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日本の若い世代に新しい文盲が生まれているのではないかと、ふと  as/2641.html
森川林 2016/08/28 15:41 

△大きなクスノキにとまっていた秋のセミ。

 こういう人を脅かすようなことは書きたくいのですが(では、書くなとも言われそうですが(笑))、子供たちを見ていて、ときどきふと心配になる子が増えてきたような気がします。

 話を交わす分には、普通の子と変わりません。
 だから、勉強はそれほど得意ではないとしても、特に問題があるとは思えません。
 しかし、本を読む時間が決定的に不足しているようなのです。

 小学校3年生以上になれば、好きな本があるときは夢中になって読むような年齢です。
 ところが、夢中になるはるか以前の状態で、挿絵の多い本をぱらぱらめくっている様子が、ただ絵を見ているだけのようなのです。

 その子たちが本を読んでいないことがはっきり現れるのは、作文を書いたときです。
 口で話すようなことをそのまま文字として書くので、「わ」と「は」の区別がなかったり、小さい「っ」の字がなかったり、てんやまるがなかったりと、ちょうど幼児が初めて文字を書くような感じなのです。

 書く力の土台となっているのは読む力です。
 だから、作文が苦手な子の場合、作文を直そうとしても直すことにかなり時間がかかります。そして、直すところばかりを注意されていると、勉強を続けようという気持ちがなくなるのです。

 だから、作文が苦手な子に、まずやってもらうことは、家庭で毎日10ページ以上本を読むことです。それは、読み聞かせでもかまいません。
 要するに、文字としての言葉からイメージを作れるような言語感覚を育てることが出発点なのです。
 そして、読書が定着するまでは、作文は直すのではなくよいところを認めて褒めることが中心です。

 しかし、小学校の低学年のうちに読む習慣ができていない子が、小学校中学年から毎日読むようにするというのは、実はなかなか大変です。
 生活習慣を変えるということは、口で言うほど簡単ではありません。
 毎日10ページ以上の読書を続けると一大決心をして半年間続ければ、何とかその後も読書のある生活をしていくことができますが、この毎日のわずかな時間を忘れずに続けることが難しいのです。

 話は少し変わりますが、言葉の森の読書実験クラブは、どちらかと言えば、読書好きな子供たちのための企画です。
 子供たちが家庭で普段読む本は、両親の好みや、子供本人の好みによって大体固定化する面があります。
 読書実験では、そういう子供たちが新しいジャンルの本に接して、そのあと、その本に書かれていることをもとに構想図を書いたり、似た話を探してみたりするということでやっています。

 この読書実験クラブでは、その日の講座が始まる前に、みんなに今読んでいる本を紹介してもらいますが、この本の紹介というものが、かなり効果があるようなのです。
 つまり、友達に、自分が今読んでいる本を紹介するとなると、自然に本を読む生活をすることが当然となっていきます。

 読書の楽しみは、個人的なものですが、その読書生活を紹介し合うということが、子供たちの交流を文化的なものにしている感じなのです。

 ところで、この読書実験クラブは、今は読書好きな子供たちばかりが参加していますが、これからのやり方によっては読書嫌いな子にも効果があるのではないかと思いました。

 読書実験クラブのやり方はこうです。
 それぞれの家庭から、パソコンで読書実験クラブに参加します。すると、先生がその日の本の読み聞かせをします。
 読み聞かせですから、読むのが苦手な子も、耳から聞く形の読書を楽しめます。
 そして、読んだ本をもとに、そのあと構想図を書いたり、家庭で似た話を探してきたりするのです。

 ネットに接続して読書の読み聞かせに参加するというのは、まだ少しハードルが高いと感じる人もいると思いますが、これから少子化が進むと、家庭でいながらにしてさまざまな勉強ができるというのは大きな利点になってくると思います。

 言葉の森では、小1~小3対象の読書実験クラブ以外に、同じようなオンエア講座として、小4~小6対象の公立中高一貫校の対策講座、中1~中3対象の先取り学習と難度の高い国語演習の講座も開いています。いずれも、参加する生徒は、こちらで何も条件を言ったわけではないのですが、かなり優秀な子供たちばかりです。

 このオンエア講座の特徴は、先生と生徒との触れ合いがあることです。しかし、かといって、高額な料金設定ではありません。
 言葉の森のネット活用の教育は、人間どうしの関わりを大事にしています。決して、ビデオの読み聞かせがサーバーから流れてくるという形ではありません。
 そして、そういう教育をもっと日本中に広げたいと思っているのです。

 このネットを媒介にした人間どうしの交流や教育というものが、これから重要になってきます。
 というのも、読書生活のない子供たちも、結局読み聞かせをしてもらうような人との触れ合いがないまま成長したのだと思うからです。
 テレビやゲームなどの機械的な娯楽に時間を取られていたために、読書の楽しみを知る機会のないまま成長してしまったと思うのです。

 家庭に、本とテレビが一緒にあれば、本を読むことに慣れていない子は、まずテレビに手を伸ばすでしょう。
 本は、読む練習をして読むことに慣れてからでなければ、自然に手を伸ばす対象ではないのです。

 今は、テレビよりももっと手軽なタブレットやスマホも普及しています。本を読まない子は、タブレットでも文字は読みません。画像と動画だけを見て満足してしまうのです。

 私は、いずれこの若い世代に現れた新しい文盲のようなことが、社会的な問題となるような気がしています。
 そうならないためにも、もっと本を読む機会を子供たちが小さいうちから家庭の中に広げていきたいと思っています。

この記事に関するコメント
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森川林 20160828  
 タブレット教育などは、さも新しいことのように言われていますが、ただあちこちから画像や動画を検索で探しているだけのような気がします。
 それよりも子供時代に大事なことは、読書という文字の集まりから実感のわくイメージを作る力ではないかと思います。

suman 20160903  
「書く力の土台となっているのは読む力です。 」~テレビやゲームに子守りをさせるのではなく、1日10分ずつでも、親子で本に向き合うのが良さそうですね。

suman 20160903  
読書嫌いな子こそ、読む習慣をつけて読む楽しさを知ってほしいですね。

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頭をよくする作文の勉強法(その5)――家族で盛り上がる小1の親子作文  as/2639.html
森川林 2016/08/27 12:20 


 作文の勉強は、特に低学年の自由な題名のときほど、親子の知的な面白い対話が工夫できます。
 そして、小1から小3にかけての時期は、子供の言語感覚が育つ最も大切な時期なのです。

 その研究結果を初めて実証したのが、東京医科歯科大学の角田忠信医学博士です。
 角田氏の研究によると、外国人でも日本の国で小1から小3の時期を送ると日本語脳になり、日本人でも同じ時期に海外で暮らすとその現地の言語脳になるそうです。
 つまり、この時期に身につけた言葉の感覚は、一生の言語生活の土台になるのです。

 だから、小1からできるだけ豊かな言葉を交わす生活を送っていくといいのですが、小1のころは「話す」「聞く」はできても、まだ「読む」は少したどたどしく、「書く」にいたってはまだほとんどできない子もいます。
 それは、もちろん年齢的なことですから、焦る必要はないのですが、作文ということになると、「もう少し書けるようになってから」と、つい親は思ってしまうのです。

 逆に、小1のころからがんばって書かせようとすると、子供に無理強いをする場面も出てきます。
 そこで、活用できるのが親子作文という方法です。

 親子作文の原理は、単純です。
 子供は、自分が楽にできる範囲でお母さん、又はお父さんと話をします。
 話をするだけですから、小1の子でも自由にできます。

 その子供の話と親の話を、親が構想図という形で、聞きながらどんどんメモしていきます。
 大体10分ぐらいすると、メモがA4用紙で1枚を埋めるぐらいになります。

 そのあと、親がそれをそのまま作文に書いていきます。
 そのときに、普通に書いていけば、会話は改行になりますし、句読点も適宜打つようになります。
 子供向けに無理にひらがなで書く必要はありません。親が普通に使っている漢字仮名交じり文で書いていくのです。

 作文を書き終えたら、漢字にはふりがなをふっておき、子供でも読めるようにしておきます。
 その作文を子供に読んでもらってもいいし、親が読んであげてもかまいません。
 子供に読ませるときは、その読み方をいつも褒めて励ましてあげることが大事です。
 だから、読み方を褒める見込みがまだないうちは、親が読んであげる形でいいのです。

 親が作文を書いて、どうして子供の勉強になるかというと、第一の理由は、子供は親の後ろ姿を見て育つので、親が楽しそうに作文を書いているのを見ると、自分もそういうことをやってみたくなるからです。
 読書の場合も、親が子供に読書姿を見せていると、子供も自然に読書好きになります。
 勉強で最も大事なのは、意欲的に取り組むということなので、子供に作文を書きたい気持ちが生まれるということが重要なことなのです。これは、多くの人が見落としがちな点だと思います。

 第二の理由は、正しい書き方を自然に覚えるということです。
 親は、文章を書くときに、句読点をつけたり、会話をカギカッコをつけて改行したりすることを自然なことのようにやっていますが、実際には、口で話し耳で聞く言葉の場合は、句読点もカギカッコも改行もありません。
 そのため、小1の子供が作文を書くときに、最もつまずくのが、この原稿の書き方という表記の部分なのです。
 子供は、作文の中身を見てもらいたいのに、親は表記のミスにすぐに目が行ってしまいます。そこで、作文の勉強は親子のすれ違いになることが多いのです。

 しかし、自分が話したことをお母さん又はお父さんが書いてくれるのであれば、口で話すことがどのように文章化されるかということがすぐにわかります。
 これをもし、作文の書き方を教えてもらうような勉強として、「会話は行を変えて書く」とか「文の終わりにはまるをつける」などという説明を受けると、途端に退屈な勉強になります。
 勉強としてではなく、親子の楽しい対話として自然に勉強と同じことができるようにしていくことが大事なのです。

 親子作文は、親子の対話を通して、語彙の力と、考えて聞く力と、考えて話す力が同時に育ちます。

 そして、この親子作文は、その場で話をした親子の間だけでとどまらず、ほかの家族にも広げていくことができます。
 親子の二人の対話だけであれば、それを録音でもしておかなければならないかぎり、その場にいないほかの人がその対話の内容に参加することができません。
 ところが、作文という形であれば、お母さんと子供が話して親子作文にした内容を、あとでお父さんやおじいちゃんやおばあちゃんも見ることができます。

 その場にいない人でも、親子の合作の作文を見て、そこにコメントを書き加えることができます。もちろん、そのコメントにもふりがなをふっておきます。
 すると、その作文は、家族全員が共有する対話の場になっていくのです。

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森川林 20160827  
 本格的にやる習い事は、6歳から始めるのがよいと言われています。
 作文も6歳から始めるのが本当はいちばんいいのです。
 しかし、6歳ではまだ文字が上手に書けません。
 左ききの子は、「く」の字を逆に、「>」などと書いたりすることもあります。うちの子でした(笑)。

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