思考発表クラブでは、毎週、最初に生徒が今読んでいる本の紹介をしています。
そのあと、作文の構想図を発表し、自分の自由な学習を発表し、互いに感想を述べ合います。
本の紹介を始めた最初のころは、本番となる授業の作文構想図や算数の似た問題の話に入る前のウォーミングアップのつもりでした。
しかし、それぞれの生徒が自分の読んでいる本を紹介するというやり方がなかなか面白く、今ではこの読書紹介が、最初の15分から20分の勉強の柱の一つになっています。
この本の紹介は、最初のうちはどの子も難しく思っていたようです。
しかし、毎週紹介を続けているうちに、どの子もかなり上手に本の説明と心に残ったことの説明をできるようになりました。
生徒がまだ小1や小2のころは、ほかの人がどういう本を紹介しているかということにはまだ大きな関心はないようです。
しかし、小3や小4になると、ほかの人がどんな本を読んでいるか、そして自分がどんな本を紹介するかということに強い関心を持つようになります。
だから、「○○さんが先週紹介してい本が図書館にあったので、私も借りてきて読んでみました」というようなことがよくあります。
小5や小6になると、読んでいる本のレベルも大人並みになります。それぞれの生徒がかなり個性的な読書をしているので、その紹介を聞いているだけで互いの知的な刺激になるようです。
毎週読書の紹介をするわけですから、読書が進まず1週間同じ本を読んでいたというようなことはまずありません。
ひとりで読書をしていると、読む習慣が途切れるということもありますが、本の紹介という主体的に参加できる授業が待っていると思うと、毎日読み続ける生活が自然にできるようになるのでしょう。
これからの人間の寿命は、100歳を超えることが当然のようになるという予想がされています。(「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)100年時代の人生戦略」リンダ グラットン)
現在は65歳で定年になっても、まだ働く力は十分にあり、しかも年金だけでは将来の生活が不安だという状況があります。
これが、100歳まで長生きすることになるとしたら、人生設計を根本から考え直さなくてはなりません。
定年後の人がもし早めに新しい仕事を見つけることができれば、定収があることによって安心感は増しでしょうし、仕事をすることによって生活に張り合いが出てきます。
新しい仕事をする上で大事なことは、その仕事をできるだけ長く続けていくことです。
それは、長く続けることによって、その仕事に習熟し、自分の持ち味を生かせるようになるからです。
では、何がこれからの仕事として有望なのかというと、それはこれからの社会で価値が増すものに関わる仕事です。
今後の世界で価値が出てくるものは、食料でも、エネルギーでも、ゴールドでも、不動産でも、あるいは何らかの資格や学歴や知識や技能でもありません。
というのは、これからの時代は、エネルギーや資産や個人の能力は、技術革新や人工知能の代替によって価値が低下することが考えられるからです。
また、物だけでなくサービスも、次第に供給過剰に陥り、激しい競争の中で行われるようになります。
そういう時代に、最後に価値あるものとして残るのは何かと言うと、それが人間の創造力なのです。
創造力あるいは創造がどのくらい価値あるものかというと、例えば緑色植物が発明した光合成が現在の地球にもたらした価値を考えてみればわかります。
また人間の創造に限ってみても、言語の発明、火の利用の発明、車輪の発明、水車の発明などが、どれくらい大きな富を生み出したかは十分に想像できると思います。
だから、最も価値ある仕事は、創造することなのです。
創造する仕事は、自分が創造することに限りません。創造する子供たちを育てることも、創造的な仕事です。
これまでの教育は、子供たちが一人前の社会人になるように、決められた知識を覚えさせることが中心になっていました。
だから、子供の個性や創造性は二の次でした。
しかし、これからは子供たちの個性と創造性を育てることが、社会全体の目標になります。
なぜなら、それが豊かな社会を作るために最も役立つことであり、同時にそれが子供たちの幸福な生き方にとっても最も望ましいことになるからです。
決まった知識を覚えさせるこれまでの教育の場合は、一斉授業や一斉テストで十分でしたが、子供の創造性を育てるためには、それぞれの子供の個性に応じたていねいな働きかけが必要になります。
そのためには、現在のように30人学級で、先生1人が30人を教えるようなやり方ではなく、生徒1人に1人又は複数の大人がつくようなスタイルで教育をしていく必要があります。
そのようなていねいな教育によって、どの子もその個性によって社会に新しいものを創造する力を育てていくようになるのです。
この子育ての教育に最も適しているが、年配者です。それは、年配者は長い人生経験の中で、子供時代に必要なものは何だったかということが、理屈ではなく実際の経験としてわかるからです。
自分自身や自分の身近な人の子供時代を思い出すことが、未来の子供たちを育てる貴重な示唆になるのです。
創造する教育のための子育てと、それを担う高齢者の教育事業への参加という社会の仕組みに最も近い位置にあるのが日本だと思います。
言葉の森の森林プロジェクトによる作文講師資格講座も、こういう大きな流れの中で行っていきたいと思っています。
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