字が下手なのは直らないというのが基本的な考え方ですが、本当は他の人の目に触れることによって少しずつ読みやすい字になっていきます。
また、練習方法によっては、ごく短期間に上手な字を書けるようになることもあります。
その方法は、手本となる字を、超スローモーでいいのでその手本のとおりに書き写すという方法です。
このやり方で1時間も練習すると、自分の書く字が見違えるほどを上手になってきます。
わずか1時間でと思うかもしれませんが、これは本当です。
コツは、よく見てゆっくり書き写すことです。カタツムリの動くスピードよりもずっと遅いぐらいの速さで書いていきます。
子供たちで、漫画の好きな子がよくキャラクターをそっくりに描き写すことをしますが、ちょうどそのような感じです。
私も、学生時代、この方法で字が一時期とても上手になったことがあります。自分でも驚いたぐらいです(笑)。
しかし、普段の字を書く生活は、それほどゆっくりやることはできないので、日常生活の中で文字を書いているうちに、またすぐもとの自分の字の癖に戻ってしまいます。
江戸時代の寺子屋における文字の練習は、手本となる文字を半紙が真っ黒になるまで書き写すという方法でした。
これは、字を覚えるというよりも、上手な字の書き方を手に覚えさせるという方法だったと思います。
子供時代のまだ字を書く量が少ない時期に、このように繰り返し手に覚えさせる練習をしていたのです。
漢字の書き方についても、形や意味から覚えるという方法がありますが、私は手に書き方を覚えさせるという方法が、誰にも単純にできるよりよいやり方ではないかと思っています。
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上手な字を書く練習も、漢字を覚える練習も、単純に同じ動作を繰り返すということが基本です。
意味を説明したり理屈で理解したりする方法は、教えている人が楽しいだけで、教わっている方は退屈だからです。
只管打坐という言葉がありますが、只管音読とか只管筆写などというやり方が小学生時代の子供にとってはいちばんいいのです。
こういうやり方を物足りなく思わないことが大事です。
字の下手な子で、絵は上手に描けるという子がいます。
それは漫画のキャラクターなどの手本をよく見て描いているうちに、手が描き方を覚えてしまったからです。
だから、字が下手なのは、ただ手本を見ていないからだけなのです。
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作文試験では、手書きの作文を人間が読んで評価をしていますから、印象点がかなり大きな差になります。
近い将来、作文試験は手書きOCRまたはキーボード入力でテキスト化される形で行われるようになり、それを人工知能が採点し、その人工知能の採点で上位に入ったものを人間が読んで評価するというやり方になると思います。
この方法は、既に言葉の森が作文検定試験で何年も前にやっていたことですから、やる気さえあれば明日からでも実施できるぐらいのものです。
ところが教育の世界は保守的なところがありますから、まだしばらくは手書きの作文を人間が読んで評価するという形が続くと思います。
さて、そのときに作文小論文の評価の重要な要素となるものが、字数と漢字力なのです。
それは、読む人の印象点を左右するものだからです。
この印象点というのが、人間の採点と機械の採点との最も大きな違いです。
その漢字力とはどういうものかというと、第一は難しい語彙や難しい漢字を書けるという力です。
第二は、間違った字を書かないこと、つまり誤字がないという漢字力です。
例えば、中学入試の作文で、その文章の中に普通の小学生ではあまり知らないような語彙が漢字で正しく書けているとそれだけで印象点が上がります。
また逆に、普通は間違えないと思われる漢字が間違って書かれていると、それだけで印象点は大幅に下がります。
だから、現在の作文試験では、この漢字力をつけておくことが合格の第一の条件になります。
では、文字の上手下手は、印象点に影響するかというと、そういうことはほとんどありません。
漢字の間違いがあると、その生徒はあまり文章を書いたことがないし、学校の勉強をきちんとしていないだろうという予測が成り立ちます。
しかし、字が下手であるというのは、その生徒の学力の予測にはなりません。
これまで見てきた生徒の学力と字の上手さの関係について考えると、字の上手下手と学力とは全く相関がないと言えると思います。
逆に、字の下手な子は、ユニークな考えをする、どちらかというと学力の伸びしろのある子に多いという印象さえあります。
それはなぜかと言うと、字の下手な子は、幼児のころに知的な関心が高く見よう見まねで文字を書き、その自己流の書き方が定着してしまったとも考えられるからです。
つまり、簡単に言えば、知的好奇心が高く頭のいい子は、字が下手になりがちだということなのです。
字の上手な子は、その子が文字に関心を持ち始める時期と同時に、字の練習をする機会があったということになると思います。
だから、文字の練習は小学1年生になってから一律に行うのではなく、子供それぞれの成長に合わせて文字に関心を持つようになった時期と同時に始めるのが最もよいやり方だと思います。
(つづく)
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子供の作文を見たお母さんが、まず言うことは、「もっと漢字を使いなさい」と「もっと字を上手に書きなさい」だと思います。
それぐらい、漢字と字の上手さは、作文の印象を左右するのです。
しかし、本当はどちらもその子の作文の実力とは関係がありません。
漢字力を決めるのは、漢字の書き取りの勉強をきちんとした子かどうかということだけです。
字の上手下手は、文字に興味を持ち始めた時期に文字の練習をしたかどうかというだけです。
けれども、作文試験は人間が読んで評価するものなので、作文の実力以前に、この印象点に対する対策も必要になってくるのです。
文字の下手さに関して言うと、自慢ではありませんが、私は小学生時代クラスでいちばん下手だったと思います。テストでも、先生から、「答えは合っているけど字が下手だから×にしておいたね」と言われたこともあります(笑)。就職試験のときも、「君は字が下手だねえ」と言われたぐらいです。
母からは、よく小野道風の話を聞かされました。
だから、字の下手な子の考えていることはよくわかります。
字の下手な子は、ひとことで言うと、そのことを気にしていないのです。
そして、上手に書くことをあきらめているのです。
だから、お母さんも、子供の字の下手さを気にしないのがいちばんです。いくら言っても上手に書くようにはまずなりません。
ただし、直すとしたら、せめてひらがなだけ書写の教科書体の文字を見本としてていねいに書く練習をするといいと思います。
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