現代は、何でも素早く処理のできる時代です。
ボタンを押せば、すぐに答えが出てくるというような環境が増えてくると、学力についても特別なよい方法やよい教材があれば、明日からでもすぐにうまくいくように思いがちです。
それでも、大人は、現実世界でいろいろな苦労をしているのでそれほど単純にはなりません。
問題は、子供です。
子供は、今のようなスピーディーな環境のもとでは、何でもすぐに成果が出て当然のように思ってしまうのです。
しかし、どんなことでも、価値あるものは、長い時間をかけて身につくというのが本当の姿です。
何度も繰り返しているうちに、自ずからできるようになるというところに学力向上の秘訣があるのです。
それは、もちろん「よい方法」というものを否定するわけではありません。
しかし、たとえどんなによい方法であっても、それを続ける意志がなければ自分のものとして定着することありません。
その点で、子供に繰り返しの大切さを教えるもは、勉強の出発点とも言えるのです。
その繰り返しの大切さを実感させるのによい方法として暗唱があります。
暗唱検定の一つの級は、約3千字の暗唱です。
これを一文字も間違えないように暗唱できるようにするのに約3か月かかります。
逆に言えば、毎日10分間、3か月続ける意志力さえあれば、幼稚園の子供から社会人の大人まで誰でも暗唱できるようになります。
先日、言葉の森の暗唱検定で、初めて初段に合格した小学4年生の生徒がいました。
初段の暗唱は、約1万2千字を30分以内に読むことです。
もちろん、何も見ずにです。
この生徒は、たぶん何ヶ月も、毎日10分の暗唱を日常生活の中で続けていたのでしょう。
このように、毎日同じことを続けていくという意志力があれば、こういう生徒はただ記憶力が鍛えられというだけではありません。
もちろん、記憶力は、将来かなり役に立つと思いますが。
続ける意志を持てる人は、これから、どのようなことに取り組むことがあっても、「続けていればできる」という気持ちを持つことができるのです。
これが、「雨だれ岩をも穿つ」という言葉を実感として理解できるようになることです。
この続けられる人とすぐ諦めてしまう人の差が、実は世の中で最も大きな差です。
学力向上の秘訣は、続けることができるかどうかにあります。
それを無理なくできるようにする機会のひとつが、暗唱検定なのです。
受験作文で、体験実例を入れるケースがあります。
特に、公立中高一貫校の受験では、具体的な自分の体験を入れることがよく求められます。
なぜかと言うと、これまでの大学入試の小論文の模範解答などのように説明と意見だけで書いてしまうと、小学生の場合は、どれも似たような文章になってしまうからです。
だから、模範解答的な文章を書くのではなく、自分の体験の裏付けを生かしながら書くという形で作文試験が出されるようになっているのです。
しかし、ここで大事なことは、誰でもよくあるような一般的な体験実例を書くのではなく、実例の内容そのものに価値があるような書き方を工夫することです。
それが、個性・挑戦・感動・共感のある体験実例です。
しかし、試験の本番で、作文の課題に合わせてそのような価値ある体験を見つけるということなかなかできません。
そこで、あらかじめ自分の過去の体験の中で使えそうなものを見つけておくことが大事になります。
ところが、この個性・挑戦・感動・共感があるような体験というものは、子供だけではなかなか見つけることができません。
子供が作文の課題の準備をするときに、親が、価値ある体験を一緒に考えてあげるといいのです。