音読暗唱が効果的だという例は、身近にもあります。それが小学2年生で習う九九です。
欧米では、九九を暗唱するという勉強法ではなく、掛け算の一覧表を渡されてそれを知識として覚えるという勉強法がとられているそうです。
九九を暗唱するという方法と、掛け算の一覧表を渡されて覚えるという方法と、どちらが合理的な感じがするかというと、一覧表を覚える方です。そのやり方なら、誰でも納得するからです。
九九を暗唱するという方法は、その暗唱文化を経験した人にしか受け入れられません。そのかわり、暗唱文化が受け入れられている社会では、親も先生も迷いなく子供に九九を暗唱させようとします。
もし子供が、「こんなの覚えられない」「面倒だからいやだ」「紙に書いて覚える」などと抵抗しても、うまくなだめすかしてほぼ例外なくすべての子供が九九を言えるようにします。教える大人に迷いがないのは、九九を暗唱する文化が背景にあるからです。
しかし、この九九の暗唱が効果的だということが十分にわかっていながら、インドの20×20までの九九を暗唱させようとする人は日本にはまずいません。それは、20×20までの暗唱文化が日本にないからです。
文章の暗唱ということに関して言うと、戦前までの日本には、暗唱の文化がありました。江戸時代の寺子屋の素読のような組織だったものではありませんでしたが、それぞれの家庭で勉強の基本は暗唱だということが暗黙のうちに理解されていたようです。
だから、昔の子供たちは、小学校しか出ていない学歴の人がほとんどでも、その人たちの学力の水準はかなり高かったのです。
では、なぜ今、暗唱の文化が途絶え、また暗唱をしている人でも暗唱を勉強に結びつけるという発想がわかないかというと、これも戦後の教育の影響ですが、模倣や音読や暗唱や反復という勉強法よりも、理解の勉強法ということが優先されてきたからです。戦後の世代は、理解と知識の勉強法が最も普遍性があるという前提で教育されてきたのです。
小2までは暗唱がよくできるが、小3になるあたりから暗唱が難しくなるというのも、そのころになると学校の勉強でも、「わかる」「覚える」という理解と知識と勉強が増えてくるからです。
理解して身につけるという勉強法では、先生の説明が必要になります。
しかし、理解には個人差があるので、すぐに理解できる生徒と理解できない生徒が分かれます。それを同じような水準にするために、テストとか競争とかいう欧米的な勉強スタイルが一般化してきます。理解の勉強には、先生と授業とテストと競争がセットになるのです。
それに対して、模倣と反復の勉強には、先生も授業もテストも競争も必要ありません。
精選された教材を決めて、それを自分のペースで繰り返し音読して身につければ、それだけで授業的な勉強の何倍も能率よく学力がつきます。
唯一必要なのは、わからないところがあったときに質問できる人がいることだけです。しかし、そういう質問も解説が十分な教材があれば、実際にはほとんど必要ありません。
日本には、九九を覚えるという形で暗唱文化がまだ残っています。
この暗唱文化を、勉強全般に応用していけば、子供たちの学力はどの子ももっと簡単に高くなっていくのです。
(つづく)
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戦後の日本の教育は、アメリカ的な合理主義で塗りかえられましたが、九九の文化や百人一首の文化は社会の中に残りました。
この暗唱文化の活用を再考する時期に来ているのではないかと思います。
私の教室では、暗唱長文ではなく、塾の教科書を暗唱してくる受験生がいました。理科も社会も、ひたすら音読して覚えていたようです。
スペインの現地校に通う娘には、スペイン語と日本語、両方で暗記させました。スペイン語は日本語のようにリズミカルにはいきませんが・・・。おかげで、かけ算割り算だけでなく、四則計算の暗算がはやいです!
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▽10.22オンエア保護者セミナーの詳細(変更点はありません。)
https://www.mori7.com/k1022.php
当日のハングアウト会場のリンク先も上記のページに書いてあります。
10/22(土)の10:30から始まりますが、15分ぐらい前から入っておいていただいて結構です。
入室はあまりぎりぎりにならないように、5分前には入っておいてくださるとよいと思います。
当日の話の中心は、タイトルのとおり、「公立中高一貫校の受験作文に、家庭でどう関わるか」です。
もし、お子様の受験コース課題の作文があり、それを事前にアップしておいてくだされば、その作文の講評も併せて行います。
作文の画像をアップロードされる場合は、作文の氏名などの部分をシールなどを貼って消しておき、画像の泉からアップロードし、その画像のリンク先を、オープン教育の「受験作文小論文の岸」からお知らせください。
https://www.mori7.net/ope/index.php?k=109
なお、この保護者セミナーは、今後も継続して開く予定ですので、今回は送る画像がない場合でも、また別の機会に作文画像アップをご利用ください。
(このセミナーは定員になりました。)
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数学の話の次は、英語の話です。
18ヶ国語を使えると言われたシュリーマンの独学の方法も音読暗唱でした。
同じ文章を大声で何度も読んで暗唱できるようにしているうちに、長い文章も何度か読めば全部暗唱できるような能力が身についていたというのです。
この暗唱力を使って、語学を身につけたのです。
同時通訳の神様とも言われた國弘正雄氏は、只管朗読(しかんろうどく)という言葉で英語の勉強法を表していました。この考えに基づいて英語の音読暗唱を目的としたCDブックを出しています。
今の日本の英語の教科書は会話に偏っているために、音読暗唱しても、文法的にしっかりした文章を身につけるという点で弱い面があります。
教科書以外に、英語の説明文を暗唱する機会を作れば、その生徒の英語の実力は確実に身につきます。
現在、経済学者であり評論家でもある野口悠紀雄さんは、中学生のとき英語の弁論大会に出たことをきっかけに、英語の教科書の音読を始めたそうです。
中学でも高校でも、何度も英語の教科書を音読し暗唱できるぐらいまでになっていると、いつの間にか英語が得意教科になっていました。
野口さんは、勉強法の著書の中で、英語の教科書音読の簡単さとその効果の大きさを力説しています。
この英語の教科書の丸ごと暗唱という方法を取り入れて成果を上げている英語塾もあります。しかし、多くの場合、親も子も暗唱の効果というものに確信を持てないので、長く続けられる子は少ないようです。
人間は、どうしても、問題集を解いて答えを書き込んで○×をつけるというような形の残る勉強の方をやりたがります。
また、教える先生も、教える形が作りやすく、教えたことが形として残りやすい勉強の仕方で授業をします。
音読暗唱をするだけという形の残らない勉強を何年間も続けられる生徒も先生も少ないのです。
英語の教科書音読とは、教科書の1ページを20回から30回音読するだけです。時間で言えば10分程度でできることです。しかし、これを自主的にできる生徒はほとんどいません。
しかし、このときに、言葉の森の暗唱検定などで長い文章を暗唱した経験のある生徒は、英語の文章の音読暗唱という勉強にすぐに取り掛かれます。
このように、暗唱力を、他の教科に生かすということを考えれば、そこからその教科の成績はすぐに上がります。
暗唱力のある生徒が、そういう勉強の方法に気がつけばいいだけなのです。(つづく)
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只管打坐(しかんたざ)というのは、道元の言葉です。あれこれ言わずにまず座れという方法論です。
しかし、これよりも、考案を考えるやり方の方が方法論としてはやりやすい感じがします。
しかし、更にもっとやりやすい方法があるとしたら、禅検定などという名前で問題を解いて答え合わせをするような方法です。
今の日本の教育は、この問題と答えという勉強法に偏りすぎている気がします。
理解の勉強に慣れている人は、内容が合っていれば一文字ぐらい違っていてもいいだろうと考えがちです。
そういう内容把握の勉強ももちろんあります。ほとんどの勉強はそういう形で間に合います。
しかし、暗唱は違ういます。一文字も間違えないように、しかもスピードを上げて暗唱できなければ暗唱ができたとは言いません。こういう勉強法によって初めて身につく能力もあるのです。
高校時代、英語の副読本を担当した先生にあこがれていた時期がありました。
学校の行き帰り(先生を想いながら(笑))、その副読本ばかり読んでいたら、英語だけ学年トップになった、という輝かしい思い出があります(笑)
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暗唱力は、ただ暗唱ができるだけにとどまらず、作文にも国語にも数学にも英語にも役立つという話のここからが本番です。
暗唱がよくできている子でも、また親でも、その暗唱が暗唱以上の勉強力に結びついているという自覚があまりありません。
以前、中学生でときどき暗唱をしている生徒との雑談で、生徒が次の定期テストの話をしてくれました。
「社会は、日本国憲法の前文を暗記できたら、点数をアップしてくれるらしいんですよ」
と、その生徒は他人事のように話していました。そういう奇特な生徒もいるんだろうなあ、という感じの話し方だったので、
「やれば、いいじゃん。いつもやっている暗唱の要領でやればそんなのすぐできるよ」
と言うと、初めて気がついたように、
「あ、そうか」
と言っていました。それですぐに暗唱できるようになったようです。
長く暗唱をしてきた生徒でも、自分が暗唱力があるということに対する自覚がないのです。
よく例に出しますが、本多静六もそうでした。(本多静六、林学博士。一八六六~一九五二)
現在の東京大学農学部の1年生のとき、数学で赤点を取り落第をしましたが、そのあと、数学の勉強法にそれまで身につけていた暗唱の力を利用したのです。
それは、数学の問題集の例題一千題と解法を全部暗記することでした。
数か月でその暗記ができると、それからは、数学のテストは常に満点で、最後には授業に出なくてもいいと言われるほどになりました。
数学は、考える勉強の代表のように思われているので、「丸暗記じゃだめだ」というようなことがよく言われます。
しかし、学問としての数学ならいざしらず、大学入試までの数学は、基本的に解法パターンの暗記によって、解法の応用力がつき成績が上がるという勉強なのです。
数学のできる生徒ほど、数学は暗記だということを理解しています。
数学を考える勉強だと思っているのは、数学のできない人だけです。
文化人類学者の今西錦司さんは、大学生時代、文系なのに数学がよくできるので、同じ文系の仲間から羨ましがられたそうです。
そして、そのうちの一人が、今西さんに数学の勉強のコツを聞いたところ、こともなげに、「ああ、数学は暗記だよ」と答えたそうです。
数学が考える勉強だと思っている人は、難しい問題にぶつかったとき、一生懸命自分の頭で考えようとします。考え出すと、時間はすぐに経ってしまいます。
しかし、数学が暗記だと思っている人は、難しい問題にぶつかったとき、答えを見て解法を理解しようとします。解法を理解するだけなら時間はほとんどかかりません。
このようにして、数学が苦手な生徒と、得意な生徒の差はますます広がっていくのです。
だから、暗唱力のある生徒が数学を得意にする方法は簡単です。
一冊の適度な難しさの問題集を、全部できるようにし、できなかった問題はその問題と解法をまるごと一緒に暗唱してしまうのです。
考えを深める勉強は、文章的なところで行っていくのが基本です。
それは、難しい文章を読んで、その文章がテーマにしていることを自分なりに考えてみるという勉強です。
そういう価値ある勉強をする時間を確保するためにも、数学のような通常の勉強的なことは暗唱力で能率よく身につけておくといいのです。(つづく)
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暗唱は、いいことだらけですね。
自分の経験で言うと、高校生のころは、わからない数学の問題があると1時間でも2時間でも考えていました。
どうしてもわからないと、部屋を出て、夜の街を歩きながら考えていました。
今思いだすと、無駄な勉強法をしていたのだなあと思います。
しかし、数学は高校生のころはそれなりによくできたのです。
子供が中3のとき、数学の勉強を見てやろうと、近くの私立高校の入試問題を軽い気持ちで解いてみました。
すると、驚くことにほぼ0点(笑)。
「えー! 高校入試の図形の問題って、こんなに難しいのか」と驚きました。
しかし、それでも、子供の夏休みの数学の勉強で、子供が解法がわからないというところだけ一緒に考えてやっていると、と言っても時間で1日十数分ですが、夏休みが終わるころには、私立でも国立でもどんなに難しい数学の問題でもほとんど解けるようになったのです。
そのときに、数学というのは、解法をどんどん理解して身につけてしまえば自然に応用力が身につくのだということを実感しました。
そして、しばらくやっていないと忘れるが、またやりだせばすぐにできるようになるということも実感したのです。
数学が苦手だと思っている生徒は、ぜひこの解法を丸ごと暗唱するぐらいに理解してしまうという勉強法をやってみるといいと思います。
数学のような考える勉強は、暗記では対応できないと思っている人が多いと思います。
ところが、これが逆なのです。
解法を暗記することによって、解法の応用力がぐんと増すのです。
暗記では効果がないというのは、その暗記がまだ浅いうろ覚え程度のものだからです。
しかし、理解の勉強観を持つ人は、この数学は暗記だという言葉に大きな抵抗を感じるのです。
日西ハーフの子どもたちの授業。日本語はおぼつかないのに、一学年上の算数の問題をスラスラ解く5年生。だってスペインの学校でやったもん、と言う男の子のクラスの先生は解法を覚えさえ、説明できるようになるまで繰り返させるとか。
数学の暗記に言語の壁は無いんだなぁ。
昨日、高三の生徒さんに勉強方法を聞かれたので、気に入った参考書(問題集)を一冊丸暗記と答えました(笑)。
事実、古文も英語も教科書丸暗記でクリアしてきました。
数学にも応用できたのだなあ。
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1,000字の文章の暗唱といっても、毎日の自習時間はわずか10分です。
朝ご飯前にやると決めておけば、誰でもできます。
そして、暗唱の勉強のいいところは、暗唱した結果があとに残ることです。
だから、子供自身も暗唱ができたあとの達成感があります。
また、先生も、毎日暗唱をしているかどうかを確実にチェックできます。
言い間違えたり、つっかえたり、途中で忘れたりする子は、毎日ではなく、週に数回しか暗唱の自習をしていなかった子です。
毎日10分の自習を欠かさずにしていれば、つっかえるようなことはまずないからです。
ところが、ここにも新たな問題が出てきました。
子供の暗唱をチェックする先生自身が、自分が子供時代に暗唱をした経験がないので、そして、先生はもともと優しい人が多いので、子供の暗唱チェックに甘くなってしまうことです。
小さい子供が、先生の前で、一生懸命やってきた暗唱を思い出して言っているのを聞くと、1、2か所の言い間違いは仕方ないと認めてしまうのです。
このようなことが何度か続くと、子供の暗唱の練習はやはりいい加減になってきます。
単純な勉強は毎日やるのが基本ですが、週に数回やればいいという勉強になってしまいます。
そして、週に数回では、完璧には程遠い暗唱になるので本人もやりがいがなくなり、次第に暗唱をやらないようになってしまうのです。
そこで、暗唱チェックは担当の先生も一応するが、正式のチェックは暗唱検定で行うというようにしました。
字数は3,000字で時間は5分、それを3ヶ月で覚えるのが目安です。更に、3,000字の暗唱が4本できたら、それらをまとめて12,000字を20分で暗唱します。
それぐらい長い文章を暗唱すると、その暗唱は確実に自分の中に残ります。
その際に、せっかく子供の中に残り一生覚えていられるような暗唱をするのだったら、日本の伝統に根ざした文化的な暗唱をしようと考えました。
それまでの言葉の森の暗唱は、作文に使えるような現代の文章の暗唱でしたが、ここで大きく方向転換し、本格的な文化的暗唱に取り組めるようにしたのです。
文化的暗唱というと、枕草子とか百人一首とかいうものももちろんありますが、日本には、そういう文学的な文章だけでなく、深い思想に根ざした古典の文章の蓄積もかなりあります。
今回、改めて日本の古典を集めて読んでみると、その文化の厚さと深さが予想以上だったことに驚きました。
翻って考えてみると、今の私たち大人の世代は戦後教育の影響で、欧米の文化を先に吸収してきたので(サルトルとか、マルクスとか、ヘーゲルとか、いろいろ)、肝心の日本の文化を知らないまま成長してきたのです。
これからの子供たちは、日本の文化を先に学び、それから海外の文化を学ぶという本来の姿に戻っていくと思います。
さて、この暗唱の練習は、単に古典の文章の暗唱だけにはとどまりません。
暗唱には、もっと大きな効果があるのです。
その一つは、人生に対する効果です。そして、もう一つは勉強に対する効果です。(つづく)
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「暗唱? ああ、覚えるやつでしょ」と普通の人は思いますが、暗唱の効果というのは、実はやってみないとわからないところがあるのです。
その効果の一つは、人生に対する効果で、もう一つは、勉強全体に対する効果です。
ただし、その場合、うろ覚え程度の暗唱では不十分です。
忘れようとしても忘れられないぐらいに徹底して暗唱すると、そこで変化が起きてくるのです。
実は、戦後、GHQの教育によって、暗唱の学習法が止められ、歴史を人物を通して学ぶことが止められた経過があるのです。
それは、両者が教育上の高い効果を持っていたからです。
古文の暗唱に取り組んでいる、フランス在住、小学2年生の女の子。お母さんにおこられると「お母さんが鬼にぞなりけり・・・」とボヤクそうです(笑)
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暗唱力があれば、作文はいくらでも上手に書けるようになります。
また、数学の成績も、英語の成績もいくらでも上がるようになります。
担当の先生が毎週電話で暗唱チェックをすれば、家庭でも毎日の暗唱が続けられます。
更に、その暗唱の成果を、暗唱検定で定着させれば、確実な実力がつきます。
しかし、まだこの暗唱の効果を知らない人が多いので、このあと何回かにわたって暗唱の話を掲載します。
ただし、暗唱の勉強をスタートするのに最適な学年は小学2年生より前の学年です。
小3以上になると、学年が上がるにつれて新しく暗唱の練習を始めるのは難しくなります。
そのときには、親も一緒に暗唱の練習をしていくといいのです。
====
言葉の森は、20年以上も前から音読指導を作文学習の中に取り入れていました。
それは、作文は書かせて直す指導だけでは不十分だとわかったからです。
読む力の土台がなければ、いくら直しても作文は上手にならないのです。
読む力がつけば語彙力もつきます。すると、表現の工夫もできるようになり、深く考えることもできるようになり、自然に作文のレベルが上がります。
そういう状態で、難しい課題の作文をかくと、文章力も思考力も伸びていくのです。
しかし、ここに難しい問題がありました。
音読は、本人に任せていてはなかなか続かないのです。
そのいちばんの理由は、やったことがあとに残らない勉強なので張り合いがないからです。
そして、同じ文章を何度も読むので、飽きるのも早いのです。
家庭でお母さんやお父さんが徹底して音読をチェックするのでなければ、子供は自然に、あとに残らない音読よりも、あとに残る問題演習のような勉強をやりたがります。
そして、そういうあとに残る勉強の方が、やった感じがするので、お父さんやお母さんも問題演習のようなものの方を重視するようになってしまうのです。
音読は、作文教室の先生がいくら厳しく言っても、子供はやるようにはなりません。
それは、やはりあとに残らない勉強なので、やったかどうかがチェックできないからです。
「ちゃんと音読してくるんだよ」
「はあい」
「今週の分、音読してきた?」
「はあい」
「毎日、朝ごはん前に音読するんだよ」
「はあい」
と、全部、いい返事をしますが、1週間毎日音読している子はほとんどいませんでした。
やるとしても、せいぜい授業が始まる直前に読むぐらで、しかも黙読の飛ばし読みのようなことも多かったのです。
お母さんに、音読をするように頼んでも同じように、
「毎日やっているみたいです」
「そうですか……」
「自分の部屋で」
自分の部屋で音読などするわけがありません。
親が近くにいて聞いていなければ音読は、まず絶対にできないのです。
なぜ、親のいる前で音読をしないかというと、音読をすれば必ず親に注意をされるからです。
なぜ親がすぐ注意をするかというと、親自身が子供時代に音読をした経験がないので、子供の音読をしているときの気持ちがわからないからです。
このような事情のために、効果のある音読がなかなか普及しない状態が続いてきたのです。
そこで、言葉の森が考えたもうひとつの方法が、音読と並行して暗唱をすることでした。
しかし、暗唱と言っても、方法論がなければ子供は途方に暮れてしまいます。
そこで、江戸時代の教育書「和俗童子訓」をヒントに、100字を100回繰り返し音読して暗唱するという方法を現代風にアレンジして、約1,000字の文章を1ヶ月かけて暗唱する方法を開発しました。
これなら誰でも暗唱ができるようになるのです。(つづく)
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暗唱は、幼稚園年長や小1ぐらいから始められます。
しかし、もっと早く、子供がまだ字も読めない小さいころからでも、親が暗唱の練習をするという形でやっていくといいのです。
そうすれば、読み聞かせの代わりに暗唱を聞かせてあげることもできるので、読み聞かせの本を持つ手がくたびれるということもありません(笑)。
たぶん、昔の、電灯がなく本もない時代の親子の関わりは、そういう形で行われてきたのだと思います。
この4月に暗唱検定を始めたときは、検定試験に参加できる子はまだほとんどいないと思っていました。
ところが、蓋を開けてみると、次々と暗唱検定に挑戦する子がいたので驚きました。
その子たちは、暗唱検定がある前から、ずっと家で暗唱の自習を続けていたのです。
そして、10月の時点で既に22人の子が、約3,000字5分の暗唱検定に合格しました。
今はまだ多くの子が小学校中学年程度ですから、暗唱ができてすごいというだけですが、この子たちが中学生、高校生になり、この暗唱力を生かせるようになると、勉強面では余裕の好成績を維持できるようになると思います。
そして、その余裕を、自分らしい個性を伸ばすことに生かしていくといいのです。
小4の娘も暗唱を頑張っていますが、やはり、もっと小さいときの方がすんなり覚えてたような気がします。どうも古文などは「これはどういう意味か。何を言っているのか」と考えてしまうようなのです(笑)。
親も一緒に暗唱をがんばってみます!
暗唱は、学年が上がるほど苦労する生徒が多くなりますね。覚えようとせず、ただひたすらお経のように読むのがコツなのでしょうね。
親の都合で海外在住を余儀なくされた小5の女の子。0から始めたスペイン語でしたが、小6の終わりにクラスでトップクラスの成績に。秘訣を聞いたら、教科書ぜんぶ暗記しました、と・・・。
2020年にはセンター試験もあり、考える力がますます重要になりそうですね。
すみません、コメント入れる記事間違えました。
親の都合で海外在住を余儀なくされた小5の女の子。0から始めたスペイン語でしたが、小6の終わりにクラスでトップクラスの成績に。秘訣を聞いたら、教科書ぜんぶ暗記しました、と・・・。
自分が好きだと思う文章を暗唱していくことも楽しいと思います。
また論語なども子供たちにとっては、外国語のようで楽しいようです。娘が通う学校でも論語の暗唱が課題として出されました。
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公立中高一貫校の受験作文は、昔は、書きやすい身近な題名課題が中心でした。
今でも、帰国子女枠の受検作文は、そういう身近な書きやすい題名課題のところが多いのですが、それ以外のほとんどの学校は、文章を読んでの感想文課題になっています。
しかも、難度の高いところでは、その文章が複数出されて、複数の文章の関連性を読み取りながら書くような形のものが多くなっています。
中学受験作文の共通点として、もうひとつ特徴があるのが、「自分の体験にもとづいて」という条件です。
人生、学問、言葉、文化というような抽象的なテーマを、自分の体験にもとづいた実例を入れながら書かなければならないのです。
だから、受験作文には、家庭での対策が必要になってきます。
家庭での関わり方には二種類あります。
第一は事前の関わりで、体験実例の似た例を親子で予習しておくことです。
第二は事後の関わりで、書き上げた作文の表現を親子で推敲していくことです。
今回、オンエア保護者セミナーとして、実際の作文入試課題をもとにした親子の関わり方の例を説明することにしました。
下記の要領でセミナーを行いますので、参加を希望される方は末尾の
参加予約フォームからお申し込みください。
●オンエア保護者セミナー
●テーマ
「公立中高一貫校の受験作文に、家庭でどう関わるか」
●講師
中根克明(森川林 作文教室言葉の森代表)
●日時
10月22日(土)10:30~10:55(25分間)
●会場
googleハングアウトで行います。(スマホ、タブレット、PCのいずれからでも参加できます。)
https://hangouts.google.com/call/3c4uurnyxfcnvdvbjl5zlt6x5me
(10分前から入れます。入室する際は、マイクをミュートにしておいてください。ウェブカメラはオンでもオフでもどちらでもかまいません。ウェブカメラがなくても参加できます。)
●参加費
・言葉の森受験作文コース受講中の生徒の保護者………………無料
・受験作文コース以外の言葉の森の生徒の保護者…………500円(受講料と合わせての自動振替)
・言葉の森の生徒の保護者以外の方……………………2,000円(銀行口座からのお振込み)
▽銀行からお振込いただく場合の言葉の森の口座
三井住友銀行 港南台支店 普通 6599615 株式会社言葉の森
●定員
6~7名まで(先着順)
●お申し込み
参加予約は、下記のフォームからお願いします。
▼参加予約フォーム
https://www.mori7.com/kform.php?k=1022
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公立中高一貫校の受験作文、大人でもどう取り組んでよいかわからず途方に暮れるような問題があります。
模範解答を読んでも、それを参考に書くのは難しいと思います。
体験実例、ここがポイントですね。
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