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記事 255番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2025/4/13
知識を活用する時代 as/255.html
森川林 2008/06/20 10:51 
 6月20日の日経新聞の特集「『アジアの未来』プログラム」に、竹中平蔵氏の講演が載っていました。その中で、氏は次のような四つの提案をしていました。(1)羽田空港の能力増強、(2)低率の法人税を適用するスーパー特区の新設、(3)アジアの政府系ファンドの資金などを呼び込むための省庁の設立、(4)大学の国際競争力を高めるための東大の民営化。
 同じ特集で、自民党元幹事長の中川秀直氏がやはり、対談の中で、(1)羽田空港のハブ化、(2)高い法人税の見直し、(3)英語を話せる人材の増加、などの必要性を話していました。中川秀直氏は、副島隆彦氏がウェブの「学問道場」で、その力量を評価していた政治家です。
 こういう記事がいながらにして読めるというのが現代社会の特徴です。現代は、社会の大きな方向を高い視点で述べることのできる人が、それぞれの分野で次々と世論の前面に出つつある時代だと思いました。
 歴史の流れを図式的に説明すると、最初は、少数の優れたリーダーが社会を引っ張っていく時代でした。しかし、社会が複雑になるにつれて、官僚制が台頭します。始めは有効に機能していた官僚制のヒエラルキーが次第に腐敗し、自己保身を第一に考える多数の中間的小リーダーが広がるというのが現在までの時代だったと思います。
 ところが、インターネットの普及は、そのヒエラルキーを急速に無効なものにしつつあります。未来は、多くの優れた有権者が大量に登場する時代になるでしょう。リーダーが一方的に政治権力を執行する時代から、多数の優れた有権者がそれぞれの局面でふさわしい多数のリーダーを選ぶ、という民主主義の本来の形が生まれつつあるのです。
 そのような時代に必要な能力は、材料を集める力よりもむしろ、与えられた材料を料理する力です。学力で言えば、知識力よりも思考力ということになるでしょう。
 人間が他の動物と違って格段に優れているところは、他人の知識をすぐに自分の知識とすることができる点です。ピタゴラスが三平方の定理を発見したときには、膨大な時間と天才的なひらめきが必要だったはずです。しかし、現代人は全くそのような時間も才能も必要とせずに、わずか十数分でその定理を自分の知識として使うことができます。
 最初に書いた竹中氏や中川氏や副島氏(もちろんほかのいろいろな識者も含めて)の知識や提案は、彼らの独自の知識や経験や才能によって生まれたものでしょう。しかし、有権者は、メディアを通じて、それらの考えを自分の判断材料としてすぐに生かすことができるのです。
 昔は、ほかの人の知らない知識を持っていれば、それだけで通用しました。今は、どのような知識もすぐに社会全体に広がります。知識を蓄えることではなく、活用することを勉強の目的としていくことがますます必要な時代になっているのです。

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記事 254番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2025/4/13
「反復」と「感動」 as/254.html
森川林 2008/06/12 12:15 
 「バシャール」という本の中で、未来の教育のことが書かれていました。未来の教育は、「体験を中心としたものとなる」ということです。これを現在の勉強にあてはめてみると、例えば、英語では、「英語漬け」の生活をするのがいちばんいい勉強の仕方で、それが難しい場合は、できるだけ「イメージ化」して覚えるということだそうです。これは、よく納得できる考え方です。
 覚えることをイメージ化することについては、記憶術という方法があります。例えば、数字の「1」から「100」までの百マスの表を作り、そのそれぞれの数字にイメージ化できる言葉をあてはめていきます。「33」だったら「耳」というイメージです。そうすると、無味乾燥な数字がイメージ豊かに記憶できます。これは、だれでも多かれ少なかれやっていることですが、覚える勉強すべてについて意識的かつ体系的に取り組めばかなり成果が上がると思います。
 「体験」と「イメージ化」の本質は、知識が身体化することです。では、それら以外に、知識を身体化するものがないかというと、実はあります。それが、「反復」と「感動」です。
 まず、「反復」から。
 私は、本を読むときに、シャーペンで線を引きながら読んでいます。そうすると、二度目に読むときに、線を引いたところだけ読めば全体を思い出せるからです。そして、二度目に読むときも線を引くので、そこが二重線になります。三度目に読むときは、更に波線になったり、四角で囲まれたりします。そのように、何度も繰り返して読むと、読んだ本が自分の中に消化されてくる感じがします。逆に言うと、一度しか読まない本は、その本のかなりの部分が未消化のままだということです。
 何度も繰り返して読むような本があると、読む力が育つというのは、この反復の大切さから来ているのだと思います。
 同様のことは、勉強全体について当てはまります。参考書でも問題集でも、一冊の同じものを繰り返し五回勉強するというのが勉強の鉄則です。読むたびに大事なところや印象に残ったところに線を引いておけば、二度目、三度目と繰り返すたびに反復の時間は短縮されていきます。しかし、問題集の場合は、短縮されるとともに密度も濃くなってくるので、苦痛を感じる場合もあります。これは、どういうことかというと、一度目にできなかった問題を中心に二度目の問題を解くので、二度目は解けない問題ばかりが続くということです。三度目も同じです。解けない問題ばかりが続くので、この苦痛をのりこえないと問題集の反復学習はできません。
 私の個人的な経験では、一度目に解けない問題は、二度目も、三度目も普通は解けません。そこで、ほとんどの人は、「また、できない。何て自分は頭が悪いんだろう」とあきらめてしまうのです。しかし、実は、反復学習は、四度目ぐらいから急に解けるようになってきます。それが、「同じ参考書や問題集を五回以上繰り返す」という意味です。読書にあてはめれば、身につけたい本は、やはり五回以上繰り返し読む必要があるのだと思います。
 「反復」の次は、「感動」です。(つづく)

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抽象化能力を高める作文 as/253.html
森川林 2008/06/06 11:32 
 勉強の中には、知識の再現性を評価するものがあります。それは、時間をかけて努力すれば、ある意味でだれにもできる分野です。例えば、「日本でいちばん長い川は」「信濃川」という、クイズ番組のような学力です。
 しかし、本当に考える力のある子は、こういう単なる「知っている」という知識にはあまり興味を持ちません。逆に、考える力のある子供たちが好きなのが作文です。それも、学年が上がり、自分なりに考える要素が増えてきた作文は、書くこと自体が知的刺激になります。
 考える要素のある作文とは、例えば、「宿題はよいか悪いか」という題名を複数の理由で書くというような作文です(中1の課題)。この課題で、中学1年生が作文を書くと、理由を考えるという抽象的な思考ができずに、単なる実例だけを書いてしまう子がかなりいます。しかし、実例を書くのはまだいい方で、中には、「よいか悪いか」という問題の立て方ができずに、「好きか嫌いか」という感覚のレベルで考えてしまう子もいます。(大人でもいると思いますが)
 理由や方法や原因という抽象的な思考をすることができず、すぐに実例を書いてしまう人は、現実の世界もやはり実例としてしか見ていません。そういう人は、話題は豊富なように見えますが、その話題の背後にある本質を考えることはあまり得意ではありません。
 抽象化能力とは、現実の背後にあるより抽象度の高い本質を見る力です。高学年の作文力の中心は、この抽象化能力ですから、作文力のある子は、社会に出てからもますますその学力に磨きをかけていくことができるのです。

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