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作文の苦手は作られる as/2611.html
森川林 2016/06/28 08:10 


 作文の下手な子がいた場合、その一つの原因に苦手意識があるからということがあります。苦手意識というものは、実力以上に作文を苦手にするのです。
 だから、褒めてくれる先生のもとでは、子供は実力以上に上手に書こうとするので、実際に少しだけ上手になります。そこでさらに褒めてあげることによって、本人の気分のよさをてこにし、実力をつけるための音読と読書を続けさせていくのです。
 これが作文を上達させるコツです。

 しかし、作文力や国語力というものは、それまでの日常生活の蓄積の中で作られてきたものなので、毎日音読と読書を続けても、すぐに目に見えるような上達は感じられません。
 音読と読書を一日も欠かさず半年続けて、効果など忘れた頃に、書いていることが少し変化していることに気がつくのです。

 では、なぜ子供は苦手意識を持つようになったのでしょうか。
 人間は自分で自分の書いた文章を評価できません。特に子供は自分の書いたものが上手なのか下手なのかを自分で判断することはできません。文章には○×試験のような点数はつかないので、自分で客観的に評価することはできないのです。

 子供が自分の作文に苦手意識を持つのは、他の人から比較されたり批評されたりするからです。それは学校の先生や親による善意の一言であることが多いのです。
 例えば「〇〇君のように上手に書いてごらん」とか、「これではまるで何年生の作文みたいだよ」とか、本人を発奮させるつもりで言った軽い一言が、子供の苦手意識を形成するのです。

 特に子供がある箇所に自信を持って書いた時ほど、マイナスの批評は悪い影響を与えます。
 例えば、子供が字数の長さに関して頑張ろうと思い、長い作文を書き、それを自信を持って先生や親に見せた時、見せられた大人がよりよい批評をしてあげるつもりで、「長ければいいというものではないから、もっと中心を決めて丁寧に書く方がいいよ」というようなことを言うと、子供の苦手意識はそこで決定的になるのです。

 実際に、小学校低学年の時に作文の批評をされたのが原因で、高校3年生まで自分で作文を書けない、つまり親がいつも代筆をしていたという人がいました。
 その人が大学浪人1年目の時に、言葉の森の体験学習に初めて訪れ、最初の説明でその日からすぐに作文が書けるようになり、その後1年間毎週作文を書いているうち、苦手意識など全くなくなり立派な小論文を書けるようになったということがあります。
 高校3年生まで書けなかった生徒が、一日で書けるようになったのですから、奇跡のような話ですが、体験学習ではこういうことがよくあります。

 作文を上達させるコツは簡単です。第一は実力をつけるために、毎日の音読と読書を一日も欠かさずに続けていくことです。
 第二は、音読も読書も作文も、どんなに間違えていても、やる気がなさそうに見えても、決して注意をしたり、批評をしたりせずにいつでも褒め続けていくことです。
 第三は、すぐの効果は期待せずに、目に見えるような効果は忘れた頃にやってくると思って気長に続けていくことです。
 このやり方でどの子も国語力と作文力が上達していくのです。

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模擬試験の結果をどう見るか as/2610.html
森川林 2016/06/27 18:17 


 言葉の森の小1~中3の生徒の希望者に、6月に全国模擬試験を受けてもらいました。
 低中学年の生徒で、初めてこういう試験を受けたという人も多いと思いますので、この模擬試験というものの点数の見方を説明しておきたいと思います。

 ちょうど、先日、小学校低学年の生徒の保護者から相談がありました。国語の成績があまりよくなかった、自宅でやればできるので時間が不足していたらしい、とのことでした。

 そのテストの内容を見ているわけではないので、正確なことはわかりません。しかし、二つのことが言えると思います。

 第一は、それほど心配することはないということです。小学校低学年で求められる国語力は、高学年からの国語力とほとんど関係がありません。だから、点数は気にせずに、ただテストの内容とその子のでき具合を把握していればいいのです。

 同じ「試験」という名前でも、検定試験のようなものは、百点満点中の百点が本来取るべき点数です。しかし、模擬試験や入学試験のような差をつけることを目的とした試験では、百点満点中の六十点が平均点になるように作られています。
 だから、人並みの六十点よりやや上ぐらいの点数であれば、それ以上の上位を目指す必要はありません。上位を目指すのは受験のときだけでいいのです。

 しかし、第二に、その点数が低かった原因が時間不足である場合、読書の量と質の不足が背景にあることがあります。

 模擬試験や入学試験は、もともと短い制限時間で正解を競わせて差をつけるように作られています。だから、普通にやれば時間不足になることが多いのです。

 しかし、読むスピードがある子は、時間内に解き終わります。そういう子は、多読と難読の両方ができています。ここで言う「難読」とは造語で、「難しい文章や本を読むこと」という意味です。
 読むスピードがない子は、いつも時間不足になります。その場合、多読か難読のどちらかが、又は両方が不足していることが多いのです。

 勉強の成績は、算数にしても、理科、社会にしても、比較的すぐに上がります。しかし、読書の量と質は、長年の蓄積によるものなので、なかなか変わりません。
 だから、小学校低学年のころは、勉強よりも読書に力を入れている方が、あとから学力が伸びることが多いのです。


 普段、学校の試験で百点近い成績を取ることを普通と考えている低中学年の生徒の場合、模擬試験の点数の悪さにショックを受けることがあります。
 そのとき、お母さんはくれぐれも同じレベルでショックを受けないようにしてください(笑)。そして、おおらかに、これはそういうテストだから点数はそれで十分、普段の実力があるのだから大丈夫、と言ってあげるようにしてください。

 そして、その点数の低さの原因が時間不足であった場合、子供に、「もっと本を読まないと駄目だ」というようなことを言わないようにしてください。それは、子供の問題ではなく親のこれからの問題であるからです。
 模擬試験で状況を把握したあと、その対策を親がゆっくり考えていけばいいのです。

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