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教育の距離感――天外伺朗さんの「教えないから人が育つ」と、中室牧子さんの「学力の経済学」 as/2415.html
森川林 2015/09/12 20:28 


 天外伺朗さんの「『教えないから人が育つ』横田英毅のリーダー学」を読んでいて、ふと、中室牧子さんの「学力の経済学」という本のことを思い出しました。

 天外さんは、本名土井利忠さん。元ソニーの常務で、これまでにCD、ワークステーションNEWS、ロボット犬AIBOなどを開発した人です。
 天外さんは、「教えないから人が育つ」の中で、全面的な受容の大切さを述べています。

 一方、「学力の経済学」は、データの裏づけによって、何が学力にとってプラスになるのか、あるいはマイナスになるのかを分析した本です。
 この本を見ると、例えば、ある程度のご褒美は子供のやる気を引き出し、学力を高めることに結びつくというようなことが書かれています。

 この2冊を並べて考えると、教育の距離とか、人間の成長の距離とかいうものが、両者で大きく違っていることがわかります。

 昔、和田秀樹さんと森毅さんの教育観の比較を考えたことがあります。

 和田さんは、「数学は、わからなかったらすぐに答えを見て、その解答を理解すること」と述べていました。
 この方法で勉強すると、誰でも数学が得意になります。大学入試までのレベルの数学は、考える勉強ではなく理解する勉強だからです。

 一方、森さんは、それとは反対に、「数学は、答えを見ずに、まず自分で考えること」と述べていました。
 森さんと同じ数学者の岡潔さんは、朝起きてから夜寝るまで一つの問題だけを何ヶ月も考え続けていたそうです。
 これは、受験の数学ではなく、学問の数学です。

 この両者の説は、どちらも正しいのであって、違いは、数学というものの距離をどこまでと考えているかによって表れてくるのです。

 同じことは、教育一般についてもあてはまります。
 よく教育の逆説ということが言われます。よい環境とよい育て方で、よい子が育つというのは、多くの場合妥当性がありますが、時には、よい環境とよい育て方で、それに反発して悪い子が育つという例もあります。
 逆に、悪い環境と悪い育てられ方をバネにして、よい子が育つという例もあるのです。

 天外さんの言う全面的な受容というのもそうです。
 世の中で活躍している人や、学問で業績を上げている人の中には、親から勉強しろなどと言われたことはないという人が意外と多いのです。
 そのかわり、全面的な受容の中で、自分の好きなように成長し、はたから見れば遊びすぎだと思われるような子供時代や学生時代を送ってきたという例が多いのです。

 褒めて育てるということは、この全面的な受容というところから考える必要があります。
 褒めることを、「褒めてコントロールする」という短い距離の方法として考えると、それは受容とは正反対のものになります。
 褒めるというのは、やる気を出させるために褒めるのではなく、自然によいところに目が向いてしまうという、褒める人自身の生き方としての褒めることなのです。
 このように生き方として相手を褒めることができる人は、自分自身も受容しています。その受容の根源は、たぶんその人の親から受け継いだものです。

 社会に出てから自分なりの人生を楽しく送れる人は、受容性の高い人です。

 そこで、教育の距離というものが出てきます。
 数ヶ月先のテストでいい点を取るために、ほめたり、叱ったり、うまくコントロールしたりするというのは、短い距離の話です。
 そういう距離感も、もちろん少しは必要です。

 しかし、もっと大事なのは、その子が将来社会に出たときに、社会の中で自分らしく自信を持って楽しく生きていける人間になってほしいという長い距離感の子育てです。
 その長い距離感のもとになるものが、曖昧な概念のようにも見える全面的な受容なのです。

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2020年の教育改革に向けて勉強の方向を考える as/2414.html
森川林 2015/09/11 04:17 


 今の小学生が大学入試に向かうころには、入試のあり方が大きく変わってきます。その前に、高校の勉強のあり方も大きく変わってきます。更に、社会のあり方も大きく変わってきます。

 昔は、いい大学に入りさえすればあとは何とかなる、という考えがありました。
 今はもう、もちろんそういう時代ではありません。逆に、受験勉強のために余分なことをしないという生活をしていると、かえってのびしろの少ない人生になってしまいます。
 その結果、大学入試の直前が学力のピークで、入学したらあとはずっと下り坂となってしまう人も多いのです。

 勉強は、正しい方法とかけた時間によって結果が出てきます。だから、つい見える結果だけを目指してしまいがちですが、本当は、将来社会に出て活躍するための全人間的な力をつけることを第一に考えていくべきなのです。

 勉強の仕方でこれからいちばん変わることは、全部の教科が普通にできるようになることです。文系だから理数は苦手でいいとか、理系だから文学は苦手でいいというわけにはいかなくなります。
 そして、勉強は塾や予備校に行って特別に難しいことをやるのではなく、学校で普通にしっかりやればよいという形になっていきます。

 勉強が普通にできればよいというところまで落ち着くのと反比例して、いかにその子の個性を伸ばし、楽しい人生を送るかということが、子育ての重点になってきます。
 昔は、いい学校、いい会社、いい職業、いい人生のような正解のルートがありました。そして、誰もがそこに殺到したので、受験競争が過熱し、重箱の隅をつつくような奇問難問が出るようになり、その問題に対応して長時間勉強させる塾が増え、勉強しかできない子が増えてきたのです。

 これからの社会では、正解のルートはありません。それぞれの子供の個性と社会の情勢に合わせて、一人ひとりが自分のルートを決めていく時代です。
 そのために必要なのが全面的な普通の学力と、個性と創造性と意欲と人間性なのです。

 昔は、一浪してでも二浪してでも希望の大学に入りたいという人が数多くいました。それで、予備校も繁盛していました。
 今はそういう、何が何でも特定の大学や学部に入りたいという人は少なくなっています。それは、子供たちに覇気がなくなったからではありません。苦労してどこかの大学に入っても、その苦労に見合った分だけの将来の展望が見えない気がするからです。

 高度経済成長の名残りがある右肩上がりの時代には、いいところに乗れば、そのままエスカレーターで先まで行けるという漠然とした見通しがあるように見えました。
 今はそうではありません。
 親もまた、子供たちの将来の見通しがわからないので、勉強も、「とりあえずやっておけば損はない」という程度のことしか言えなくなってきているのです。

 日本は今世界の最先端を走っています。少子化も、高齢化も、財政赤字も、地方の過疎化も、すべて世界の最先端の問題です。
 これまでのように、ヨーロッパのあとを追うような姿勢ではなく、日本が自らの力で切り開かなければ解決できない問題が次々に生まれています。

 少し前までは、BRICsのような新興国がこれからの時代の主役になるということが言われていました。
 しかし、新興国は主役にはなりません。先進国が先に歩いた道を、あとから走っているだけです。

 では、主役は誰かというと、それは新興国、先進国という区分ではなく、ただ新しいものを作り出せる国家と国民です。そして、その最も近いところにいるのが日本なのです。

 なぜ日本が主役になるかというと、日本は、他の先進国に比べ、経済格差も知的格差も少なく、普通の国民が優れた能力を持っているからです。
 現在日本の特許貿易は、アメリカ、ドイツも含めて、すべての国に対して黒字です。
 人のあとからついていくのではなく、人の前を走れる国がこれからの主役になって、世界に貢献することができるのです。

 だから、日本の進む方向は、大きく言えば、発明と発見です。わかりやすく技術開発と言ってもいいでしょう。
 それは、個人のレベルであっても同様です。
 普通の人が、自分の今いる場所の問題に対して、発明や発見という創造で対応していくことが求められくるのです。
 その創造が当たれば、それが新しい仕事になることもあります。当たらない場合でも、個性を生かした楽しい人生を送る土台になります。

 子供たちの勉強もまた、この大きな方向の中で考えていく必要があります。
 これからの子育ては、発明、発見、創造、独立という方向を考えて行う子育てなのです。

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森川林 20150912  
 親や先生の役割は、勉強を教えることではありません。
 答えの決まっている勉強などは、教科書を少し詳しく解説したものを読めば誰でもわかるようになっているのです。

 本当の役割は、子供が自分の力でやれるように長い目で見守ることだと思います。


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