ログイン ログアウト 登録
 Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 2981番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/12/5
学力の厚みを育てる高度なゆとり教育 as/2981.html
森川林 2017/07/05 04:31 

 勉強のスタイルの違いとして、発表型の勉強と聴講型の勉強とがあります。
 これまでの学校における勉強は、ほとんどが椅子に座って先生の話を聞くという聴講型の勉強でした。
 聴講型の勉強は、居眠りをする人も出てくるし上の空で聞く人も出てくるので、一般に取り組みの意欲が低いのが特徴です。
 この意欲の低さをカバーするために、試験で評価し競争を行うということが行われてきました。

 これに対して発表型の勉強は、参加する人が自然に自分の頭脳を活性化させて取り組みます。
 しかし問題は、基礎的な学力や勉強に対する意欲が伴わない中で発表型の学習を行うと、焦点の定まらないゆとり教育のような形になってしまうことがあります。

 思考発表クラブに参加している子供たちを見ていると、ほとんどの子が積極的に自分の作品を発表し、他の人の発表に対して質問したり感想述べたりしています。
 発表している作品の内容を見てみると、どれもかなり長い時間をかけたことがうかがえます。

 昔の勉強スタイルになれている人が、この子供たちの時間をかけた準備や発表を見ると、もっと能率よくやることが大事だと考えることもあると思います。
 しかし、勉強における能率は、受験のときだけで十分なのです。
 受験期でない時期に能率よく勉強をやろうとすると、それはかえって厚みのない学力を育てることになります。
 子供の本当の学力を育てるためには、厚み、つまり伸びしろのある勉強をしていくことが大切なのです。

 そのために大事なことは三つあります。
 第一は、時間の余裕です。
 今の子供たちはいろいろな習い事に追われています。
 しかし、義務感でやるような時間はなるべく制限して、本人が好きなことに熱中できる時間を確保しておくことが大切です。

 第二は、保護者が自主的に主体的に取り組む勉強の大切さを理解していることです。
 詰め込み型の勉強に比べると、主体的に取り組む勉強は時間をかなり取られます。
 しかしその遠回りの時間が、その子の本当の実力を育てているのです。

 第三は、子供の勉強に親が協力的に関わることです。
 教育は、子供と保護者が協力して取り組んでいくものです。
 こういう協力は、親にとっては負担に感じる場面もあると思います。
 しかし、この負担は実のある負担です。あとになれば、必ずこれが価値ある負担だったということが分かるはずです。
 だから、小学校時代は親ができるだけ子供の勉強に関わるような形でやっていくことです。
 そのときの親の関心は、成績ではなく、勉強の中身に向けていくことなのです。

 これからの勉強の理想は、このような高度なゆとり教育になっていくと思います。
 こういう発表型の勉強をする一方で、その発表を支える基礎学力を育てるために、家庭で自学自習の勉強スタイルを身につけていくといいのです。

この記事に関するコメント
コメントフォームへ。

森川林 20170705 1 
 子供たちが、作文の構想図を書いたり、算数の似た問題を作ったりするときに、そこにカットを描いたり、色を塗り分けたり、俳句を添えたりという余分な工夫をしていることがよくあります。
 勉強の能率から考えれば、そういう飾りのようなものは不要だということになります。
 しかし、実はそういう余分に思われるものこそ、その子が勉強を楽しんで取り組んでいる証拠なのです。
 勉強をノルマのように考える子と、主体的に取り組む遊びと同じように考える子との差は、学年が上がるほど大きくなってきます。


nane 20170705 1 
 低学年のときに勉強がよくできているのに、学年が上がるとだんだん伸び悩んでくる子がいます。
 そういう子に共通しているのは、ノルマ型の勉強をしていることです。
 勉強を楽しむのではなく、与えられたことを次々とこなしているだけなのです。
 ノルマ型の勉強は、受験のときに割り切ってするものです。
 小学校低中学年の間は、勉強に主体的に取り組むという姿勢が大切なのです。


同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
発表学習クラス(0) 

記事 2980番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/12/5
モンテッソーリ教育、シュタイナー教育、寺子屋教育 as/2980.html
森川林 2017/07/04 04:19 

△那須野が原公園。那須キャンプの下見に行った子供たち

 モンテッソーリ教育を特徴づけているものは、教材という方法ではなく、その取り組み方という姿勢の方です。
 モンテッソーリ教育は、個性と意欲と集中力をを育てると言われています。
 それは、そこで行われている学習方法が、単なる知識の学習ではなく、作業的、主体的な学習として行われるためです。

 主体的な学習は、子供たちが、自分の関心のままに集中して取り組みやすいものなので、長時間その学習に熱中することができます。
 その意欲の持続という取り組み方が、その子の個性と集中力を育てる教育になっています。

 しかし、だからといって原始人がモンテッソーリ教育で優れた能力を育てるようになるかというと、そういうことはありません。
 意欲は高いに越したことありませんが、能力や業績として現れるのは、意欲を高さとする三角形の面積だからです。
 その三角形の底辺は知識なのです。

 ところで、シュタイナーは、この知識を、言葉の上だけで覚えたり理解したりする知識ではなく、本人の実態と世界の実態に直接触れる形での生きた知識として習得することを強調しました。

 モンテッソーリ教育も、シュタイナー教育も、教育が人為的な方法で外側の枠組みとして与えられることに対する批判として登場しました。
 意欲も知識も、内部から育つものでなければ、その人の人生にとって生きた意欲や知識にならないということをこの二つの教育は示しています。

 さて、知識は広がりを持つだけではなく、濃淡を持っています。
 その濃淡は、単に個性に委ねられるだけではなく、ある程度共通性のある社会的に重要な知識と軽易な知識とに濃淡を分けることができます。

 その重要な知識を反復して身につける教育が寺子屋教育でした。
 反復教育を、意欲や実感の教育と反対のものだと考える人がいますが、そうではありません。
 知識を底辺とし、上向きの高さである意欲と、同じ知識を上辺とし、下向きの深さである反復の三つの変数が形成する四角形の面積が、人間の能力であり将来の業績になるものです。
 業績とは、自己実現と創造と社会貢献のことです。

 教育には、この意欲の高さ、知識の実感的広がり、そして重要な知識の血肉化という三つの要素が必要なのです。

この記事に関するコメント
コメントフォームへ。

森川林 20170704 1 
 これまでの教育は、受験に合格することに単純化されてきました。
 それは、社会が工業生産の拡大という流れに単純化されていたからです。
 しかし、教育の本来の目的は学校に入ることではなく仕事をすることです。
 将来どういう仕事をして生きていくかという準備と土台作りとして教育があります。
 ところが、大人自身がそういうライフプランを描けていないので、とりあえずの合格が教育の目標になっています。
 しかし、目標が単純化されればされるほど、教育はノルマのようになっていくのです。

nane 20170704 1 
 子供たちは、学校で勉強する時間が与えられているので、どの子も同じように勉強しているように見えます。
 しかし、義務感で取り組んでいる子と、学ぶ喜びとして取り組んでいる子の差は、実はかなり大きいのです。
 時間をかければ、誰でも成績は上がります。大事なのは、成績という結果ではなく取り組み方の姿勢の方です。
 しかし、その姿勢は本来、外からの評価にはそぐわないものです。
 だから、家庭での勉強観が大事になるのです。


同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
教育論文化論(255) 
コメント31~40件
……前のコメント
優しい母が減っ 森川林
 娘さんの友達から怖がられているというお母さん、コメントあり 5/8
記事 979番
優しい母が減っ 娘の友達
娘は中3。私は自称甘い母親です。世の中の厳しい先輩ママたちか 5/7
記事 979番
学習グラフのペ 森川林
言葉の森の今後の方針は、デジタルなデータをアナログで送信する 5/6
記事 5058番
森リンベストの 森川林
じすけ君、ありがとう。 統合失調症のような、また似たような 4/21
記事 4657番
森リンベストの じすけ
こわばんは 今日は元気一杯、体験発表をさせて頂きます。 4/20
記事 4657番
国語読解問題の 森川林
 あるとき、高3の元生徒から、「国語の成績が悪いのでどうした 3/28
記事 5034番
今日は読書3冊 森川林
苫米地さんの「日本転生」は必読書。 3/25
記事 5030番
共感力とは何か 森川林
言葉の森のライバルというのはない。 森林プロジェクトで 3/23
記事 5028番
3月保護者懇談 森川林
 いろいろ盛りだくさんの内容ですが、いちばんのポイントは、中 3/22
記事 5027番
中学生、高校生 森川林
 意見文の書き方で、もうひとつあった。  それは、複数の意 3/14
記事 5018番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
WinSCPの 森川林
ダウンロードとインストールは、特に問題なく、次々と進めて 12/4
プログラミング掲示板
Re: 標準新 森川林
 これは、確かに難しいけど、何度も解いていると、だんだん感覚 12/2
算数数学掲示板
標準新演習算数 あかそよ
3の1はできました。 2は、答えを見るとなんとか理解できま 11/23
算数数学掲示板
2024年11 森川林
●サーバー移転に伴うトラブル  本当に、いろいろご 11/22
森の掲示板
現在森リンベス 森川林
このあとの予定。 ・森リンベストを直す(直した) ・森リ 11/20
森川林日記
Re: 入会手 言葉の森事務局
 お世話になっております。  弟さんのみご入会が1週間 11/15
森の掲示板
入会手続きにつ やすひろ
お世話になっております。 個別掲示板を開けませんので、ここ 11/15
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習