経済学者の野口悠紀雄さんの中学高校時代の英語の勉強法は、教科書をただ音読することだったそうです。野口さんは、こういう簡単で効率のよい勉強法をなぜ多くの人がやらないのか不思議に思っていたようです。
「『超』英語法」
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国語の勉強も同じです。国語の問題集に出てくる文章は比較的難しい文章が多いので、これを繰り返し音読するのです。
なぜ音読がよいかというと、黙読では飽きてそのうちにやらなくなってしまうからです。また、音読したものは自分の耳からも入ってくるので、勉強の密度が2倍になるからです。
音読暗唱という勉強法は、今少しずつ見直されています。
「奇跡の百人一首」(杉田久信著)という本には、小学校で百人一首の暗唱に取り組んだ記録が載っています。
「奇跡の百人一首 音読・暗唱で脳力がグングン伸びる」
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著者の杉田さんは、小学校の校長先生をしていました。富山市の五福小学校で初めて全校の百人一首の暗唱に取り組んだとき、ある一つのクラスは、全員が百首を暗唱できるようになったそうです。
すると、次年度の学力テストで、そのクラスだけ国語の平均点が10点近く高くなりました。
百人一首の暗唱をするようになってから、子供たちは普段の生活も明るく元気になり、卒業生は中学・高校でもよい成績を収めるようになりました。
音読暗唱というと、多くの人は、ていねいにゆっくり読むものと思いがちですが、そうではありません。できるだけ早く読んだ方が定着しやすいのです。
杉田さんのやっていた百人一首の暗唱も、5分ぐらいで全部読めることを目標にしていたようです。
英語の教科書の音読も、国語の問題集の音読も、できるだけ早口で読み終えた方がいいのです。
なぜ早く読むことが大事かというと、ゆっくりした読み方では内容を理屈で理解しながら読むことになるからです。そういう理解しながら読む読み方は、普段の生活でも充分にやっています。
理解しただけのものは、まだ自分のものではありません。だから、必要に応じて思い出さなければなりませんし、思い出せないときは忘れたことになります。
しかし、暗唱がある程度まで進むと、内容の理解を考えずに言葉が口から自然に出てくるようになります。このときに、その文章が自分のものとして身についたことになるのです。
音読暗唱の勉強の利点は、落ちこぼれというものがないことです。また、先に進みたい人は独学でいくらでも先に進めることです。
通常の勉強では、先生の説明を聞いて、早く理解できる生徒と、なかなか理解できない生徒が出てきます。その理解を一律にするためにテストをするという勉強の仕方になっています。これは、実は、先生にとっても生徒にとっても無駄の多い勉強の仕方です。
音読暗唱の勉強に慣れてくると、その勉強法をいろいろなところで応用できるようになります。
言葉の森では、1月から新しい暗唱長文集を作って勉強する予定です。
今度の暗唱長文は、百人一首も含め、親子三代で楽しめるような文化的なものを取り入れていきたいと思っています。
読書の仕方は、もちろん自由ですが、読むことで力がつくのは、次のような読み方です。
第一は、次々と新しい本を1回しか読まないという読み方ではなく、好きな本を何度も繰り返し読むことです。
お母さん方の中には、「同じ本ばかり読まないで、もっと別のいろいろな本を読みなさい」というアドバイスをする人もいますが、そういう必要はありません。
自分の好きな本を読む中で、その本の内容が頭に入るだけでなく、その人のものの見方や考え方も形成されるのです。
第二は、じっくりゆっくり読むのではなく、何しろ早く最後まで読み切るということです。
本というものは、最後まで読んで初めて全体像が頭に入ります。最後まで読み切ることで、途中までのわかりにくかったところもわかるようになるのです。
最初からじっくりと読んで、なかなか最後まで行かないと、その本の全体像がかえってつかめなくなります。
まず最後まで読み、そのあとに、必要に応じて繰り返し読むという読み方がいいのです。
これは、国語の文章題を解くときも同じです。特に、入試の問題文は、最初のところがわかりにくくなっていて、最後のところまで来ると初めて全体の話がわかるという作りになっているものがよくあります。
読むことに慣れていない子は、この最初のところを理解しようとして時間をかけてしまうことが多いのです。
第三は、易しい本を数多く読むよりも、数は少なくていいので難しい本を読むことです。
小中学生のころは、読みやすい本でなければ読書が進まない面もありますから、易しい本でもかまいませんが、高校生や大学生になったら、自分で自覚して難しい本を読むようにする必要があります。
難しい本というのは、高校の歴史の文化史の部分に出てくるような古典と言われるような本です。こういう本を1冊読む時間があれば、普通の本は10冊ぐらい読めます。しかし、難しい本を読むことによって考える力がついてきます。
具体的に言えば、岩波文庫や講談社学術文庫に収録されているような本です。
特に、日本の大学では、勉強は高校時代よりも楽なことが多いので、自分で意識的に難しい本を読むことによって力をつけていく必要があります。