「作文が全然書けないんです」という相談を、小学校1、2年生の子のお母さんからよく受けます。
学校から宿題で出された作文が、全然書けないと言うのです。
なぜ書けないかというと、いちばんの原因はこれまでに作文を書いたあと、たくさん直されたり注意されたりしたことがあったからです。
子供はもともと無邪気なものですから、間違っていようが正しくなかろうが何でも自分の力でやりたいと思っています。
それが作文の場合にそうならないのは、かつて作文を書いたことがあり、それを自分が予想もしていなかったところで、たくさん注意されるようなことがあったからです。
小学校1、2年生で本をたくさん読んでいる子であれば、比較的正しい作文はかけます。
しかし、ほとんどの子は、書けば、必ず間違ったところやおかしいところが出てきます。
では、作文が書けない子に対してどうしたらよいかというと、まず作文が書けないという状態を続けてはいけないのです。
子供が作文用紙を前にして途方に暮れている様子を、近くにいるお母さんが見ているだけで、そのままにしておけば、作文に対する苦手はその途方に暮れている時間に比例して大きくなっていきます。
子供が作文が書けないときは、すぐに手助けをしてあげるのです。
その手助けは、例えば、近くにいるお母さんが口頭で書くことを言ってあげることです。
そして、言ったとおりに書けたら褒めてあげるというやり方でよいのです。
何しろ書くという作業をに入ることが大切で、それを自分でやらせるということはそのあとの問題です。
これは、自分が子供の立場になってみればわかることです。
何かができないで困っているとき、その状態を続けるのは苦痛です。
手助けをしてくれる人がいれば、心からうれしく思い、やがて自分の力でできるようになりたいと思います。
手助けしてくれる人がいるから、自分はこれからもできなくていいやと思うような子はいません(笑)。
それは、子供は、というよりも人間は、誰でも自分の中に向上心を持っているからです。
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勉強を教えるときに大事な姿勢は、子供は成長する存在だということです。
その成長を促すためには、できないことを叱るのではなく、できたことを褒めることです。
人間は、褒めて励まされれば、もっとがんばろうと思うものです。
外に出れば、子供はいろいろな困難に遭遇しています。
家の中では、そういう困難なしに安心して甘えられる環境を作っておくといいのです。
低学年の子のお母さんで、「作文が苦手で……」という相談が多いのは、学校や塾で作文を直す指導ばかりしているからです。
書かせて直すという指導は、大人の添削の場合はありますが、初めて作文を書くような子については、まず正しい文章を読み慣れることが必要なのです。
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作文力のいちばんの基礎になるものは読書力です。
その読書力をどのように発展させるかについて述べていきます。
まず第一は、幼児期からの読み聞かせです。読み聞かせは、耳から入る読書です。
本は目で読むだけではなく、耳で聞くことによって、その文章を理解し考える力が育ちます。
聞くことで読む力を育て、それがその後の自分で読む力のもとになっていくのです。
この読み聞かせを、親がするだけでなくオンラインの読み聞かせサークルのようなものを作って進めていくこともできます。
以前、読書実験クラブという企画で、科学の本の読み聞かせをしていましたが、子供たちは皆熱心に聞いていました。
これを今後、森林プロジェクトの企画などで広げていきたいと思っています。
第二は、自分で本を読めるようになった時期の子供の読書の習慣作りです。
子供たちの中には、家庭で読書をする習慣のあまりない子もいます。
読書は学校でするものではなく、家庭で本を読む時間を確保しなければ、読書力は育ちません。
ところが、自分で読むことにまだ慣れていない時期の最初の習慣作りがなかなかできない子もいるのです。
以前、やはり本をほとんど読まない小学2年生の子がいました。家庭の中に、本自体がないのです。
その子に、自主学習クラスで、勉強のあとに読書というやり方をしたところ、それまで全く本を読む習慣のなかった子が、少しずつ本を読むようになり、やがて何も言わなくても勉強のあとに本を読むという習慣ができていったことがあります。
親でなくても、誰かが見ていてくれれば、本を読むようになり、それが毎日続けば習慣ができるのです。
この自主学習クラスによる読書も習慣作りも、今後、森林プロジェクトの企画として取り組んでいきたいと思っています。
第三は、読書の内容やジャンルを発展させる方法で、これは現在思考発表クラブでやっているような子供たちによる読書の紹介が役に立ちます。
小学校中学年以上の子供たちは、同じ学年のほかの子がどんな本を読んでいるかということに関心を持ちます。
この子供どうしの関心を利用して、読者のジャンルを広げていくのです。
これも、今後広げていきたいと思っている企画です。
第四は、難しい文章を読む力をつける読書で、具体的には入試問題レベルの本も楽しく読めるようになることです。
これは、小学校高学年以上の感想文課題の長文の音頭や、問題集読書の音読を続けることで基本的な力をつけていくことができます。
子供たちがなぜ難しい本をなかなか読まないかというと、意味のわからない初めて見る言葉が次々と出てくるからです。
こういう言葉に慣れることが、難しい文章を読む力をつけます。
この難しい文章を読む力は、小学校高学年から、中学生、高校生へと段階的に発展させていく必要があります。
第五は、実際に難しい本を読む機会を作ることで、これは主に高校生大学生の読書教育になります。
具体的な例で言うと、中公新書や岩波新書のような本で、自分の関心のあるテーマについての理解を深めることと、岩波文庫の青帯や白帯のような古典と言われる本を読む力をつけていくことです。
特に、古典を読む力は、学生時代につけなければ、その後読む機会はまずありません。
学生時代は、易しい本を10冊読むよりも難しい本を1冊読むという時期で、これがその後の教養の土台になっていきます。
このように、幼児期の読み聞かせから高校生大学生の古典読書まで、長期間の読書と作文の教育によって読む力と書く力をつけていく展望でこれからの教室運営していきたいと思っています。
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幼児期によく読み聞かせをしていたのに、小学生になったら本を読まなくなったり、小学生のころはよく読んでいたのに中学生になったら読まなくなったり、中学生のころはよく読んでいたのに……という例は、よくあります。
読書力は、その年齢に応じて発展していくものだからです。
それは作文力も同じです。
小学生の読書率は上がっているのに、高校生の読書率が低下しているのは、小中学生のころに読む本が発展していないからです。
だから、高校生になって勉強が忙しくなると、本など読んでいられないとなるのです。
つまり、読んでいられないと思うような本しか読んでいなかったということなのです。
もちろん、娯楽の読書はそれはそれでいいのです。
大事なことは、娯楽以外の知的な本を読む楽しさも身につけておくことです
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