数学の話の次は、英語の話です。
18ヶ国語を使えると言われたシュリーマンの独学の方法も音読暗唱でした。
同じ文章を大声で何度も読んで暗唱できるようにしているうちに、長い文章も何度か読めば全部暗唱できるような能力が身についていたというのです。
この暗唱力を使って、語学を身につけたのです。
同時通訳の神様とも言われた國弘正雄氏は、只管朗読(しかんろうどく)という言葉で英語の勉強法を表していました。この考えに基づいて英語の音読暗唱を目的としたCDブックを出しています。
今の日本の英語の教科書は会話に偏っているために、音読暗唱しても、文法的にしっかりした文章を身につけるという点で弱い面があります。
教科書以外に、英語の説明文を暗唱する機会を作れば、その生徒の英語の実力は確実に身につきます。
現在、経済学者であり評論家でもある野口悠紀雄さんは、中学生のとき英語の弁論大会に出たことをきっかけに、英語の教科書の音読を始めたそうです。
中学でも高校でも、何度も英語の教科書を音読し暗唱できるぐらいまでになっていると、いつの間にか英語が得意教科になっていました。
野口さんは、勉強法の著書の中で、英語の教科書音読の簡単さとその効果の大きさを力説しています。
この英語の教科書の丸ごと暗唱という方法を取り入れて成果を上げている英語塾もあります。しかし、多くの場合、親も子も暗唱の効果というものに確信を持てないので、長く続けられる子は少ないようです。
人間は、どうしても、問題集を解いて答えを書き込んで○×をつけるというような形の残る勉強の方をやりたがります。
また、教える先生も、教える形が作りやすく、教えたことが形として残りやすい勉強の仕方で授業をします。
音読暗唱をするだけという形の残らない勉強を何年間も続けられる生徒も先生も少ないのです。
英語の教科書音読とは、教科書の1ページを20回から30回音読するだけです。時間で言えば10分程度でできることです。しかし、これを自主的にできる生徒はほとんどいません。
しかし、このときに、言葉の森の暗唱検定などで長い文章を暗唱した経験のある生徒は、英語の文章の音読暗唱という勉強にすぐに取り掛かれます。
このように、暗唱力を、他の教科に生かすということを考えれば、そこからその教科の成績はすぐに上がります。
暗唱力のある生徒が、そういう勉強の方法に気がつけばいいだけなのです。(つづく)
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只管打坐(しかんたざ)というのは、道元の言葉です。あれこれ言わずにまず座れという方法論です。
しかし、これよりも、考案を考えるやり方の方が方法論としてはやりやすい感じがします。
しかし、更にもっとやりやすい方法があるとしたら、禅検定などという名前で問題を解いて答え合わせをするような方法です。
今の日本の教育は、この問題と答えという勉強法に偏りすぎている気がします。
理解の勉強に慣れている人は、内容が合っていれば一文字ぐらい違っていてもいいだろうと考えがちです。
そういう内容把握の勉強ももちろんあります。ほとんどの勉強はそういう形で間に合います。
しかし、暗唱は違ういます。一文字も間違えないように、しかもスピードを上げて暗唱できなければ暗唱ができたとは言いません。こういう勉強法によって初めて身につく能力もあるのです。
高校時代、英語の副読本を担当した先生にあこがれていた時期がありました。
学校の行き帰り(先生を想いながら(笑))、その副読本ばかり読んでいたら、英語だけ学年トップになった、という輝かしい思い出があります(笑)
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暗唱力は、ただ暗唱ができるだけにとどまらず、作文にも国語にも数学にも英語にも役立つという話のここからが本番です。
暗唱がよくできている子でも、また親でも、その暗唱が暗唱以上の勉強力に結びついているという自覚があまりありません。
以前、中学生でときどき暗唱をしている生徒との雑談で、生徒が次の定期テストの話をしてくれました。
「社会は、日本国憲法の前文を暗記できたら、点数をアップしてくれるらしいんですよ」
と、その生徒は他人事のように話していました。そういう奇特な生徒もいるんだろうなあ、という感じの話し方だったので、
「やれば、いいじゃん。いつもやっている暗唱の要領でやればそんなのすぐできるよ」
と言うと、初めて気がついたように、
「あ、そうか」
と言っていました。それですぐに暗唱できるようになったようです。
長く暗唱をしてきた生徒でも、自分が暗唱力があるということに対する自覚がないのです。
よく例に出しますが、本多静六もそうでした。(本多静六、林学博士。一八六六~一九五二)
現在の東京大学農学部の1年生のとき、数学で赤点を取り落第をしましたが、そのあと、数学の勉強法にそれまで身につけていた暗唱の力を利用したのです。
それは、数学の問題集の例題一千題と解法を全部暗記することでした。
数か月でその暗記ができると、それからは、数学のテストは常に満点で、最後には授業に出なくてもいいと言われるほどになりました。
数学は、考える勉強の代表のように思われているので、「丸暗記じゃだめだ」というようなことがよく言われます。
しかし、学問としての数学ならいざしらず、大学入試までの数学は、基本的に解法パターンの暗記によって、解法の応用力がつき成績が上がるという勉強なのです。
数学のできる生徒ほど、数学は暗記だということを理解しています。
数学を考える勉強だと思っているのは、数学のできない人だけです。
文化人類学者の今西錦司さんは、大学生時代、文系なのに数学がよくできるので、同じ文系の仲間から羨ましがられたそうです。
そして、そのうちの一人が、今西さんに数学の勉強のコツを聞いたところ、こともなげに、「ああ、数学は暗記だよ」と答えたそうです。
数学が考える勉強だと思っている人は、難しい問題にぶつかったとき、一生懸命自分の頭で考えようとします。考え出すと、時間はすぐに経ってしまいます。
しかし、数学が暗記だと思っている人は、難しい問題にぶつかったとき、答えを見て解法を理解しようとします。解法を理解するだけなら時間はほとんどかかりません。
このようにして、数学が苦手な生徒と、得意な生徒の差はますます広がっていくのです。
だから、暗唱力のある生徒が数学を得意にする方法は簡単です。
一冊の適度な難しさの問題集を、全部できるようにし、できなかった問題はその問題と解法をまるごと一緒に暗唱してしまうのです。
考えを深める勉強は、文章的なところで行っていくのが基本です。
それは、難しい文章を読んで、その文章がテーマにしていることを自分なりに考えてみるという勉強です。
そういう価値ある勉強をする時間を確保するためにも、数学のような通常の勉強的なことは暗唱力で能率よく身につけておくといいのです。(つづく)
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暗唱は、いいことだらけですね。
自分の経験で言うと、高校生のころは、わからない数学の問題があると1時間でも2時間でも考えていました。
どうしてもわからないと、部屋を出て、夜の街を歩きながら考えていました。
今思いだすと、無駄な勉強法をしていたのだなあと思います。
しかし、数学は高校生のころはそれなりによくできたのです。
子供が中3のとき、数学の勉強を見てやろうと、近くの私立高校の入試問題を軽い気持ちで解いてみました。
すると、驚くことにほぼ0点(笑)。
「えー! 高校入試の図形の問題って、こんなに難しいのか」と驚きました。
しかし、それでも、子供の夏休みの数学の勉強で、子供が解法がわからないというところだけ一緒に考えてやっていると、と言っても時間で1日十数分ですが、夏休みが終わるころには、私立でも国立でもどんなに難しい数学の問題でもほとんど解けるようになったのです。
そのときに、数学というのは、解法をどんどん理解して身につけてしまえば自然に応用力が身につくのだということを実感しました。
そして、しばらくやっていないと忘れるが、またやりだせばすぐにできるようになるということも実感したのです。
数学が苦手だと思っている生徒は、ぜひこの解法を丸ごと暗唱するぐらいに理解してしまうという勉強法をやってみるといいと思います。
数学のような考える勉強は、暗記では対応できないと思っている人が多いと思います。
ところが、これが逆なのです。
解法を暗記することによって、解法の応用力がぐんと増すのです。
暗記では効果がないというのは、その暗記がまだ浅いうろ覚え程度のものだからです。
しかし、理解の勉強観を持つ人は、この数学は暗記だという言葉に大きな抵抗を感じるのです。
日西ハーフの子どもたちの授業。日本語はおぼつかないのに、一学年上の算数の問題をスラスラ解く5年生。だってスペインの学校でやったもん、と言う男の子のクラスの先生は解法を覚えさえ、説明できるようになるまで繰り返させるとか。
数学の暗記に言語の壁は無いんだなぁ。
昨日、高三の生徒さんに勉強方法を聞かれたので、気に入った参考書(問題集)を一冊丸暗記と答えました(笑)。
事実、古文も英語も教科書丸暗記でクリアしてきました。
数学にも応用できたのだなあ。
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