日本の重厚長大産業は、強い国際競争力があります。それは、これからのデフレ化の世界的インフラ整備の流れの中で、日本の経済発展を土台となるものです。
これに対して、スマホ、パソコン、テレビなどの軽工業は、人件費の低い新興国に生産の中心が移っていきます。
しかし、だから、これから日本は重厚長大産業を中心にがんばればそれでいいのかというと、そうではありません。
それはなぜかというと、重厚長大産業は、雇用を創造する力がないからです。より正確に言えば、良質の雇用を創造する力がありません。
土木業界は、今人手不足だと言われていますが、それは、外国人労働者の導入でカバーすることが考えられるような労働力です。それはまた、いずれロボットで置き換えられるような労働力です。今後の日本の社会に必要な雇用は、そのような雇用ではなく、仕事の中で人間の成長が実現できるような雇用です。
航空宇宙産業も重厚長大産業の一種ですが、そこでは新しい雇用はほとんど生まれません。
今、多くの雇用を生み出しているのは、サービス業ですが、その多くは単純サービス業です。その仕事を何年続けても、それが自分の向上や経験の蓄積にならないような仕事は、たとえ多くの雇用を生み出していたとしても、未来の日本を支える産業にはなりません。
これから必要なのは、その仕事の中で人間が成長し、社会に新しい創造を提案できるような教育的文化的なサービス業です。
そして、この新しいサービス業という分野こそ、日本人が最も得意とする分野です。だから、教育文化産業は、今後、重厚長大産業と同じかそれ以上に、強い国際競争力を持つようになるのです。
言葉の森の寺子屋オンエアは、この新しい教育文化産業という位置づけで開発を続けています。
先はまだ長いかもしれませんが、日本の社会を更に発展させるためにがんばっていきたいと思います。
言葉の森の寺オンで国語問題集の勉強をしている子の多くは、それだけでは時間が余るので算数数学の勉強をしています。
「でき太くんの算数クラブ」のプリントをやっている子も多いですし、「これでわかる算数(数学)」をやっている子も多いです。
学校や塾の問題集をやっている子もいますが、これはあまりすすめていません。
算数数学の勉強で大事なことは、できなかったとき、どうするかということです。
できる問題をいくらやっても力はつきません。勉強に時間をかけているわりに成績が思わしくない子は、できる問題ばかりを一生懸命やっているのです。
ある数学の個人塾で、成果を上げているところの勉強の仕方は、次のようでした。
まず問題集を1冊決めます。次に、生徒がそれを自分で解きます。問題を解いたあと自分で○×をつけ、×のところの解法を理解します。生徒が自分で解法が理解できないときだけ、先生に聞きます。
だから、先生が教えるのは最低限のことだけです。こういう勉強の仕方ですから、場合によっては先生が何も教えない日もあります。この勉強の仕方で、数学の力が確実につくのです。
ところが、今、多くの学校、塾、家庭でやっている勉強はこれとは正反対のやり方です。
まず、先生が教えすぎるのです。だから、生徒は受け身で聞いています。
問題をやる場合でも、生徒が自分で答え合わせができないように、答えだけはずしてしまう先生もいます。答え合わせも受け身なのです。
答えが違っていた場合も、多くの問題集は解説が不親切すぎます。まるで、先生に聞かないとわからないような作りの問題集になっているものが多いのです。
こういう勉強を続けていると、子供はどんどん受け身になっていきます。その結果、わからないことがあると、すぐ教えてもらおうとします。すぐに教えてもらった子は、そのときはわかった気がしますが、実力はつきません。
実力は、自分で考えて理解し、その理解を何度か反復する中でついてくるからです。
算数数学の勉強で大事なことは、まず問題集選びです。いちばんの基準は、解法が詳しく書いてあることです。その点で、学校や塾で使う問題集のほとんどは不合格です。それらの問題集は、先生がいないと勉強できない仕組みになっているからです。
「でき太くんの算数クラブ」のプリントは、子供が自分で勉強する中で理解する仕組みになっています。こういう自学自習の勉強法が重要なのです。
次に大事なことは、できなかった問題があった場合、自分で解法を理解しようとすることです。
学校でまだ習っていないところを勉強している場合は、解法の理解よりも、その単元の解説をしっかり理解することが先です。解説は、ただ読むだけでなく、そのとおりをノートに書き写し、その例題と解答が確実にできるようにしておきます。こうすれば、ほとんどの解法は理解できるようになります。
しかし、それでもまだ解法が理解できないときは、身近なお母さんやお父さんに聞きます。お母さんやお父さんが、学生のころ算数数学が苦手だったとしても問題はありません。
その解法のどの行からどの行に移るところがわからないかという絞った質問を子供にさせるようにすれば、小中学校の算数数学は、大人であれば誰でも理解できるようになっているのです。
お母さんやお父さんが子供に教えるときに大事なことは、教えすぎないということです。誰でも、自分にわかることはつい詳しく教えたくなるものですが、よくわかっていることほどできるだけ教える割合を少なくして、子供が自分でわかるようにさせておくことです。
また、その場で教えて子供ができるようになったことでも、人に教わったことは、1日たつと忘れてしまうのが普通です。同じ問題を、次の日にも、また次の日にも同じように聞かれても、同じように忍耐強く教えていくことが大事です。
親子で勉強すると、親子喧嘩になってしまう原因の多くは、親が熱心に教えすぎることと、一度教えたことはすぐできるようになるものだと思ってしまうことにあります。
では、親が解法を見てもわからないときはどうするのでしょうか。そのときは、先生に聞くのです。
しかし、解法を見ても、親が理解できない問題は、その問題集自体がよくないか、あるいはもともとできなくてもよい問題なのです。
なぜできなくてもよいかというと、その問題で入試の点数に差がつくことはほとんどないからです。
これは、国語でも同じです。
例えば、センター試験の選択問題は、原則として満点の取れる問題ですが、中には先生も正解が理解できない問題があります。その問題はできなくてもよいのです。
できるべき問題が確実にできていれば、できない問題はできなくてもよいということを子供に教えてあげることも大切な勉強の仕方になります。