2020年からの新しい入試改革の方向は、これまでの入試とはかなり変わってきます。
これまでの入試は、いろいろ工夫されたとは言っていても、結局は知識の定着度合いを確かめる入試でした。しかし、そのような入試では、本当の学力は必ずしも評価できないということがわかってきたのです。例えば、それは東大の国際的位置が年々低下しているようなところにも表れています。
知識の再現度合いを評価するテストに対応するためには、知識を能率よく詰め込む勉強法しかありません。このため、今の塾や予備校での勉強は、考える勉強とは言っても、考えるパターンの知識を詰め込む勉強になっています。
入学試験を実施する学校側では、そういう詰め込み勉強法に対抗するために、考える良問を出そうとしますが、いったん出された問題も、翌年には塾や予備校で新しい考え方のパターンの知識の勉強としてノウハウ化されてしまいます。
公立中高一貫校の試験問題も、最初のころは考える良問が出ていましたが、学習塾がその考える問題に対応するようになると、子供が考えていたのでは時間的に解けないような問題が次々と出されるようになりました。
こういう知識の詰め込みのいたちごっこを克服するために、新しい入試改革が出てきたのです。
では、その考える力の中心となるものは何でしょうか。それは、ひとことで言えば文章力なのです。
文章力というと、作文の力を思い浮かべますが、小学生の生活作文のレベルではまだ考える力とは言えません。もちろん、小学生時代の作文力は考える力の基礎となるものですが、それだけでは十分ではありません。
小学生時代の作文力の土台の上に、中学生時代の意見文、高校生時代の論説文が加わることによって初めて考える力が育っていくのです。
言葉の森の作文指導は、小学1年生から始めて高校3年生まで続ける一貫指導が特徴です。小学生時代の作文のうちから既に高校生での論文につながる展望を考えているのです。
小学生時代の作文の重点は、毎週書く習慣をつけること、よい文章やよい本をたくさん読むこと、難しい文章や難しい本も読めるようになること、です。そのためには、子供の書いた作文のよいところをいつも褒めて、楽しい勉強にすることが大事です。
また、毎日の読む勉強と親子の対話も欠かせません。特に、低中学年では、読書よりも親子の対話の方が、子供の考える力を伸ばす面があります。言葉の森が現在、小学1~3年生のオンエア講座で、読書実験クラブを開いたのも、こういう理由からです。
小学1年生の自由な題名の作文課題で、毎週のように、「今日のこと」という題名で作文を書く子がいます。低学年のころは、毎日の生活が新鮮ですから、毎回、「今日のこと」という題名であっても、特に問題はないのですが、中には、家庭での経験や対話が少ないために、今日のことしか思い浮かばないという子もいます。
作文の題材を作るために、家族でわざわざどこかに出かけたり、お金をかけて遊びに行ったりする必要はありません。親のちょっとした工夫で日常生活の延長に面白い題材をいくつも作ることができます。
小学校低学年のころの親子の関わりは、子供にとってだけでなく、親にとってもその後の貴重な経験になります。将来の大学入試の考える力に対応するためにも、今の親子の生活を充実させるためにも、低学年のうちは親子で楽しく遊んでおく必要があるのです。
7月19日(火)に行った読書実験クラブの読み聞かせの一部です。
説明文の文章なので、難しい言葉が結構出てきます。
この話を聞いて構想図を書き、あとでお父さんやお母さんに説明をしたり、取材をしたりします。
また、自分で実験できそうなことがあれば、それを調べてきてもらいます。調べた結果は、写真に撮ったり、youtubeにアップロードしたりと自由。
もちろん、あまり負担にならないように、何をやってもやらなくても自由です。
下記は、約10分の時間で中根が書いた構想図です。
10分では、子供たちはこんなにたくさんは書けません。しかし、自分なりに書いている間に、読み聞かせで聞いた本の内容が頭の中に残ります。
物語文の本にもよいものはたくさんありますが、物語文はほとんどの子が家庭で十分に読んでいます。
読書実験クラブは、家庭ではあまり読む機会のない説明文を中心に読むようにして、その読書をただ読むだけで終わりにせず、その後の何らかの実験につなげられるようなことを大切にしています。
小学校1年生から3年生は、学校の勉強は基本的なことだけです。
この時期に、その基本的な勉強を更に難しくしたような勉強を家庭で追加する必要はありません。それよりも、読書と対話と経験で、本当の実力をつけておくといいのです。
言葉の森は、作文指導の専科教室です。
しかし、ただ作文を書かせるだけでは、本当の実力はなかなかつきません。大事なのは、作文を書く前の材料と考える力です。
読書実験クラブは、その作文力育成の準備でもあるのです。