小学生のうちは、難しい勉強をする必要はないと私は思っています。
しかし、読書については、読めるのであれば、小学生のうちからできるだけ難しい本を読んだ方がよいと思っています。
この両者がどう結びつくかというと、それは次の図のような関係になっているのです。
┃易しい┃難しい
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大事┃ 2 ┃ 1
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小事┃ 3 ┃ 4
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読書の難しさは1(第1象限)の難しさという意味です。
勉強の難しさは4(第4象限)の難しさという意味です。
小学校低中学年の算数で難しい問題を作ろうとすると、読みにくい問題文にするような方向に進みます。これは、重要でない難しさです。
小学校低中学年の算数の勉強自体は重要ですから、難しいものをやるよりも基本をしっかりやっておけばいいのです。
読書の場合は、事情がやや異なります。
それは、本を書く人が、重要でないことを難しくわかりにくく書くという動機を持たないからです。
だから、難しい本の場合は、意味があって難しいことが多いのです。
受験の問題として出されるようなものは、重要ではないが差がつきやすいという難しい問題です。
そして、難しい勉強は、易しい勉強よりも時間がかかります。
すると、難しい勉強をすることによって、その子の勉強以外の自由な時間が圧迫されてしまいます。
では、重要ではないが難しい勉強はどのように取り組めばいいのでしょうか。
それは、受験の前などで、その勉強が必要な短期間に集中して取り組むのです。
重要でない難しい勉強は、パズルのような勉強ですから、その解法パターンを集中して覚えれば短期間で成績が上がります。短期間というのは、半年からせいぜい1年です。
そして、受験直前でない時期は、易しい難しいにかかわらず、大事なことを中心にやっていくといいのです。
大事なことというのは、将来社会に出てから役に立つことです。
それは、主に、読書と経験です。
だから、小学生のころは、勉強は短い時間で終えて、その分読書と遊びに時間を費やしていくといいのです。
言葉の森では、通信指導で作文の授業を受けている子がほとんどで、通学で授業を受けている子は、全体の5~10パーセントです。
通信指導でも、担当の先生が毎週生徒の自宅に電話をして指導をするので、電話指導のすぐあとに勉強を開始すれば、通学の教室と同じ流れで勉強できます。
また、今は、ネットの活用によって通信だけでいろいろなことができます。音声のやりとりだけでなく、映像のやりとりもできるので、時間や場所の制約はほとんどありません。
しかし、通信指導の唯一の弱点は、子供たちどうしのリアルな交流ができないことです。
学校がなぜ楽しいかというと、休み時間に友達と遊ぶ機会があることです。そういうちょっとした交流が子供たちにとっては大事なのです。
そこで、言葉の森では、春休みや夏休みを利用して遠足や合宿の企画を行っています。
この合宿の柱は、第一に子供・父母・講師の交流、第二に自然との触れ合い、第三に寺子屋的勉強です。
実際に、合宿に参加した子供たちは、短い日数の交流であっても、一緒に遊んだり食べたり寝泊まりした友達をよく覚えています。
しかし、1泊か2泊の合宿ですから、交流と遊びが中心で、勉強的なことはあまりする時間がありませんでした。
そこで、言葉の森では、今後長期滞在もできる合宿も行えるようにし、勉強の時間も普段と同じように確保できる自然寺子屋合宿というものを考えています。
以下は、そのための未来のアイデアです。
まず、参加できる生徒は、言葉の森の生徒だけでなく、日本及び世界の小中学生です。
特に、アジアでは、現在日本語教育熱が盛んなので、日本語を学ぶために短期留学をしたいという小中学生が参加できるようにします。
子供どうしの交流や、自然との触れ合いなどは、企画をすればすぐにできますが、問題は多様な言語や多様な学習進度を持つ子供たちの勉強です。
この勉強の方法が、自学自習です。
スタディサプリなどの映像授業の教材を使い、解説の詳しいテキストを使えば、ひとりでもある程度の自学自習はできますが、そこに担当の先生の勉強チェックが入るようにします。ちょうど寺子屋オンエアのような仕組みです。
また、自学自習の勉強の中には、暗唱検定に向けた暗唱の練習、kindleを利用した読書などの時間もあります。なぜkindleによる読書かというと、1端末に何百冊でも入り、外に遊びに行ったときも自分の読みたい本を持ち運べるからです。
担当の先生は、ネットでつながった先生ですから、その合宿所にいる必要はありません。自宅のネット環境を利用して、合宿所にいる子供たちの勉強チェックをして、質問があればその質問にも答えます。
だから、アジアの子供たち、例えばベトナムの子は、ベトナムにいる先生からベトナム語を併用して日本語教育の勉強チェックを受けることができます。インドネシアの子はインドネシアの先生から、台湾の子は台湾の先生から自学自習の勉強をチェックしてもらうのです。
ネット教材を利用した自分に合った勉強の自学自習+その子の進度に合った担当の先生による勉強チェックという仕組みがあれば、いろいろな言語、学年、進度の子が同時に同じ場所で自分に合った勉強ができます。
そして、勉強が終わったら、その多様な言語、学年、進度の子が、一緒に自然の中で遊ぶのです。
その合宿所で子供たちのリアルな世話をするのは、その地域に住んでいる人たちで、この教育を理解してくれる人たちです。
また、その勉強の様子や遊びの様子は、随時ネット配信をして、自宅にいる家族が子供の様子を安心して見ていられるようにします。
こういう形で長期間の自然寺子屋合宿を行えば、参加者は自分の希望に合わせて、長い日数も短い日数も自由に選んで参加できるようになります。
そして、中には、1年中そこで合宿して勉強をし、たまに家族のもとに戻るというような子も出てくるかもしれません。
特に、海外から留学する形で来た子は、長期間の滞在型の勉強になることが多いと思います。
こうして、日本のある自然の豊かな山奥で、又は海辺で、日本と世界の子供たちが、日本語教育を中心として全教科の勉強を自学自習で学び、自然の中で交流するというちょっと不思議な学校ができるのです。
更に、この学校が何年も続くと、中には講師の中で、ついでにそこに住んで自分の仕事と子供の教育を両立させたいと思う人も出てくるかもしれません。
そういう人たちが増えてくれば、そこにその人たちの需要に基づいたいろいろな供給の仕事が生まれるようになります。
また、講師の中には、自分の得意分野を生かし、ネット教育で世界中に新しい講座を発信するような人も出てくると思います。
そういう新しい創造的な仕事が生まれるようになると、その合宿の学校を中心とした地域は、単なる人口増によらない新しい価値を生み出すようになります。
こうした学校を中心とした町の発展は、学輪町と呼ぶことができます。ちょうど、お寺を中心に発展した町を門前町と呼ぶのと同じです。
こういう学輪町が日本中の自然の豊かな田舎に生まれ、それらの町が、日本語教育を中心とした国際教育と新しい文化創造の場になっていくのです。