です。しかし、どちらも一時的な対症療法でしかありません。
 物やサービスの生産については、もはや人類の生産力は、人類の消費力を大きく超えているのです。

 したがって今後、経済の行き詰まりが表面化するときは、株価の暴落、バブルの崩壊、倒産、失業、リストラという経済の急収縮が一気に現れます。もともと実際の需要のないところに生まれていた余剰の供給は、その余剰の分だけ消滅するのです。

 こういう将来の社会の変動を予測する人の中には、既に田舎で自給自足の生活を始めている人もいます。国も会社も年金も給与もあてにならないとしたら、自分の生活は自分の手で守らなければならないからです
 しかし、農業を中心とした自給自足の社会は、当面の経済破綻については防波堤の役割を果たしますが、それがそのまま未来の社会の雛形になるわけではありません。自給自足というのは、結局、破綻に対する避難の方法にすぎないのです。

 新しい社会の基盤は、物やサービスの生産を超えた、新しい原理に根差している必要があります。その原理こそが、人間の持つ創造性です。
 工業として生産される物、商業として提供されるサービスのいずれもが、社会全体の需要に対する過剰な供給力を秘めています。新しいものや新しいサービスが登場するたびに、小さな活況は生まれますが、それはもはや資本主義全体の活性化に結びつようなものではなくなっています。
 消費の拡大は、一時的に経済の拡大につながりますが、それはもはや恒常的に供給の拡大を必要するものではなくなり、じきに再び供給過剰の世界が繰り返されるのです。

 これに対して、新しく生まれる経済の原理が創造です。創造は、需要とも供給とも次元を異にする人間生活の原理です。それは、ある面では需要であり、ある面では供給でもあるのですが、単なる量的な需要や供給ではありません。需要としては無限の需要であり、供給としては対応する需要を必ずしも必要としない自足した供給なのです。

 新しい経済の原理は、この創造を軸として形成されます。その創造の核となるものが人間です。
 未来の社会を論じる人の中には、人工知能のような新しい物や技術の生産が人間社会を切り開くと考える人もいます。しかし、これまでの需要と供給という社会の枠の中にいる限り、物やサービスの生産は、永続的な発展の動因にはならないのです。

 創造を軸とした新しい社会を、今の社会になぞらえて描くとすれば、それは、企業を中心に生産者と消費者が同心円を描く社会ではなく、子供を中心にその子供たちを育てる人々が同心円を描く社会です。
 なぜなら、人間の中でも特に子供たちの成長こそが創造の源泉であり、創造を原理とする社会では、その子供たちを育てることが社会全体の関心になるからです。

 農耕社会では、土地を開墾し農作物を育て、それらを収穫するまでの時間が投資の時間でした。工業社会では、工場を建て人を雇い原材料を仕入れ、それらを生産し販売するまでの時間が投資の時間でした。
 創造社会が完成に向かうと、もはや投資という考え方自体もなくなるのですが、今の工業社会の延長にある間は、投資という仕組みが一時的に必要です。創造社会では、子供たちが成長するまでの時間と、その間の教育や文化が投資の内容となるのです。

 経済の破綻から避難する場としての自給自足経済は、自給自足に留まるかぎり避難の場でしかありません。その経済の中心に、子供たちの創造的な成長を位置づけることによって初めて、新しい社会の原理となるのです。

 子供たちに創造的な教育を行う際の最初の前提となるものが、本質的な教育です。
 これまでの教育は、受験を目的とした教育でしたから、子供たちの間に差をつけるための教育を行っていました。その結果、できる子には無駄な知識を教えることによって創造性を枯渇させ、できない子には自信を失わせることによって創造性を枯渇させていました。

 人間には、本来、できるできないという差を超えた、創造する力が誰にもあります。その創造性を育てる前提となるものが、すべての子供に必要な知識や技能を身につけさせる本質的な教育です。
 それは、かつて江戸時代に、読み書き算盤の教育と言われていたような寺子屋的な教育によって、地域と家庭の中で行われていくものです。(これが今、「寺子屋オンエア」として行おうとしているもので、その機構を「森林プロジェクト」として提供していきたいと思っています。)

 この本質教育の基盤の上に、創造教育が行われる必要があります。
 創造とは、創造する知識や技能という底辺の広さに、創造性という高さを掛けたものとして表されます。
 これからの社会では、特に膨大な知識をいかに速く広く身につけるかということが底辺の広さを決定します。その知識の底辺を広げる教育の一つが、暗唱教育です。そして、創造性の高さを引き上げる教育の一つが、作文教育です。(これが今、言葉の森が作文教育として行おうとしているものです。)

 作文教育は、また、子供たちの教育を地域全体の関心とする媒体ともなります。
 例えば、江戸時代の寺子屋教育における席書きのように、地域においてプレゼン作文発表会のようなイベントが定期的に行われれば、子供たちの関心も、地域の大人たちの関心も、子供たちの成長を点数による成績ではなく個性による創造として見る方向に向かいます。
 こうして、社会全体が、子供たちの成長を軸とした創造の価値を評価する方向に向かっていくのです。

 このような社会を作る最短距離にある国が日本です。そして、日本で作られた創造教育の仕組みは、そのまま世界に広がる可能性を持っています。更に、それは教育の仕組みに留まらず、それぞれの国で新しい社会の仕組みとして広がっていくのです。
 なぜなら、創造教育は、学校と先生によって作られるものではなく、家庭と地域社会によって作られるものだからです。その形態がたまたま学校的な場所や先生的な人を必要としたとしても、それは従来の学校や先生とは異なる新しい社会の学校や先生です。
 子供たちの成長を中心として同心円を描いて広がる社会が、これからの資本主義を超えた新しい創造社会なのです。

この記事に関するコメント
コメントフォームへ。

同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
教育論文化論(255) 創造力(9) 寺子屋オンライン(101) 言葉の森のビジョン(51) 森林プロジェクト(50) 

記事 2301番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/11/22
読解マラソンの中1の1~3月の長文PDFを入れ直しました as/2301.html
森川林 2015/01/30 18:43 


 読解マラソンの「問題の木」で、中1の1~3月のPDFファイルがリンク切れになっていました。申し訳ありませんでした。
 現在は、見られるようになっています。
 1月4週の問題は、2月14日まで下記の「問題の木」のページで解くことができます。
https://www.mori7.net/marason/ki.php

この記事に関するコメント
コメントフォームへ。

同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
生徒父母連絡(78) 
コメント1~10件
読解問題の解き Wind
面白かった 10/11
記事 4027番
長文の暗唱のた たろー
この世で一番参考になる 9/30
記事 616番
「桃太郎」を例 匿名
役に立った 8/15
記事 1314番
日本人の対話と 森川林
ヨーロッパの対話は、正反合という弁証法の考え方を前提にしてい 8/6
記事 1226番
日本人の対話と よろしく
日本人は上に都合がよい対話と言う名のいいくるめ、現状維持、そ 8/5
記事 1226番
夢のない子供た 森川林
「宇宙戦艦ヤマトの真実」(豊田有恒)を読んだ。これは面白い。 7/17
記事 5099番
日本人の対話と 森川林
 ディベートは、役に立つと思います。  ただ、相手への共感 7/13
記事 1226番
日本人の対話と RIO
ディベートは方法論なので、それを学ぶ価値はあります。確かに、 7/11
記事 1226番
英語力よりも日 森川林
AIテクノロジーの時代には、英語も、中国語も、つまり外国語の 6/28
記事 5112番
創造発表クラス 森川林
単に、資料を調べて発表するだけの探究学習であれば、AIでもで 6/27
記事 5111番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
現在森リンベス 森川林
このあとの予定。 ・森リンベストを直す(直した) ・森リ 11/20
森川林日記
Re: 入会手 言葉の森事務局
 お世話になっております。  弟さんのみご入会が1週間 11/15
森の掲示板
入会手続きにつ やすひろ
お世話になっております。 個別掲示板を開けませんので、ここ 11/15
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習