オンライン学習が、さまざまなところで行われていますが、それらのオンラインの形態は大きく二つに分けられます。
一つは、一斉指導型のオンライン学習で、一人の先生が大勢の子供をオンラインで教える形の学習です。
その発展した形態が、あらかじめ作られているビデオ教材でいつでもどこでも無料に近い低価格で提供されるMOOCなどのオンライン学習です。
このビデオ授業が優れている点は、生徒の個別の進度に対応できることです。
この大規模な教材提供型のオンライン学習は、コストが低いという利点があります。
しかし、勉強をする動機づけに弱いので、生徒が飽きずに続けることが難しいという弱点があります。
この打開策として、アメリカなどでは、教室に通ってオンラインで学ぶ形の教育が行われているようでが、教室に通う形だと、場所と時間の制約がないネット教育の利点がなくなります。
もう一つは、一対一のマンツーマン型のオンライン学習です。
一対一の学習の場合は、対応する先生がいるので、勉強の動機づけは高くなります・。
しかし、それと同時にコストも高くなります。
言わばオンラインの家庭教師を頼むようなものですから、ネットを使ったオンラインの利点があまり生かされているとは言えません。
ただ、場所の制約がなくなるという利点はあります。
言葉の森の行っているオンライン学習の思考発表クラブは、これらの二つのオンライン学習とは異なっています。
それは、先生と生徒が、少人数のクラスの中で学習するという点を特徴としています。
このオンラインクラス学習は、生徒の動機づけの高さとコストの低廉化を両立させます。
このようなオンラインクラス学習が、これまでほとんど行われてこなかったのは、担当の講師が急に休むような場合に対応することが難しかったからです。
だから、少人数クラスのオンライン学習が行えるのは、小回りの利く比較的規模の小さい個人塾のようなところだけだったと思います。
ほとんどのオンライン学習は、大規模なビデオ学習のようなものか、又は一対一のマンツーマン指導によるものかになってしまうのです。
しかし、言葉の森は、これからこの少人数クラス型のオンライン学習に力を入れていこうと思っています。
言葉の森がオンラインクラス学習に力を入れるのは、人間の成長にとって他の人との直接的な交流が欠かせないと思うからです。
その交流とは、先生と生徒だけの単調になりがちな交流ではなく、他の生徒や家族との多様な対応できる交流です。
子供たちは、ロボットが知識を吸収するような仕方で学ぶのではなく、人と人との触れ合いの中で生きた知識を学びます。
そこに学び方の個性があり、その個性が、学ぶこと以上に大事になってきます。
このオンライン少人数クラスは、現在の思考発表クラブだけでなく、今後は作文指導の分野と、自主学習の分野でも行っていく予定です。
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このオンラインの少人数クラスによる作文指導と自主学習指導は、かなりユニークなものになります。
それは、単にオンラインという形になるだけでなく、新しい勉強観のようなものが必要になるからです。
しかし、いちばんの違いは、やはり勉強が面白いものになることだと思います。
オンライン少人数クラスの作文指導は、生徒は手書きの作文をアップロードするだけですから今とそれほど変わりませんが、講師は結構変わります。
その作文に、ペンタブレットで印をつけ、口頭で講評を伝える形が中心になるからです。
これで、講師の負担はかなり軽くなります。
講師には、森林プロジェクトのメンバーの協力を得たいと思っています。
かねてから思考クラブにも興味がありましたが、在米で時差のため参加が困難な状況です。
東海岸は13-14時間の時差なので、日本時間の土日朝7時―11時か土日夜9時などで枠を作ることが可能であればぜひお願いしたいです(六年生の息子)。海外からの希望者は少ないでしょうか?
るうくさん、ありがとうございます。
思考発表クラブは面白いので、海外の方も参加できるようにしたいと思っています。
そこで、今考えているのは、海外の人で森林プロジェクトの講師資格を受講した人を講師としてお願いすることです。
今後、その募集を行っていく予定です。
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中学生や高校生がスマホを持つと、年中YouTubeを見ていたり、Lineで友達とやりとりをしたりするようになると思います。
イギリスの中学生がfacebookをやりだしてから、途端に読書量が減った調査結果も出ています。
この問題に対して、多くのお母さん方はスマホを禁止するということを考えるようです。
しかし、その「禁止する」という方法では、問題は何も解決しません。
むしろ、親の管理がなくなったときに、子供が自分でコントロールできなくなるというマイナスの方が大きいのです。
では、どうしたらいいかというと、一つは本人がいろいろな誘惑に負ける経験を通して、その誘惑とうまく折り合いをつけてコントロールする方法を自分自身で身につけていくことです。
だから、親には、多少の脱線を大目に見てあげるような余裕が必要です。
しかし、もう一つのもっと根本的な対策は、スマホとインターネットによる受け身の娯楽ではない、より主体的な娯楽を作っていくことです。
その主体的な娯楽が勉強です。
と言っても、学校や塾で先生の授業を聞くような勉強ではなく、勉強の成果を他の人に発表したり新しい勉強を考え出したりするような創造的な勉強なのです。
例えば、思考発表クラブで子供たちが取り組んでいるような勉強は、スマホとインターネットによる娯楽よりもずっと面白いはずです。
そういう子供たちは、スマホとインターネットによる娯楽を楽しみながらも、それらとうまく折り合いをつけて自分の勉強を進めていくことができます。
似た例として、読書と漫画の関係を考えるとわかりやすいと思います。
漫画ばかり読んでいて本を読まない子がいた場合、漫画を禁止すれば本を読むようになるかというと、そういうことはありません。
読書の好きな子は、漫画も好きです。
どちらもたっぷり読むことが大事なのです。
遊びと勉強の関係も同じです。
遊んでばかりいて勉強しない子がいた場合、遊びを禁止すれば勉強するようになるかというとそういうことはありません。
勉強のできる子は、遊びも好きです。
よく遊び、よく学べが、最も健康的な過ごし方なのです。
大事なことは、子供が主体的に取り組みたいと思うものを見つけることです。
大人の役割は、マイナスを禁止することではなく、プラスを用意してあげることなのです。
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勉強もするが、遊びもする。普段は真面目だが、脱線も好き。
親の言うことをよく聞くが、全く聞かないこともある。
というような子が、本当はいい子です。
親の言うとおりにやっているだけだったら、それはかえって親の枠組みの中までしか成長しない子です。
子供は、いつか親をおぶってあげるのですから、親より強く大きくならなければならないのです。
私は基本的に真面目な子だったが、途中からどんどん脱線していったのは、親が何でも認めてくれたということが大きかったと思う。
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ここで思い出すのは、日本のロケット開発の生みの親である糸川英夫氏の子供時代の話です。
糸川氏は昔の中学5年生で志望校を選ぶ際に、上野の音楽学校(今の芸大)の作曲科にするか、東京高校(今の東大)の理科にするか、入学願書を出すまぎわまで決心がつかずに悩み、母親に相談したそうです。
すると、母親は一瞬顔色をかえたものの、即座に次のように返答しました。
「自分のやりたいものを選べ。ただし入試の難易によって決めるな」
https://www.mori7.com/index.php?e=2774
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親の判断の基準は、損得に傾きがちだが、子育ての目標は損得で考えてはいけないのだと思う。
いつも記事で勉強させていただいています。
「やるべき勉強は必ずやる、それがどん
なに多くてもやる、読書も必ずやる、だ
からゲーム(パズドラ)や動画をやるの
は自分で好きにさせて」と聞きません。
「ゲームの時間は一日これくらい」と
時間で決められるのが嫌だそうです。
やることをやったら、好きなだけ熱中し
てやりたいという息子です。やるべき勉
強量を増やしても、それを短縮して、
ゲームの時間をなんとかしても作り出す
と思います。こういう場合って、本人の
自由に任せるべきなのでしょうか。
塾には行っていません。
書かれている内容から判断する限り、それは子供の言うとおりにやらせた方がいいです。
自分でそれだけ言えるということは、本人が自分の人生を自分でコントロールするつもりでいるということですから、その自己決定をすることが大きく成長するきっかけになります。
とは言っても、やると言ったとおりには必ずしもできないのが普通ですから、たとえちゃんとできなくても親は長い目で子供の成長を見守っていく必要があります。
そういう自分で自分のことをきめられる子が、将来いちばん頼りになる子になるのです。
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