夏休み1ヶ月の猛特訓で秋から成績が急上昇、ということはあり得ます。
しかし、同じ夏休み1ヶ月の猛特訓で、秋から作文が見違えるほど上手に、ということはありません。
勉強の成績は知識として身につけるものなので短期間で上がりますが、作文のような学力に属するものは考える力を必要とするので上達に長い時間がかかるのです。
勉強にももちろん考える要素があります。しかし、成績を上げるコツは、その考えて解く解き方を知識として覚えることです。だから、短期間で成績は上がります。
一方、作文も、短期間で上手になることはあります。しかし、それは作文力が上達したからではなく、本人の作文を書く意欲が増したからです。
だから、意欲的に書く回数が増やすことは大事ですが、作文力をつけることはそれとはまた別の長い時間が必要なのです。
では、長い時間を必要とするその学力は、どこで育つのかと言えば、それは家庭での生活によってです。
学校で国語の勉強を毎日1時間やっているとしたら、1年間でずいぶんたくさん勉強をしたように思えます。しかし、国語力は実際には、家庭での読書によって育ちます。
読書好きな子が家で毎日1時間本を読み、読書嫌いな子が家ではほとんど本を読まないとしたら、1年間でついたその差を学校や塾の勉強だけで補うのはほぼ不可能です。こういう生活の差が学力の差になっているのです。
「学力の経済学」という本では、就学前教育の大切さが書かれています。
4歳の子に、毎日2.5時間読み書きを教え、週に1回90分の家庭訪問をしたところ、その子たちが社会人になったときに、そういう教育を受けなかった子供たちに比べて、仕事や収入の面で大きな差があったというのです。
著者は、それを具体的な数字で、4歳のころの100円の投資が、65歳には6千円から3万円になっていたと書いています。
この教育による影響力を、著者は、先生の教育力として述べていますが、私は、毎日の2.5時間の先生が教えた勉強よりも、週に1回90分の家庭訪問による家庭の変化の方が大きかったのではないかと思います。
私立の小中高一貫校で、大学入試の結果を出すのは主に高校から入学した生徒だというのは、よく聞く話です。学校の教育力はもちろんありますが、その土台となっているのは家庭での生活の中における教育力です。
そして、その家庭での教育力は、成績よりもむしろその子が成長したあとの社会生活の中に現れてくるものなのです。
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ときどき、「偏差値が○○も上がった」などという話を聞きますが、それは成績が上がったのであって、学力が上がったのではありません。
成績は主に知識によるものですから、短期間で上がることは十分にあります。
受験期の勉強は、成績を上げることを重点にしていく必要があります。
しかし、普段の勉強は成績よりも学力をつけることを重点にしていく方がいいのです。
勉強の成績は、次の学期からすぐに上がるということはありますが、作文はそういうことはありません。
作文は、忘れたころに上がるのです。天災みたいですが。
生活面はもちろんですが、学習面も、基盤となるのは家庭ですね。
作文が急にうまくならないのは、それだけ奥の深い勉強だからなのでしょう。本当の実力が表れるのが作文とも言えそうですね。
親の立場で考えると、どうしても「成績」イコール「学力」と考えがち
まずはそこから改めないと……
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プログラミング教育がブームになっています。
新しいものごとは、情報が不十分なので、よい面だけ、悪い面だけがひとり歩きすることがあります。
そのときに必要なのは、教育の原則です。
プログラミング教育のプラス面と、マイナスとは言いませんがその注意する面の両方を書いておきたいと思います。
まずプラス面としては、次のようなものがあります。
第一に、プログラミング教育は、これまでの日本では遅れた分野だったということです。だから、プログラミング教育を進めるのは、日本の社会にとっても必要なことです。
第二に、他の教科と違って、結果がわかりやすく出るプログラミング教育は、子供の学習意欲を引き出し、勉強を楽しいものにする可能性があるということです。
第三に、プログラミング教育は、将来社会人になったときも役立つ一般教養になるということです。ちょうど自動車運転の技術が役に立つような感じで、その技術を持っていれば便利なことが多いのです。
だから、子供が小さいころからプログラミング教育を受け、その分野に得意意識を持っていくことはよいことです。
しかし、この早期のプログラミング教育には、次のような注意する面もあります。
第一は、プログラミング教育を優先するあまり、学力の本道を後回しにするようなことがあってはならないということです。
第二は、早めにプログラミング教育に得意になったのはいいが、後が続かないこともあり得るということです。
これは、英語、読書、算数、スポーツなどの分野の早期教育にも言えます。
子供のときに、それらの分野に得意になったとしても、肝心の学力の育成を後回しにしてしまったり、子供時代だけの得意で終わらせてしまったりすることがあるということです。
では、どうしたらよいかというと、対策は二つあります。
第一は、学力の本道である日本語力や経験力の習得を優先することを忘れないということです。プログラミング教育は、教育の広い分野から見れば、枝葉の教育なのだという軽重のバランス感覚を忘れないことです。
第二は、プログラミング教育のような個性を伸ばす枝葉の教育においても、広く楽しそうな入口があることよりも、高い出口があることを教室選びの選択の基準にするということです。
現在の社会では、子育てに関する情報は、いいことも悪いこともふんだんに流れてきます。
だからこそ、保護者が原則をしっかり持って子供の教育を考えていくことが大事なのです。
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酉年にちなんで、スズメの鈴なりの写真です。
でも、本文は写真とは関係なく、プログラミング教育についてです。
ブームになっているものほど、原則を考えておく必要があります。
ちなみに、私は、プログラミング教育については大賛成です。これは、子供たちにとって勉強の中でいちばん面白いものになると思います。
写真と本文は関係ありませんが、プログラミング教育のような新しいものほど、親は中身を判断することが必要です。
いちばんの原則は、普通の学力さえしっかりつけておけば、プログラミングの学習はいつになってもできるということです。
だから、焦らないことです。
もう一つは、導入部分の楽しさよりも、先に進んだときの高さを基準にするということです。
プログラミング教育も、早期教育には英語教育と同じように良い面、悪い面がありそうですね。
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